三苫薫,サッカー

日本を“W杯に導いた”三笘薫 「左サイドの切り札」を徹底解説

三苫薫(Photo by Pablo Morano/MB Media/Getty Images)

(大会直前のため再掲載)

2022年11月から行われるカタールワールドカップ(W杯)で日本はE組に入り、ドイツ、コスタリカ、スペインという世界の強豪国を相手に戦いを挑む。そこで、サムライブルーの一員として本大会での活躍が期待される選手たちにスポットを当てて、そのキャリアを振り返っていきたい。今回紹介するのは最終予選のオーストラリア戦で2ゴールの活躍で日本をW杯出場に導き一躍脚光を浴びる存在に成長し、左サイドからの崩しの切り札として期待がかかるウインガー三笘薫だ。(文・井本佳孝)


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川崎1年目で圧巻の2桁得点2桁アシスト

神奈川県川崎市出身の三笘は、板倉滉、田中碧ら日本代表のチームメイトも所属した川崎フロンターレの下部組織出身だ。高校卒業時はトップチームへの昇格をせず、筑波大学へ進学し、特別指定強化選手を経て2020年に川崎のトップチームに加入した。すると、新人ながらレアンドロ・ダミアン、家長昭博と前線で強力な3トップを形成するなどレギュラーに定着し、2桁得点2桁アシストの結果を残す。川崎のリーグ優勝にいきなり主力として貢献し、ベストイレブンも受賞した。

迎えた2021年シーズンも開幕からコンスタントに結果を残すと、東京五輪終了後の夏にイングランド・プレミアリーグのブライトンに移籍し、2021-22シーズンはベルギーのユニオン・サン=ジロワーズで経験を積んだ。欧州移籍初年度は、左ウイングバックのポジションでチャンスを掴むと、10月のRFCスラン戦では途中出場から自慢のドリブルを活かしてハットトリックの強烈なインパクトを残し信頼を掴む。川崎時代の左ウイングから一つ下げたポジションに適応し、リーグ戦を首位でプレーオフに進んだチームにおいて、7ゴールと欧州でもいきなり結果を残した。

2022年夏は所属先が注目されていたが、ブライトンへの復帰が発表され今季は自身初のプレミアリーグへの挑戦が決まった。プレシーズンマッチからゴールを決めるなど、新天地でも持ち前のドリブルでの推進力を武器にアピールを続けている。グレアム・ポッター監督のもと、近年のプレミアリーグで注目を集めるブライトンにおいて、三笘はユニオン時代に引き続き左ウイングバックのポジションで起用が想定される。同ポジションにはベルギー代表でチームの顔でもあるレアンドロ・トロサールがおり、プレミア挑戦1年目で三笘がポジション争いに加わりどのような働きを見せるかは注目だ。

止められない変幻自在のドリブル突破

三笘の選手としての特徴は彼の代名詞とも呼べるドリブルでの突破力である。ボールを相手DFが対処しづらい位置に置き、ストライドの長い独特な足さばきで相手DFを抜き去っていく。ドリブルを始めてからの急激なスピードアップも特徴で、1対1や形勢不利の場面でも強引にドリブル突破を試みる。一度勢いに乗ると、相手DFも止めるのは至難の技で、日本、ベルギー、イングランドと環境を変えていく中でその武器は磨かれ続けている。

また、川崎時代の1年目に2桁ゴール2桁アシストを記録したように、ドリブルでのチャンスメークだけでなく、得点力にパス能力も併せ持つハイブリッドなアタッカーでもある。状況に応じて周りを使うプレー、自分で仕掛けて決め切るプレーを選択することができ、自身のエゴに走ることなく場面に応じた効果的なプレーができる多様性も三笘の大きな持ち味である。自分の間合いを持ち、ゴール、アシストに絡める点ではブラジルのエース、ネイマールのようなスケールの大きいワールドクラスのアタッカーに化ける可能性も十分に秘めていると言える。

そんな三笘だが、海外選手と勝負するにあたり、フィジカル面で戦える選手になれるかはより高いレベルを目指す上で課題とされてきた。しかし、海外挑戦1年目となったユニオンでは川崎時代の左ウイングではなく左ウイングバックで起用され、球際での激しい競り合いやデュエルでの勝負が求められる環境で1年を過ごした。欧州仕様にアップデートされたフィジカルで、世界最高のスピードとパワーが共存するプレミアリーグの舞台に挑戦していく。この環境でさらに揉まれ、自身の武器であるドリブルを最大限活かすフィジカルに強化できれば、さらに次元の高い選手へと飛躍を遂げるだろう。

伊東と並び日本の崩しのカギを握る存在

三笘は代表レベルでは、2021年夏の東京五輪に出場し3位決定戦のメキシコ戦でゴールを挙げる活躍を見せた。A代表にも11月初招集されると、3次予選のオマーン戦では伊東純也のゴールをアシストし、最終予選のオーストラリア戦では衝撃の2ゴールで一躍日本の“ジョーカー”として台頭した。6月に行われたキリンカップと国際親善試合でも左サイドからチャンスを作り出すなど、今や右サイドの伊東純也と並び、日本の攻撃のカギを握る存在としてスタメン出場を待望する声も聞かれている。

三笘はプロの舞台で結果を残し続け、大学生から数年で日本屈指のドリブラーに駆け上がり、プレミアリーグという世界最高峰の舞台に身を置く存在になった。そんな25歳のアタッカーが11月に迎えるW杯の舞台でドイツやスペインといった世界の強国相手にどんなインパクトを残し、選手としての高みに登っていくのか。森保ジャパンの左サイドを制圧するウインガーの底を知らない成長ぶりとさらなる飛躍に期待せずにはいられない。


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