バルサの小6から受けた「衝撃」。小坂雄樹が語る、分析官の本音

バルサの小学6年から感じた、世界の分析力

近年は、トラッキングデータなどの発達によって、プレーが可視化されています。得られる情報が多くなった分、選手や監督に提供する内容の取捨選択をしなければいけません。また、情報を適切に扱うために、私たちの分析力を高める必要があります。

それは選手も同じです。以前、スカパー!では「バルサTV」という番組がありました。育成年代からトップチームまで、FCバルセロナの情報を凝縮。その番組で、小学6年の選手のインタビューを見た時に、衝撃を受けました。

「今日の試合はどうでしたか?」という質問に対して、「試合前に監督からこのような指示があった」「相手が違うプランで来たので、選手でやり方を変えた」「ハーフタイムに監督からの指示があって、修正して勝つことができた」と。

当時、日本では「世界にはこういうトレーニングがあるんだ」という話をしていましたが、彼らはその先を行っていたんです。インタビューでの発言から、分析力の高さを感じました。

日本の選手の技術や体力は、昔より上がってきていると思います。ですが、分析力では世界に置いていかれています。試合の中で何が起こっているのかを見て、分析して、実践する。FCバルセロナの選手は、それを試合後に言葉でも表現できるんです。

「頭」を鍛えることで世界との差は縮まる

Hudlを使い始めたきっかけは、2014年にマリノスがシティ・フットボール・グループ(世界的なサッカー事業グループ。プレミアリーグの強豪、マンチェスター・シティの親会社でもある)に加わったことです。

マンチェスター・シティでヘッドアナリストを務めていたエドワード・サリー氏が、マリノスにHudlを勧めてくれました。存在自体は知っていましたが、日本には個人で使っている人はいても、クラブで使っている事例がなかったんです。

新しいツールを取り入れる時には、「使いこなさないといけない」というハードルがあります。使い方が「分かる」だけではダメで、使いこなして選手に落とし込んでいかないと、何も生まれません。現場にいると、学ぶ時間もなかなか取れないですが、マンチェスター・シティやHudlのサポートもあって身についていきました。

最初は懐疑的ではあったものの、すぐに「もっと早く使えば良かった」と思いました。正直、映像編集の延長くらいにしか考えていなかったんです。映像やデータがスムーズに共有できますし、場所を選ばずに見られる。選手自身の分析も捗るので、分析力の向上に繋がります。

コロナ禍ということもありますが、テクニカルやフィジカルの分野は、コストカットされやすい部分だと思います。どれだけ選手の強化に結びつくのかが、説明しづらかったんです。最近はテクノロジーの向上によって、それを理解できるクラブが増えてきているように感じます。

私が加わったクラブには、契約の時に「Hudlを導入してほしい」と言っています(笑)。分析力で、日本が世界に遅れを取っているのは明白です。クラブやリーグがその問題意識を持てば、日本サッカー全体のレベルアップも図れます。

Hudlは、映像やデータを共有するだけでなく、コミュニケーションツールとしても使えます。選手と一緒に見て、考えて、それを言葉にする。心・技・体に加え、頭も鍛えることができれば、世界との差は縮まるのではないかと思います。

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