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【五十嵐史弥、イタリアへ】カラーラには“卓球バカ”がいる イタリアリーグ徹底解剖

記者とアミーゴになる

——サッカーが圧倒的に人気ですもんね…
舘:
イタリアで卓球クラブナンバー1になっても、知名度が上がらない。このトスカーナ地方(国内19州のうちの一つ)の新聞2紙は毎週木曜にスポーツ特集をするんですが、うちのオーナーが記者とアミーゴ(友だち)になって、“何なら俺が書くから”って迫って、いまは毎週木曜に卓球の情報が新聞に載るというところまで来ましたけど(笑)。

カラーラ
写真:地元紙に掲載された紙面。色付けした箇所にボボチカ、ムッティなどの名前が読める/提供:アプアーニア・カラーラ——カラーラは上位常連チームと聞きました
舘:
ありがとうございます。セリエA1のレギュラーシーズンで5回、イタリア杯(プレーオフファイナルの位置づけ)で2回優勝しています。歴史的に、カステルゴフレッドというチームと、私たちカラーラが上位を争っていましたが、近年、シチリアのメッシーナというチームも、ジョアン・モンテイロ(ポルトガル)や、かつてイタリア国内で1位になったこともあるマルコ・レックを獲得し、この3チームがしのぎを削っている状況かと思います。

カラーラ
写真:カラーラの優勝を報じる地元紙/提供:アプアーニア・カラーラ## 10月、ヨーロッパチャンピオンズリーグにも初参戦

——カラーラに所属する選手は?
舘:
中心選手は、イタリアのボボチカ選手や、ロシアのシバエフ選手ですね。東京五輪男子シングルスで張本智和選手を破って一躍脚光を浴びた、ダルコ・ヨルジッチ(スロバキア)選手も2017-2018シーズンは、うちに在籍していました。今季、スピードと躍動感のある五十嵐選手が参戦し、私たちと一緒にたくさんの試合経験を積んでいけることを楽しみにしています。

ボボチカ(イタリア)
写真:ボボチカ選手(イタリア)/提供:ittfworldシバエフ
写真:シバエフ選手(ロシア)/提供:ittfworld——10月、五十嵐選手が合流してから、ECL(ヨーロッパチャンピオンズリーグ)にも参戦すると聞きました。
舘:
はい。私たちは今回初めての参加です。対戦相手も発表されていて、組み合わせを見る限り結構面白くなるんじゃないかなと楽しみにしています。

——現地での五十嵐選手の練習環境はどんな感じになりますか
舘:
基本的には、他の選手も試合に合わせて遠征していくことになります。このカラーラの街にも、A2でプレーする選手が一人地元に住んでいるので、彼となら五十嵐選手も練習にはなると思います。ただ練習相手が限られてしまうので、ボボチカ選手やムッティ選手の住む街に練習に行くとか来るとか、あとは板垣先生のいるドイツに練習させてもらいに行くか、という感じです。そのあたりは来てもらってから、本人の希望を聞きながら対処しようと思っています。

五十嵐史弥
写真:五十嵐史弥/撮影:槌谷昭人

舘さん、何者?

——ところで、ずっと疑問だったんですが、舘さんがイタリアの卓球チームでマネージャーになった経緯って何なんですか?
舘:
元々は企業駐在でイタリアに来たことがきっかけです。もう三十年になりますね、イタリア生活の方が長くなりました(笑)。現在は、建築・インテリア業界の仕事をしています。

——ご自身も卓球を?
舘:
はい、もう全然下手なんですが、最初にこの街に住んだときから、このカラーラでプレーしていました。そこでオーナーのクラウディオと知り合って。いつの間にかマネージャーをやっています(笑)。

カラーラオーナーのクラウディオさん
写真:チームオーナーのクラウディオさん/提供:アプアーニア・カラーラ——オーナーのクラウディオさんというのはどんな方ですか?
舘:
イタリアでは珍しい“卓球バカ”です(笑)。今年でクラブ創立53年目になるんですが、クラウディオは、創立の頃からプレーしていました。仕事は銀行員だったんですが、勇退して、今は銀行員の頃よりさらに忙しく卓球の仕事に携わっていますね。

——他のチームのオーナーの方もそういう方が多いんですか?
舘:
いや、飛び抜けてクラウディオが卓球愛が強いと思います(笑)。イタリアの卓球を良くしたいっていう情熱で、ずっと。

イタリア、カラーラの街並み
写真:イタリア、カラーラの街並み/提供:アプアーニア・カラーラ## 取材を終えて

卓球は世界共通言語だと、よく言う。
それは台とラケットとボールがあればコミュニケーションが取れる、という気軽さを表すのと同時にもう一つ、卓球というスポーツが認知度と人気を獲得するために奔走する人たちの精神性が、不思議と世界共通だということでもあるのかもしれない。

日本のTリーグ、T.T彩たまとも契約が成立した五十嵐は、日本とイタリアでの2拠点でプレーすることになるが、このコロナ禍において、多くの困難もあるだろう。

五十嵐の欧州デビュー戦は、10月22日〜24日のザルツブルクでのヨーロッパチャンピオンズリーグになる予定だ。

フォルツァ(頑張れ)、五十嵐。
イタリアのその町には、筋金入りの“卓球バカ”がいる。

五十嵐史弥(早稲田大学)
写真:五十嵐史弥/撮影:槌谷昭人(おわり)

五十嵐史弥 独占インタビュー 前編

>>五十嵐史弥、イタリアへ。「いっぱい回り道をしてきました」(前編)

早稲田大学卓球部

>>“努力の伝統”根付く名門校 スポーツ推薦から一般入部までが集う早稲田大学卓球部

早稲田大学卓球部 取材動画

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