• HOME
  • 記事
  • テニス
  • 急成長中の世界4位チチパスが操る“世界最強レベルの片手バック”を解析【ネクストキングのスゴ技】<SMASH>

急成長中の世界4位チチパスが操る“世界最強レベルの片手バック”を解析【ネクストキングのスゴ技】<SMASH>

チチパスはリラックスした状態で準備を整え、打点に向かって下から上へ伸びあがる力と骨盤のひねりを加えてパワーを出している。写真:真野博正
男子テニス界に君臨していきた「ビッグ3」(ジョコビッチ、ナダル、フェデラー)の牙城を脅かす存在、それが次代のエース候補「ネクストキング」である。その代表格ともいえるのが、ダニール・メドベージェフ、アレクサンダー・ズベレフ、ステファノス・チチパスの3人だ。

そこでテニス専門誌『スマッシュ』では、元デビスカップ代表で現役引退後は五輪・デ杯・フェド杯のコーチを歴任した丸山薫氏に「ネクストキング」たちの“スゴ技”(すごい技)について解説してもらった。ここでは2021年の全仏オープンで準優勝するなど、シーズンを通して急成長を遂げたステファノス・チチパス(ギリシャ/世界4位/23歳)にスポットを当てる。

ものすごい勢いで伸びている印象を受けるチチパス。その要因は2つ考えられる。まず一つは、他の若い世代から受ける刺激だ。以前であれば「ビッグ3」は大きな壁だったが、ズベレフに代表される新世代が少しずつ壁を崩していくなかで「自分も食らいついていこう」という気持ちが強くなったのではないだろうか。

また、実際に上位陣と試合をしていくなかで以前よりも「行ける」という感触があったはずだ。そうした自身の成長を実感できたことが好循環をもたらしているように思える。このクラスになると技術面で大きな差はない。そうしたなかで差をつけるのがモチベーションであり、その強さがランキングにも現れてくる。
二つ目は、純粋なパワーアップ。身体つきが一回り大きくなったわけではなく、身体の厚みが少し増したことで力の出し方がわかってきたという印象だ。以前は上位選手に打ち負ける場面が見られたが、今は打点が遅れるようなシチュエーションでも威力のあるボールを打ち返せるようになった。

そんなチチパスの片手バックハンドを見ていこう。

まず、テイクバックをスタートする段階からラケットを立て、右ヒジ先行で引いている。この時にラケットを握る右手には余分な力を入れてない。なぜなら右手に力が入るとパワーロスの原因となるからだ。ラケットをしならせるようにスイングしてパワーを出すには、右手の力が抜けた状態でテイクバックしなければならない。

次にテイクバックでは右ヒザは曲げられているが、インパクトでは右ヒザが伸びて左足は浮き上がっている。非力になりがちな片手打ちバックハンドだが、チチパスはこのリフトアップ(下から上への伸び)を使ってスイングをすることでボールに威力を与えている。

インパクト後にヘソが打球の方に向いていくが、これはインパクト前に骨盤のひねりをショットに加えているためだ。一般的に片手バックでは身体の横向きを残せと言われる。なぜならラケットが右に行きすぎると弾道が乱れるからだ。

だが、チチパスはインパクト後に腕を上方向に振り抜いていくためラケットが右に行きすぎず、コントロール性を失うことなくパワーが加えられている。

構成●スマッシュ編集部
※スマッシュ2022年1月号から抜粋・再編集

【連続写真】次代の王者候補チチパスが放つ世界最強レベルの片手バックハンド

関連記事