来年に迫るパリ五輪で全種目メダル獲得も期待される日本卓球界。本大会に向けた選考会も国内外で開かれていくなか、兄妹での出場とメダル獲得が注目されるのが張本兄妹。日本勢最高の世界ランキング4位である兄の智和には大黒柱としての働きが求められており、金メダル獲得と打倒中国勢に向けての飛躍には期待がかかる。そんな兄の後を追うように台頭してきたのが妹の美和。ジュニア時代からの実績はもちろん、Tリーグやシニアの大会にも参戦し、期待のホープとして目が掛けられている。そんな卓球界きってのエリート兄妹のこれまでと今後を展望していく。（文・井本佳孝/写真提供：ITTF）
“レジェンド”水谷の後を継ぐ
兄の智和がシニアの舞台で脚光を浴びたのは今から6年前の2017年。当時13歳で抜擢された世界選手権個人戦で、リオ五輪銅メダリストの水谷隼を破るなどのサプライズを見せベスト8入りの快挙。日本卓球界に現れた“怪童”として一躍スターダムにのし上がる。さらに2018年全日本選手権ではそれまで9回の全日本制覇を果たし、国内では敵なしとされた水谷をまたも倒しての14歳205日での最年少優勝。同年の5月には14歳10カ月の若さで世界トップ10入りし、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けた。
2019年1月には日本人では水谷の4位を上回り、最高位となる世界ランクトップ3入りを果たしていた智和にとって、2021年に行われた東京五輪では個人でのメダル獲得が期待された。しかし、「五輪での金メダル獲得」を目標に挑んだ18歳での初舞台は4回戦でスロベニアのダルコ・ヨルギッチに敗れ、ベスト16で敗退。水谷、丹羽孝希と組んだ団体では個人としては全勝で銅メダル獲得に大きく貢献したが、“日本のエース”として戦い続ける重圧を前に悔しい気持ちも味わった初の五輪だった。
それでも、五輪後の2022年入ると復調の気配を見せる。同年3月に行われたTOP32東京大会で優勝を果たすと、夏のTリーグ個人戦も制覇。さらに、11月に開催されたTOP32船橋大会も制するなど、東京五輪で現役引退した水谷の後を次ぐ大黒柱として国内では敵なしと呼べる独走状態に入っている。さらに、2022年4月にはドイツ・ブンデスリーガ 1部のノイ・ウルムへ加入。ドミトリ・オフチャロフ（ドイツ）や林昀儒（台湾）といった選手所属のスター軍団に招き入れられ、ヨーロッパチャンピオンズリーグ（ECL）の舞台も経験するなど、世界一に向けて研鑽を積んでいる。
ここ数年でシニアで飛躍した美和
そんな智和と同じように幼少期に卓球を始め、元卓球選手の両親、トップ選手に成長を遂げた兄がいる環境で育ったのが妹の美和である。2008年生まれの美和は、小学1年生の2015年に全日本選手権のバンビの部（小学2年生以下）で優勝を果たす。さらに、2018年にはカテゴリーが上がったカブの部（小学4年生以下）でも優勝、翌2019年にはホープスの部（小学6年生以下）も制するなど、ジュニア時代には圧倒的な実力を見せつけ、その才能の片鱗を存分に見せつけてきた。
そんな美和はシニアの大会にも若くして参戦していく。2018年にはわずか小学4年生でTリーグの木下アビエル神奈川に加入し、2019年2月の日本生命レッドエルフ戦で当時史上最年少である10歳でTリーグデビューを果たした。また、全日本選手権には2019年、ジュニア部門と並行して一般の部にもエントリーし、いきなり2勝を挙げる活躍をみせる。また、2021年には全国中学校卓球大会で優勝し、Tリーグでも初勝利。12月の世界ユースでは女子シングルス、ダブルス、団体に加えて混合ダブルスも制覇。兄・智和が成し遂げていなかった圧巻の4冠を達成するなど、国内外で実績を積み上げる。
そんな美和がシニアの舞台でも飛躍を果たすのが2022年から2023年にかけて。2022年8月に行われたWTTコンテンダーチュニスに出場し、女子シングルスでは中国人選手に決勝で敗れたものの堂々の準優勝。また、兄・智和との兄妹タッグが結成された混合ダブルスでは優勝を果たし、一躍シニアの世界でも注目の存在に。世界ランキングで50位以内に顔を出すと、2023年には全日本選手権でベスト16入りし、5月のTOP32平塚大会では準々決勝で平野美宇を4ー2、準決勝では佐藤瞳という実力者たちを次々に破り決勝へ。早田ひなに敗れて準優勝に終わったものの、パリ五輪選考レースで5位に浮上し、ダークホースとして名乗りを上げた。
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