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長友佑都が成功した秘訣とは?サッカー海外組に求められる、語学力より大事なこと

長友佑都のインテル移籍の裏側で…

海外でプレーして成功できる選手は、溶け込むのが早い。言葉がわかるとなおそうです。でも、基本的には人間性です。特に長友(佑都)。彼がFC東京からインテル・ミラノへいく前に、夜中に新聞社から電話がかかってきて、『インテルが長友を獲るんですか?』と聞かれたことがあって。私は「そんなわけないじゃん」と伝えました。ただ、その10分後くらいにレオナルドから電話が来たんです。当時、彼はインテルの監督でした。

『ごめん、寝てた?』と。「寝ているに決まってるじゃん、こんな時間!」という会話から始まりました。深夜の1時、2時でしたから。 要件を聞いたら、実はインテルが長友を取ると言っているから、協力してくれと。

当時はまだFC東京が長友の保有権を20〜30%持っていたんですよ。だから、FC東京の社長のサインがないといけない。インテルとチェゼーナ間だけでは成り立たないと。あと数時間しか(移籍市場の)期限がないから、FC東京の社長に電話してOKとってくれないかと言われたんですよ。夜中2時に。

「それなら長友本人に電話すれば、イタリア語ができるし良いじゃないか」と言ったのですが、長友はまだ全然喋れないと。それで自分が頼まれたのですが、長友とは代表で被っていないから面識がない。でもとにかくやってくれと言われたからまずは彼に何度も電話したんです。そしたらなんとか電話に出てくれた。「鈴木と申しますけど…」と経緯を伝えて、今の状況を聞いたら、『チェゼーナで練習をしていたら、いきなり役員がきて、練習中に車で連れて行かれました』と。

そこで「インテルがあなたを獲りたがっているからミラノに行くみたいだけど、行きたい?」と聞いたら『行きたいです!』と。なら、今からFC東京の社長に電話する必要があるという旨を伝えました。そしてその流れでマネージャーがいるかどうかを聞きました。するとどうやら岡崎(慎司)と同じマネージャーだったのですが、ちょうど同じ時間に岡崎の入団会見に行っていて不在でした。

『すぐに呼び戻しますから』と長友は言っていたのだけど、数時間しかないから間に合わないと思いました。でもマネージャーがすべてのサイン権を持っているから、間に合えば成立すると。そしてなんとか移籍市場が閉まる3分前くらいに間に合いました。

その後、新聞を見たら『長友、インテル!』みたいに紙面が盛り上がっているわけです。普通は代理人業務って20%くらい入るものだと思うのですが、私は『ありがとう、ミラノに来たらまた会おう』とレオナルドに言われて終わりでした(笑)

長友はイタリア語が話せないけど、明るさや人間性が大きかったのだと思います。要するに言葉は二の次で、人間性ですよ。これはよく言うんですけど、まず通訳をするには、通訳をする対象の人との人間関係が重要だと。ジーコが私をクビにしなかったのも、相性が良かったからだと思うんです。それがないと絶対にビジネスは成り立たない。言葉が出来る人はどうしても語学のスキルに頼りがちになってしまう。ペラペラになったらそれでOK、みたいな。でも、そうじゃないんです。よくサッカーチームでそういう光景を見てきましたから。

海外で成功するために必要なのは「必死の覚悟と明るさ」

通訳は、言ってしまえば本当にわけのわからないときにだけ出ていけばいいんじゃないかと。私はそういう考えを持っていました。アントラーズは誰も通訳を頼らないんですよね。自分でコミュニケーションを取ろうとする。だから余計ブラジル人と日本人の関係が上手くいくんですよ。

例えば本田泰人とジョルジーニョは当時最高のダブルボランチだったと思います。でも彼らは全然言葉が通じません。本田はポルトガル語できないし、ジョルジも日本語ができない。でも、動きやカバーリングのタイミングとかはベストなんです。

また、印象的だったのは代表へ行ったとき。(中村)俊輔とか高原(直泰)とかそうそうたるメンバーがいた中で、彼らはまじめだから監督の言うルールのもとにきっちりと練習したいんです。ただ、私なんかは流れで育ってきた通訳だから、いちいち『こういうときだったらどうなんですか』と聞いてくる彼らに対して最初は説明したのですが、途中から自分で考えろ、というようなことを言いました。そしたら小野伸二に『あなたは何のためにいるんですか!』と言われて。「普通はそのための通訳なんだ」と思いましたね。

あくまでも選手が主役というのがジーコの考え方で、こっちは裏方。だから選手が困ってから初めて現れるべきで、あとは彼らがやりたいようにやればいいんだと。そういった自由な雰囲気の中で自分も育ってきたんです。普通のチームは通訳が監督の言葉を100%訳して、それを選手が聞いていますけど、当時の鹿島はみんな通訳のことなんか無視していましたよ。『だいたいわかるよ』みたいな。

でもそういうところがアントラーズの異常な強さというか、度胸の強さというか、そういうものに繋がっているんじゃないですかね。『監督のために勝つサッカーをやっているんじゃない』みたいな雰囲気はジーコが全て作りましたから。難しい形かもしれないですけどね。

プレーをしていて、『こいつは良い奴だな』と思うと情が湧くじゃないですか。日本人でもすごく良い人はそういうオーラを出している。どうしてもなんとかしてやりたいみたいな。そういう人はすごく上手くいきますよね。ですから、長友が逆にイタリア語がペラペラだったらあそこまでいってなかったかもしれない。

言葉がわからない中でもとにかくやっていかないといけないという必死の覚悟と、持ち前の明るさが功を奏したのだと思います。インテルの強者の中で日本人選手が人気者になるなんて考えられないですよね。レオナルドも『最初はどうかな、と思っていたけど、長友の明るさには脱帽だよ』、そんなことを言っていました。

<前編はこちら>

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