【#5】なでしこジャパンは弱くなったのか? 変わる女子サッカーの潮流(東京ヴェルディアカデミー寺谷真弓氏インタビュー)
なでしこ復活に必要なものとは?
だが、2000年代後半から、女子UEFAカップ(現在のチャンピオンズリーグ)は、回を重ねるごとに知名度と人気を着実なものにしていった。2010年以降、ヨーロッパ勢が女子サッカーの盛り上げに本腰を入れるようになったのだ。 「ヨーロッパ各国が、もともと持っているサッカー文化を女子にも取り入れ始めた。真剣に女子サッカーに取り組むようになったら、ヨーロッパ各国どんどん強くなるのは自然なことです。そうなるとまた同じようなサッカーレベルで、よりフィジカルが上回ってくる」と分析する なでしこが振るわないのではなく、他の国のレベルが一気に引き上がったのがこの10年の潮流の変化だというのが寺谷の見方だ。では翻って日本の女子サッカーのレベルの底上げのためには何が必要なのだろうか。 下の世代に目を向けると、FIFA U-17女子ワールドカップでも2016年に準優勝、2018年にベスト8という結果に終わっている。これに対して、寺谷は「そこで結果を出してチヤホヤされて満足しちゃう子が多い。もっと上の世代の一流プレーヤーとマッチアップする経験が必要」だと語る。 事実、澤穂希や永里優季は10代でA代表に選出され、強豪たちにもまれてきた経験がある。 「当時と違って、今は飛び級的にA代表に代表に選出される機会は減ってきた。彼女たちがさらに上のA代表を目指すためのモチベーションの維持が必要だと」 女子の若手を見つめて20年、選手たちのメンバーの意識も変わってきたという。 「教わりに来ている子と、学びに来ている子がいるんです。ただ教わりに来ている子は習い事、塾、スクール感覚で、言われたことをただやるだけなんです。一方、学ぶ子は言われたことを自分で噛み砕いて、自分の中に知識として蓄積するから成長の速度が早い。自分で学んで、考えて行動する、その積み重ねが選手として大成していくように感じます」 今はアカデミーダイレクターとして女子だけではなくヴェルディのユース全体も統括する立場になった寺谷、日本サッカーの底上げは一人の鬼軍曹の手腕に託されている。 (了)
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