FC東京&横浜DeNAベイスターズの「史上最多」を更新するデータ戦略

2019年11月21日、東京都港区のANAインターコンチネンタルホテル東京にて、(データマーケティングプラットフォーム「b→dash」の開発、提供を行っている)フロムスクラッチ主催の、国内最大のマーケティングカンファレンス「MiXER」が行われた。

フロムスクラッチ

データマーケティングプラットフォーム「b→dash」

多くの業界において、“データ”は未来を作る新たなエネルギーとして新しい体験の創造に寄与している。今回のイベントでは数多くのマーケターが登壇し、データを活用したマーケティング戦略について議論を展開した。

スポーツ部門では、「“次の顧客体験の創造へ”データの力でスタジアムを満員にする」をテーマに、FC東京でマネジメントダイレクター兼マーケティング統括部長を務める川崎渉氏と、横浜DeNAベイスターズでブランド統括本部長を務める林裕幸氏がパネルディスカッションに登壇。株式会社Jリーグデジタル・コミュニケーション戦略部部長の杉本渉氏がモデレーターとなり、「最強の顧客体験」について語り合った。

FC東京はJを代表して若年層を狙う

2019シーズン、FC東京では味の素スタジアム(以下「味スタ」)における史上最多の平均観客数を記録した。日本代表の武藤嘉紀(現ニューカッスル)が所属した2015年を超え、31,540人が平均してスタジアムに詰めかけた。

スタジアムの稼働率は100%ではないものの、クラブとしては稼働率100%を目指すのではなく、25,000人を下回る“お客さんが入らない試合”を減らすことを目標としている。「25,000人以下の試合を2、3試合に抑えられているのは良いことの一つだと思います」と川崎氏も手応えを感じている。

「スポーツマーケティングでは新規顧客の呼び込みに焦点が当たりがちですが、FC東京は既存のお客様や、味スタに戻ってくださった“旧民”のお客様に目を向けたこと、そして効果が大きかったと思います」と川崎氏は話す。

チームの好成績もある中で、シーズンチケット購入者の来場率が2018シーズンの65%から70〜80%に増加した。固定顧客の来訪は平均観客数を必然的に伸ばしているのだ。

多くの聴衆が会場に集まった

FC東京のターゲット設定は既存層と新規層に分かれており、既存は”試合観戦が習慣化している30~40代の男性・家族”となっている。2019シーズンこそ既存層をメインターゲットにしたが、それ以降は新規の”休日を仲間と思い切り楽しみたい10~20代の若者”の獲得にシフトするようだ。

Jリーグ全体の課題として、10~20代のファンベースが薄いことは課題に挙げられており、クラブによっては地域の若年層におけるクラブ認知度が3割を下回るケースもあるという。1993年の開幕当初からJリーグを知る年齢層が中心となったため、ファンの年齢層も26年をかけて上がっているからだ。「若者の人口が多い東京にあるクラブとして、Jリーグを代表してFC東京が獲得しなければいけない責任もあります」と川崎氏は強く意気込んだ。

今回のイベントのキーワードである“データ”に関して、「まだまだ使い切れていない」と川崎氏は語るものの、クラブで集計している会員数の分析を昨年からスタート。その結果、2018年に比べて、2019年の取得ID数は2.3倍に激増していることが分かった。

その理由はチケット販売の理念を変えたことにある。従来はコンビニなど、どこにでもFC東京のチケットを置くというスタンスであったため、クラブの目が届かないチャネルで販売されることも少なくなかった。「きっかけがあって来場してくれたにもかかわらず、その後のコミュニケーションが全くできない」(川崎氏)ことはクラブにとって良い傾向ではなかったのだ。

クラブが購買者情報を把握できるチケットチャネルを増加させると、販売比率は昨年の20%から60%に増加。会員数の増加にも大きく寄与している。

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