久保、堂安…注目選手たちは新天地で飛躍を遂げるか?注目の移籍先を解説

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(大会直前のため再掲載)

欧州サッカーでは移籍シーズンを迎えているが、活発な動きを見せているのが日本代表の選手たちだ。11月にカタール・ワールドカップ(W杯)を控え、ドイツ、コスタリカ、スペインという強国との戦いを前にして、出場機会を求めての移籍や、より高いレベルに身をおいての移籍が目立っている。森保一監督率いる日本代表に選ばれ、さらに世界の舞台で活躍することを目指すために。気になるサムライブルーの選手たちのこの夏の動向を追う。(文・井本 佳孝)

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堂安律(PSV→フライブルク)

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Photo by Etsuo Hara/Getty Images

森保ジャパンには2018年の発足当時から選ばれ主力を務めた時期もあったが、伊東純也の飛躍もありレギュラーを奪われていた。合計2シーズンを過ごしたオランダの名門PSVを離れる決断をし、新天地に選んだのはフライブルクだ。PSVからのレンタルで1シーズンプレーしたビーレフェルト時代以来、2年ぶりとなるドイツ・ブンデスリーガでの戦いに挑むこととなった。

ビーレフェルト時代はリーグ戦34試合に出場し、チームトップの5ゴールを挙げるなど主力として1シーズン戦った経験があるのはポジティブな要素で、本人も新しい挑戦を前向きに捉えているはずだ。フライブルクでは得意の右ウイング、または中央でのプレーが想定されるが、昨季6位に入りヨーロッパ・リーグ(EL)に出場するチームにおいてレギュラーポジションをつかめるか。W杯初戦でドイツとの対戦を控えた中で、ブンデスリーガで自身の存在を証明した上で、代表でのポジション争いにも勝ち抜きたいところだ。

三笘薫(ユニオン・サン=ジロワーズ→ブライトン)

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Photo by Pablo Morano/MB Media/Getty Images

日本代表がカタール行きを決めたアジア最終予選のオーストラリア戦で2ゴールを挙げる活躍を見せ、日本のカギを握るプレイヤーとして存在感を高めている三笘。ブライトンからレンタルでプレーしたユニオン・サン=ジロワーズでは徐々に出場機会を得ると左WBという川崎フロンターレ時代から1つポジションを下げた新境地を開拓した。27試合に出場し7ゴールと海外1年目から結果を残した。

欧州仕様の守備力と球際の激しさを吸収した25歳は所属先であるブライトンに戻り、プレミアリーグで新たなシーズンを過ごすことになった。イングランドの地でさらなる成長を求めて戦う三笘は、ブライトンでもベルギーと同様に左WBでの起用が予想される。プレシーズンマッチでいきなりゴールを奪うなど上々の滑り出しをみせており、8月7日に開幕を迎えるマンチェスター・ユナイテッドとの開幕戦でプレミアデビューを果たせるか期待がかかる。日本代表の左サイドの崩しのキーマンとして、さらなるアップデートを果たしW杯本大会を迎えたいところだ。

中山雄太(ズヴォレ→ハダーズフィールド)

アジア最終予選では長友佑都と左SBで併用され、途中出場から貴重な役割を担った中山。3シーズン半プレーしたオランダ・エールディヴィジのズヴォレを契約満了で退団し、新天地に選んだのはイングランドだ。2部にあたるチャンピオンシップのハダースフィールドへの移籍を決めた。左SB、CB、ボランチとさまざまなポジションでのプレーが可能な守備のマルチロールはハダースフィールドにおいても、その柔軟性を活かして、複数ポジションでの起用が考えられる。

日本代表では長年左サイドに君臨してきた長友に加え、ドイツでの活躍が評価されて6月にA代表デビューを果たした伊藤洋輝という新たなライバルが現れた。熾烈な左SBのポジション争いにおかれているが、1つのポジションにこだわらずにプレーが可能で、左足での正確なパス能力を武器に最終ラインに安定感をもたらす中山の存在は貴重だ。1部に比べてより激しさが求められるイングランド2部でのプレーを経験し、よりフィジカル、スピードに対応した新たな姿をみせられるか。11月の代表メンバー入り、また本大会の出場機会を窺う中山にとって、勝負をかけた新天地での戦いが始まる。

久保建英(レアル ・マドリード→レアル ・ソシエダード)

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Photo:Masashi Hara

スペインの名門バルセロナで幼少期を過ごし、日本代表の未来を担う“至宝”として期待がかけられてきた久保。2019年からスペインの地に渡り、マジョルカ、ビジャレアル・ヘタフェといったラ・リーガのチームでのプレーを経験してきた。21歳を迎えた中でレフティーが新たな活躍の場を求めたのがレアル・ソシエダードで、レアル・マドリードからの完全移籍の形で勝負をかけることを決めた。

若手の育成に定評のある新天地で久保は得意の右サイドや中央で、ポジション争いに挑む。ここ数年の久保はビジャレアルでポジション争いに敗れたり、マジョルカやヘタフェといった残留争いにおかれたチームで自身の特徴をなかなか出せない状況が続くなど、足踏み状態が続いてきた。ラ・リーガの中でも攻撃的なスタイルが特徴で、ダビド・シルバやミケル・オヤルサバルといった名手もプレーするソシエダは久保にとって理想的と言えるチームだ。“言い訳”の許されない環境で日本の至宝がついに華開くのか。その結果如何では11月のW杯メンバー入りも、自身が身を置くスペインとの戦いを控えた本大会での働きも期待がかかって来るだろう。

伊東純也(KRCヘンク→スタッド・ランス)

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photo:Etsuo Hara

右ウイングのレギュラーとしてW杯アジア最終予選で4試合連続ゴールを記録するなど、森保ジャパンの主力としてW杯で活躍が期待される伊東純也。近年去就が注目されていたウインガーが今夏ついに移籍を決断した。柏レイソルから2019年冬に移籍後、3年半にわたりプレーしたベルギーのヘンクから新天地に選んだのはフランス・リーグ・アン。7月30日に1000万ユーロ(約14億円)もの移籍金でスタッド・ランスに加入することが発表された。

ヘンクでは右サイドからドリブルで仕掛ける得意の形だけでなく、中に切り込んでのシュートや周りとのコンビネーションに磨きをかけ、プレーの幅を大きく広げた。また、2020-21シーズンではベストイレブンに選ばれ、昨シーズンはベルギーリーグでアシスト王とリーグを代表する選手となった。日本代表でも崩しのキーマンとしてW杯で期待がかかる伊東が、フィジカルやスピードが増すフランスでさらに飛躍できるのか。11月の本大会に向けて日本のカギを握るキーマンの挑戦に期待大だ。

初のW杯へ勝負をかける東京五輪世代

堂安、三笘、中山、久保の4人はいずれも昨夏の東京五輪メンバーであり、A代表としてカタールW杯での飛躍が期待される中で、新たな環境を求めて移籍し、伊東はベルギーで自分の存在価値を高め、さらなる飛躍を求めフランス移籍を決めた。伊東を除く4人は現状はレギュラーの座を窺う立場ではあるが、ここから数カ月の活躍と成長によっては当然メンバー入りだけでなく、本大会での先発起用も考えられる実力者たちだ。選ばれれば自身初のW杯となるだけに、そのチャンスを掴み取るために期するものはあるはずで、日本の若武者たちが新天地で見せる活躍ぶりに期待大だ。


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