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【新時代サッカー育成対談】幸野健一×カレン・ロバート|「元Jリーガー経営者はなぜグラウンドを作るのか?」|後編

トーナメント文化を壊してリーグ戦の文化へ

──もう一つのイベントで、ケンさんが実行委員長、責任者を務めているプレミアリーグU-11に、ボビさんのチームも参加されています。このリーグ戦をやる上でもグラウンドというのは非常に大事になってきますね?

幸野 そうですね。プレミアリーグU-11が何かというのを知らない方もいるので説明します。

元々日本の小学生年代はトーナメント文化でした。全日本少年サッカー大会を筆頭に、毎週のように何とか招待、何とか大会という様々な大会を渡り歩いていました。しかし、そういう育て方は行き当たりばったりです。一方で世界の主流は年間を通したリーグ戦。

欧州も南米も年間30試合ほどのリーグ戦をやっています。例え負けても、すぐ次の週にまた試合があるという落ち着いた環境でサッカーに取り組めることが、一番のメリットです。150年もの間、彼らがサッカーの歴史の中で試行錯誤してたどり着いた答えで、日本もリーグ戦主体に変えるべきです。

しかし日本のトーナメントは、全国高校選手権をはじめインターハイなどあらゆるカテゴリーにあります。それをリーグ戦に変えるように、日本サッカー協会が全て管理できればいいですが、そこまで手が回らないのが実情。だから私たちが立ち上がって、6年前に作ったのがプレミアリーグU-11です。

現在は33の都道府県で3000試合を行っていて、7000人の選手がプレーする日本最大のリーグ戦になっています。千葉県は3部まであって、ボビのチームにも参加してもらって、今は3部を戦っています。

リーグ戦は6年目に入り、多くの子どもたちが年間を通した試合を楽しんでいます。皆さんにも共感していただいているからこそ、33都道府県に拡大しているのかなと思います。今年の4月から東北の山形県、秋田県、岩手県が参加してくれることが決定し、東北6県全部が参加してくれます。4月からは東北大会を東北全県で開催することが決まって、3月27日、28日は宮城県の尾長町で開かれることになっています。

──プレミアリーグU-11の順位表を見ているのですが、1部のジェフ、レイソルなど、強豪のチームがたくさんを参加されています。そのなかでボビさんのチームは今は3部Bですね。

カレン 去年、ジュニアのチームををやっと作れました。小学4年生から始めています。

幸野 だからいま小学4年生しかいないんだよね?

カレン そうですね。

──プレミアリーグU-11に参加し、運営にも関わっていると思いますが、いかがでしょうか?

カレン 元々、小学4年生の大会は少なくて、僕のチームは今年度に関しては、この大会しかありませんでした。強いグループに参加して、勝つことは難しい。でも子どもたちはいい経験になっていますし、ルールもかなり特徴的です。日本のルールとは違って、オフサイドルールや3ピリオド制、必ず選手を交代させなければいけないなど、育成年代に大事な部分を全部盛り込んでくれているルールです。子どもたちは実になっていると思います。

──リーグ戦をやる上で、グラウンドは結構ネックになるんですか?

カレン そうですね。コロナの影響で、試合消化が難しかったのです。僕らはグラウンドを所有していたので、「グラウンド空いてるので、試合できませんか」とお願いしても、そもそも試合自体がダメ。コロナの陽性者が出てしまったこともあり、延期が多かったですね。ただ、グラウンドを所有しているチームだったので、それでも試合を消化することはできました。

──ほとんどのクラブチームは、学校や行政が所有しているバターンが多いですね。緊急事態宣言が出ると、活動できなくなるなど大きな影響を受けてしまいます。

幸野 だからこのコロナが落ち着かないと、自分たちのグラウンドが使えも、他のチームとの対外試合ができない。だからこのコロナが落ち着くことが一番で、早く落ちくことを願っています。

──本当そうですね。ありがとうございます。

幸野 やっぱりわれわれは、グラウンドをしっかり作って、地に足つけながらやってるやり方。そうじゃないやり方のクラブも出てきていて、まずはハードを作ってみたり。いろいろなやり方が出てきている。でも私とボビは似ていて、そういう人たちってあまりいない。今はSNS戦略だったり、みんな派手にやっていてすごい。

カレン そうですね(笑)。

幸野 そういうのに負けないように、われわれも頑張ってやっていかなきゃいけないんだよ。

カレン 本当にそうですよ。東京のクラブに負けないようにやっていかないと。

幸野 でも天皇杯は、うちの方が上に行ったから。

カレン それは、もう、関係無いっす(笑)。

幸野 はっはっは(笑)。まあ、お互い手を取りながら東京に負けないようにやっていかないと。頑張ろう。

カレン 頑張りましょう。


幸野健一(こうの・けんいち)
プレミアリーグU-11実行委員長/FC市川GUNNERS代表/サッカーコンサルタント

著書
パッション 新世界を生き抜く子どもの育て方

1961年9月25日、東京都生まれ。中央大学卒。サッカー・コンサルタント。7歳よりサッカーを始め、17歳のときに単身イングランドへ渡りプレミアリーグのチームの下部組織等でプレー。 以後、指導者として日本のサッカーが世界に追いつくために、世界43カ国の育成機関やスタジアムを回り、世界中に多くのサッカー関係者の人脈をもつ。現役プレーヤーとしても、50年にわたり年間50試合、通算2500試合以上プレーし続けている。育成を中心にサッカーに関わる課題解決をはかるサッカーコンサルタントとしても活動し、2015年に日本最大の私設リーグ「プレミアリーグU-11」を創設。現在は33都道府県で開催し、400チーム、7000人の小学校5年生選手が年間を通し てプレー。自身は実行委員長として、日本中にリーグ戦文化が根付く活動をライフワークとしている。また、2013年に自前の人工芝フルピッチのサッカー場を持つFC市川GUNNERSを設立し、代表を務めている。

北健一郎(きた・けんいちろう)

WHITE BOARD編集長/Smart Sports News編集長/フットサル全力応援メディアSAL編集長/アベマFリーグLIVE編集長

1982年7月6日生まれ。北海道出身。2005年よりサッカー・フットサルを中心としたライター・編集者として幅広く活動する。 これまでに著者・構成として関わった書籍は50冊以上、累計発行部数は50万部を超える。 代表作は「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」など。FIFAワールドカップは2010年、2014年、2018年と3大会連続取材中。 テレビ番組やラジオ番組などにコメンテーターとして出演するほか、イベントの司会・MCも数多くこなす。 2018年からはスポーツのWEBメディアやオンラインサービスを軸にしており、WHITE BOARD、Smart Sports News、フットサル全力応援メディアSAL、アベマFリーグLIVEで編集長・プロデューサーを務める。 2021年4月、株式会社ウニベルサーレを創業。通称「キタケン」。

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