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他人にラケットを握ってもらうことの重要性とは?|頭で勝つ!卓球戦術

卓球ライター若槻軸足がお送りする「頭で勝つ!卓球戦術」今回は「他人にラケットを握ってもらうことの重要性」というテーマでお話していきたいと思う。

卓球は非常に繊細なスポーツである。わずか数グラムのボールに対して、複雑な回転をかけて騙し合い、さらに心理戦の要素も加わりながら戦う。ほんの数センチの差で、得点にも失点にもなり得る。

そんな繊細な競技である卓球は当然道具にも緻密な技術が取り入れられており、選手独自の趣向やこだわりも千差万別だ。

木製であるラケットの種類は無数にあり、それに貼り付けるゴム製のラバーも数百種類あり、しかもその厚みも選択できるのだ。ラケットと2枚のラバー、その組み合わせは無限にある。

さらにはそれぞれの手になじむようグリップの形状が別れていたり、あるいは選手自身で削ったりして加工を施すこともある。そのためひとつとして同じラケットは存在し得ないと言えるだろう。

それ故に正解というものはない。各々が自身の今やりたいこと、今後目指していきたいことなどと向き合って、そのときどきでベストなラケットを作り上げていくのである。

写真:大島祐哉の使用するラケット・ラバー/撮影:田口沙織
写真:ミズノのラケット・ラバー/撮影:田口沙織

そういった用具に対する探究心が絶えず、常に色々な新しい用具を試していくことに忙しい選手もよくいる。かくいう私は実はあまり冒険はしないタチであり、ここ数年間は同じラケットでフォア面もバック面も同じ種類のラバーを使い続けている。

だが最近になって、バック面を初めて使うラバーに変更した。その際に私は何気なくチームメイトにラケットを差し出して握ってもらったのだが、そこで思いがけない言葉を聞いたのだ。

ラケットの重心

チームメイトが言うには、「自分のラケットと比較して、私のラケットの方が重心がより先端に寄っている」というのだ。実際にチームメイトのラケットと握り比べると、たしかにその通りであった。

ラケットの重心が先端に近いということには、より遠心力を効かせて力強いボールが打てるという効果がある。打つボールも重くなるので、威力を求める攻撃型の選手は重心をラケットの先端にある方が望ましい。

逆に重心が根本、つまりグリップ側に近いと、ラケットの操作性に優れるという利点がある。前陣での切り替えや、細かいラケットさばきといった点でやりやすく、あまりラケットを振り回さずに守備的なプレーをする選手に向いている。

写真:ラケット先端にだけ貼られたサイドテープ/撮影:田口沙織
写真:ラケット先端にだけ貼られたサイドテープ/撮影:田口沙織

私のスタイルとしては間違いなく後者、つまり重心がグリップ側にあるべきなのに、かなり先端寄りになっていたのだった。同じラケットを数年間使っていたが、他者に握ってもらって初めて気付いたのである。おそらくこの機会がなかったら、この先もずっと気付くことはなかっただろう。

その後すぐさま重量を調節できるテープを購入して貼り付け、重心が根本に近くなるように調節した。結果としてはやはりラケットの操作性が向上し、前陣でのブロックの場面において素早くラケット角度を出すことができ、対応の幅が広がった。

ラケットのグリップ

また逆に他人のラケットを握ることでも新たな発見が得られる。例えばグリップの形状は、シェークハンドなら主にストレートグリップとフレアグリップという種類に分かれる(厳密にはこれ以外にもある)。

もちろん自身の握りやすさ、技術のやりやすさから選んでいるだろうが、他者のグリップを握ることで新たな発見が得られることもあるだろう。例えば自分はフレアグリップが向いていると判断して長年使って来たが、久しぶりにストレートを握ってみるととてもしっくり来た、ということがあり得るだろう。

年月が経つにつれて、自分のプレースタイルも少しずつ変わっていくはずだ。それと同様に手に馴染むグリップが変わっても何ら不思議ではないはずだ。

蒼天
写真:ニッタクのラケット『蒼天』/撮影:ラリーズ編集部

あるいはペンホルダーの場合は、日本式や中国式、さらには反転式とこちらも種類が様々であり、当然それぞれ特徴が異なってくる。そこに加えて、ペンの場合は「削り」も非常に大きな要素をしめる。

ラケットのブレードに接する指が痛くないようにカッターやヤスリ等を用いて削る作業が必ず必要になるのだが、これも各々の特徴が出るため、他者のラケットと比較することで気付きが得られるかもしれない。

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