
えとみほが語る、コロナ後のJクラブ。「広告媒体としての価値を高めたい」【後編】
DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めたい
—今後、クラブとしてオンラインで実現していきたいことはありますか?
えとみほ:クラブ全体として、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現したいと思っています。
内部では、かなり進んでいます。例えばStockというサービスを使って、情報を集積し、属人化しない取り組みはできています。一方、社外に対してはまだまだですね。
—具体的に、できていないことはどういうことがありますか?
えとみほ:例えば、シーズンパスやファンクラブの申し込み。現在は、いびつな形になっているんですよ。オンラインで申請を受け、情報入力を外注し、郵送で送る必要があったり。そのあたりは、今シーズンで整えたいです。
—えとみほさんは栃木SCに入社されてから、ずっとDXに取り組まれているようなものですよね。
えとみほ:そうですね。ただ、実現するのは5年先かなと思っていたんです。コロナによって周囲のリテラシーが上がり、環境が改善されました。ある意味、チャンスだと思っています。
—コロナ以後で、KPIは変化しましたか?
えとみほ:以前までは入場者数を、クラブ全体の目標としていました。でも、現状はマックスで3,800人、拡大しても5,400人までしか増やせません。何に振り切るかは難しいですね。
—UGC数を指標にされたりはしないんでしょうか?
えとみほ:それもありますね。SNSのフォロワー数、言及数、YouTubeの登録数など露出のところはコロナ後に見るようになりました。
以前は「フォロワーだけ増やしても意味がないかな」と思っていたんですけど、今はスポンサー獲得のために必要な指標になってきているので。SNSのフォロワー、ビュー数、UGCの数などはすごく見ています。
—来年いっぱいは、これらの数字が重視されそうですよね。観客が戻れば、そこに入場者数も指標に戻ってくるというか。
えとみほ:そうですね。SNSに注力するとか、動画メディアに注力する流れはコロナが落ち着いても続くだろうと思います。
スポンサーさんに甘えず、広告媒体としての価値を。
—コロナ禍で、経営的な影響はどの程度ありましたか?
えとみほ:幸い、今季はそこまで大きくないです。シーズンチケットとファンクラブ会費ではすでにお金をいただいており、返金もそこまで多くなかったためです。
—サポーターの方々が、返金を希望されなかったんですね。
えとみほ:そうなんです。返金希望を募ったんですけど、希望者は1割未満でした。スポンサー収入もいただいているので、今季に関してはそこまで経営に深刻なダメージを与えるほどの大きなマイナスにならずに済みました。
問題は来季です。一生懸命SNSのフォロワーやビュー数を増やしているのも、来季のスポンサー獲得が目的です。来季なんですよね、大きな影響が出てくるのは。
—ご自身でも、営業活動はなされているのでしょうか?
えとみほ:積極的に回ったりはしていないですが、やっています。うちはいろいろなITの会社さんからサプライしてもらっていて、例えばformrun(ベーシック社)とかStock(Stock社)、KAIKOKU(カイコク)というWEBマーケターのマッチングサービスとか。サービスを無料で使わせてもらい、その代わり看板を出すといった営業をしています。
—スポンサーフィーを振り込んでくれる会社の見通しは、いかがでしょう?
えとみほ:幸い、影響は少ない見通しです。他クラブの営業さんとも話すんですが、うちのクラブには良くも悪くも地域のためにお金を出してくれる会社さんが多いんです。本当にありがたいですね。
—来年も今年なみにスポンサーフィーを獲得できたら、現在のSNSマーケティングを具体的なスポンサーメリットに繋げられる可能性がありますね。
えとみほ:そうですね、スポンサーさんに甘えているのはよくないので。広告媒体としての価値を出していきたいです。今、栃木の会社さんで困っているのはSNSやネットを使ったプロモーションなので、そこでお役に立てればと思います。
—多くのJクラブにとって課題だった「広告媒体としての価値」を、引き出す動きになっていますね。
えとみほ:選手SNSの価値については「今までなんで気づかなかったんだろう?」と思いました。業界全体でメンタルブロックがかかっていたかもしれないですし、選手自身が気づいていない部分も大きかったかもしれません。
—名古屋は、グランパスくんの投稿を頑張っていますよね。地域によっては、選手よりもマスコットのほうがうまくいく可能性もあるんでしょうか。
えとみほ:そうですね、マスコットは移籍しないので(笑)。選手を使うマーケティングの欠点は、移籍してしまうこと。これは初年度で思いましたね、「うまく使えるようになったな」と思ったら翌年いない、みたいな(苦笑)。
—とはいえ、選手にとっては契約交渉時に「これだけの広告効果を生み出した」という話ができますよね。それは、選手のマーケティング面での価値を引き上げると思います。
えとみほ:そうです。選手自体がメディアを持つことは、今後めちゃくちゃ重要になると思っています。
極論、札幌のチャナティップ選手みたいにインスタグラムで200万フォロワーがいる選手はすごく価値があるわけです。今後、日本の選手にもそういった意識が出てくるんじゃないかなと思っています。
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