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中村憲剛×結城康平「田中碧と守田英正が、代表で輝きを放てる理由。海外移籍は、すればいいものではない」

川崎フロンターレを2020シーズン限りで引退後、精力的にサッカーを発信されている中村憲剛さん。ポジショナルプレーについて日本でいち早く紹介するなど、インターネット界隈で絶大な支持を集めるフットボールライターの結城康平さん。

「トップ選手」と「WEB論客」という異色の組み合わせによる対談が実現。近年多くなっている若手の海外移籍や、日本代表の現在地について語り合いました。

インタビュー=北健一郎
構成=佐口賢作
写真=浦正弘

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■目次
川崎のベースは「相手を見てどこに立つか」
海外移籍は行けばいいというものではない
日本の現在地を知った五輪のスペイン戦

川崎のベースは「相手を見てどこに立つか」

結城康平(以下、結城) 川崎は欧州基準のポジショナルプレーを独自に解釈したサッカーをするようになり、そこで育った選手たちは日本代表でも他の選手とは違った輝きがあります。特に日本代表でプレーする川崎フロンターレや元川崎の選手のプレーは見ていて本当におもしろく魅力的です。

ただ、僕は川崎をずっと追いかけてきたわけではないのでお聞きしたいんですが、憲剛さんの現役時代、川崎はどうやって独自のサッカーを形作ってきたんですか?

中村憲剛(以下、中村) その答えになるかどうかわかりませんが、フロンターレは僕が現役時代、特に中盤から終盤にかけてですかね、立ち位置・ポジショニングを意識したサッカーをずっと積み上げてきたという印象です。ただ、練習中に監督やコーチ、選手が「5レーンだ」、「ポジショナルプレーだ」と言いながらやっていたわけではないんです。

起点となるポイントはシンプルで、「相手を見て、自分がどこにポジションをとるか」を決めること。その上で大事なのは、味方1人が自分の立ち位置を決めたとき、それを理解し、反応できる選手が周りに何人いるかです。

理想は常に変化する状況に合わせて、1人の意志・動きに合わせて全員がその意図を汲み取り連動することです。そして、こちらの狙いを相手が封じてきたら、別のところでまた次の手を作っていく。

その繰り返しを連動してやっていこうという練習の積み重ね。それがフロンターレの選手たちのベースとして息づいている。だから、「こうなったら、こうなるよね」というゲームの構図の予測ができ、共有できるようになったんだと思うんです。

たとえば、相手のシステムが4-4-2だったらこう、5-3-2だったらこう、と。ゲームの構図を共有する選手の数を増やし、相手に対処しながら、自分たちの良さを出していける。それがフロンターレの強みになっているはずです。

結城 アジア最終予選のオーストラリア戦での田中碧選手、守田英正選手のプレー、そして、出場停止で守田選手を欠いたオマーン戦。どちらの試合でも多くの人が2人のプレーに注目していました。

2人はプレーの意図を発信する能力の高い選手だと思っています。そんな2人が目立つのは、周りの選手たちが田中選手、守田選手の発信している意図を受信しきれていないのかな? とも。

中村 他の日本代表の選手たちがですか?

結城 そうです。代表レベルの選手たちですから、みなさん自分たちのプレーの意図を発信することはできています。でも、田中選手や守田選手のような「見えている選手」が発信する、「相手を見て連続して決めているゲームの構図」を受信して動くのは苦手なのかな、と。

そこで、少しズレが生じている。でも、味方に強く要求せず、自らのプレーで発信し続けている。だから、彼らの動きが目立つ……。これは僕の勝手な印象ですけど、川崎出身の選手たちは代表でプレーするとき、すごく気を使っているのかなと思っています。

中村 たぶん、それは代表での立ち位置が問題だと思います。今の立ち位置になって半年も経ってませんから。より発信力が強まるのは、彼らがこの後よりコンスタントにスタメン出場し始めたらかなと思います。

また、結城さんも言うように、みんなが意図を共有してプレーできていれば、碧と守田の2人の存在は目立たなくなると思うんですよね。

結城 そうなったとき、日本代表はより良い状態になるのかもしれません。

一方で田中選手や守田選手は海外に移籍して、川崎のように受信できる選手ばかりがいる環境ではありません。そのなかでシーズンを過ごし、どう発信しすれば受信してもらえるのか。自分がどうやってプレーしていくべきかを一プレイヤーとして模索しているはずですよね。その経験による成長も楽しみにしています。

中村 実際、オーストラリア戦のピッチ上では近くや周りのチームメートに指示を出すだけではなく、その選手の考えを聞き、擦り合わせている2人の姿が数多く見て取れました。考えてみれば当たり前で、あの試合は4-3-3のシステムがほぼぶっつけ本番でしたからね。

結城 たしかに、ずっと声を出していましたし、僕が川崎の選手にヨーロッパっぽさを感じるのはハンドサインのうまさです。一手、二手先を見ながら、ハンドサインを含めたボディランゲージで周りの選手に意図を伝えようとしていますよね。

中村 そこはフロンターレでも先のことを考えながらずっとプレーしていたからだと思います。一手、二手先を見て、「こうなって、こうなって、こうなるよね。だから、そこ」とイメージできればハンドサインが出せるし、意図を共有しているから味方にも伝わります。

結城 試合中にまだ起きていないプレーを予想してハンドサインを出しているのが、すごいところです。一方で、練習時間の短い代表ではそのビジョンを共有するのは難しいですよね。結果的に、二手先を見ている選手と一手先を見ている選手が一緒にプレーしているために噛み合わないのだろうな……というシーンはよく目にします。

中村 そこはある程度しょうがないのかなと思います。現行のスケジュールですと、コンビネーションを合わせる時間がなかなかないですから。また、状況によってそれぞれがこう動くのが良いと考えながら動きますし、必ずしも2人の考えが正解とも限りません。

結城 海外でプレーする選手が中心である以上、今後も代表の練習時間が劇的に増えることはないですよね。だとすると、欧州の代表チームがユベントスのCBコンビといったユニットをうまく当てはめているように、今後は日本代表でも川崎の選手のユニットを活かす時代がくるんじゃないかなと思っています。

中盤は川崎出身の3人で、と。そうなると日本代表のサッカーはもっとおもしろくなるはずです。また、その成功を見て他のJのクラブも負けじと選手を育て、独自の文化を築く流れになっていくとJリーグもさらに盛り上がるんじゃないかなと期待しています。

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