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香川真司,サッカー

なぜ日本人とブンデスリーガは相性がいいのか 「東洋のコンピューター」が切り開いた歴史

プレミアリーグ、ラ・リーガ、セリエAと並びサッカーの4大リーグの一角を占めるブンデスリーガでは、これまで多くの日本人選手がプレーし、その実力を世界の舞台で証明してきた。今季も日本代表主将の吉田麻也がシャルケ、堂安律がフライブルクへ、板倉滉がボルシアMGにそれぞれ移籍し、ブンデスリーガの舞台でまた新たな日本人選手の歴史を刻もうとしている。そんな日本人選手とブンデスリーガについて、歴史を紐解きながらその関係性を検証してみたい。(文・井本佳孝)

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日本人ムーブメントを起こした香川

香川真司,サッカー
写真:ドルトムントで活躍した香川真司(Photo by ANP via Getty Images)

ブンデスリーガで最初にプレーしたのは奥寺康彦だ。1977年に古河電工サッカー部からケルンに移籍すると、1977-78年のリーグ優勝とカップ戦制覇に貢献し、UEFAチャンピオンズカップ(現UEFAチャンピオンズ・リーグ)でのプレーも経験。その後、ヘルタ・ベルリン、ブレーメンにも所属し、ウイング、サイドバックなどサイドのマルチロールとして重宝された。日本人ならではの緻密なプレーぶりから「東洋のコンピューター」と評された。9年にわたりドイツでプレーした奥寺の存在は、その後日本人選手がブンデスリーガでプレーするための、一つの足掛かりになったのは間違いない。

その後、Jリーグの発足とともに日本サッカーが発展し、日本人選手の海外移籍の動きが活発になる。そんな中、ドイツの地でインパクトを放ったのが現在ベルギーのシント=トロイデンでプレーする香川真司である。2010年夏にセレッソ大阪からボルシア・ドルトムントに移籍すると、足元の繊細で細かいテクニックや大柄な選手たちを翻弄する巧みなターン、ゴール前での決定力などを武器に主力を担い、ドルトムントの2年連続のリーグ制覇に貢献。その後、プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドでのプレーを経て復帰し、計6年半ドルトムントでプレーした。その活躍により、2010年代に多くの日本人選手がブンデスリーガに挑戦する一つのムーブメントを起こした。

ほかには、香川と同時期に鹿島アントラーズからシャルケに移籍した内田篤人も、持ち前のスピードや右サイドでの知性溢れるプレーを武器に名門でレギュラーとして活躍。移籍初年度の2010-11シーズンには、日本人史上初のCLベスト4進出に大きく貢献するなど、欧州の地で確かな足跡を残した。また、元日本代表主将の長谷部誠も、2008年に浦和レッズからヴォルフスブルクに移籍しリーグ優勝を経験した。ニュルンベルクを経て、2014年から現在もプレーするフランクフルトに加入すると、ボランチだけでなくリベロとしても新境地を開拓するなど息の長い活躍を続けている。2020年にはアジア人のブンデスリーガ最多出場記録を更新し、38歳でブンデスリーガ最年長プレーヤーとなった今も、ドイツの地で“生けるレジェンド”として名を刻んでいる。

ドイツの地で武器となる“日本人らしさ”

内田篤人,サッカー
写真:ドイツ時代の内田篤人(Foto Florian Pohl/City-Press GbR)

なぜ日本人選手が活躍してきたのか、それはリーグのスタイルが挙げられる。ブンデスリーガは高いインテンシティ(プレー強度)が持ち味のリーグで、ボールを保持するプレーが特徴のラ・リーガに比べると、縦に速い直線的なサッカースタイルを志向するチームが多い。その中で、現在リヴァプールのユルゲン・クロップ監督がドルトムント時代から採用するゲーゲンプレスに代表される激しいプレッシングなど、走力やスタミナが求められるリーグである。奥寺や内田、シュツットガルトやマインツでプレーした岡崎慎司などはこの特徴に適応し、ドイツの地で重宝される存在になった。

また、そんなスタイルのリーグにおいて武器になるのが“日本人らしさ”である、細かいテクニックやスピードを武器にした小回りの利いたプレーである。ドルトムントでの香川やニュルンベルク、ハノーファーでプレーした清武弘嗣はこの日本人ならではの特性を武器に活躍した例で、その活躍ぶりが認められて前者はマンチェスター・Uに、後者はスペインのセビージャへステップアップを果たした。ドイツの激しいサッカーへの適応が求められる中でも日本人として培ってきた武器を最大限に生かすことで、ブンデスリーガの舞台で活躍できることを証明した。

そんなブンデスリーガは外国人選手枠がないことも特徴で、3人の枠が設けられているラ・リーガや、労働許可証の取得に条件があるプレミアリーグなどに比べると、選手登録のハードルが高くないのも優位に働いている。また、奥寺や香川、内田、長谷部といった選手たちの活躍により、「日本人選手が活躍できるリーグ」というイメージが欧州でも定着しつつあるのも大きい。さらに、ケルン時代に奥寺とプレー経験があり、香川をはじめ多くの日本人選手の移籍に携わった代理人であるトーマス・クロートの存在も今日の日本人選手とブンデスリーガの関係に一役買っているだろう。

(次のページへ続く)

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