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【新時代サッカー育成対談】幸野健一×守山真悟×内野智章|「どうやったらプロになれるのか?」|後編

掲載協力・WHITE BOARD SPORTS


■登壇者

・幸野健一|プレミアリーグU-11実行委員長/FC市川GUNNERS代表/サッカーコンサルタント
・守山真悟|関西地域委員兼大阪府実行委員長
・内野智章|興國高校サッカー部監督

■ファシリテーター

・北健一郎|サッカーライター/ホワイトボードスポーツ編集長


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ユースより高体連の方がプロになれる確率が高い

──どんな選手がプロ選手になっていくのでしょうか?

幸野 自分の息子もJリーガーですけど、僕は特徴のある選手かなと。満遍なくいろいろな高いレベルでそれぞれがあるよりも飛び道具を持っている選手の方が重宝されると思います。今で言えば左SBが足りないと思うし、でかいSBで足が速かったり左利きだったりしたら有利なんじゃないでしょうか。特徴のある選手をJクラブのスカウトも見ているわけだから、そのへんは内野さんは何十人もJリーガーを出しているのでわかっていると思います。

──自分の特徴に早い段階で気づかないとどう個性を伸ばしていくかわからなくなってしまう。

幸野 それを見抜く目が指導者にとって育てるというよりも一番大事なものになります。その子の特徴を見抜いてあげて自分の強みを認識させてあげて「俺はここで生きていくんだ」と早い段階から強い覚悟を持たせることができればプロに近づくと思います。

──なるほど。では内野監督はどんな選手だと思いますか? 今、内野監督ほど語るのに相応しい方はいないと思いますが(笑)。

内野 やはり特徴のある選手というのは間違いないと思います。今回、(横浜・F・)マリノスに4人入団しますけどマリノスに入団する4人はいずれも“スーパートップアスリート”ですね。小学生で言えば運動のスーパースターのような感じスポーツはなんでもできる。コーディネーション能力が高い。今までに23人がプロに進んでいますが全部共通していることがあって、努力する才能を持っています。

──努力する才能。

内野 サッカーをする才能を持っている選手はそこそこいるんですけど、努力する才能がないんです。「サッカーに対してすごく真摯に向き合って自主練して、自分の将来を見据えてサッカーに取り組んだらプロになれるのにな」という選手は結構います。でも結局、努力ができない。プロになるための努力って半端ないので。例えばマリノスに行くCBの平井(駿助)というのがいるんですけど、高校に入ってからは水しか飲み物を飲んでいない。それはいいかどうかは別として、自分で調べて水をたくさん摂ることで老廃物を出すだとか、そういうことを勉強していて、(果汁)100%ジュースも飲んでません。それくらいストイックなやつらしか高卒でプロになれないんです。

──すごいですね……(笑)。ですが“スーパートップアスリート”はJリーグの下部組織に引き抜かれないのでしょうか。

内野 基本的にそういう子たちはみんなJのアカデミーに行きますね。うちにはそういう子たちは来ませんが、その中で自分の努力でプロに近づくためのトレーニングを毎日継続できる子がプロになっている。リップエースから来た樺山(諒乃介)というのはJユースを10チームくらい断って来ているので彼はまた例外だと思いますが。

──Jリーグの下部組織に行くより興國高校からの方がプロに行けるというある種の逆転現象が起きていると思うのですが、こうなっているのはなぜですか?

内野 シンプルに日本の仕組みの問題だと思います。ほとんどの小中学生の保護者の方々は「Jのアカデミーに行くことでプロに近くなる」と思っている。それは決して間違いではないですけど、日本の仕組みが実はそうではないんですね。どういうことかと言うと、例えばAというJのアカデミーに行くじゃないですか。そうしたら(進む先が)そこのトップチームしかない。Aクラブのユースに行ったらAクラブのトップチームがボランチを必要としていなかったらそのボランチの選手はプロになれないんです。さらに言うとボランチの選手の一つ上にプロに上がる選手いたら2年連続で同じポジションの選手は昇格させないので。

──確かに……。

内野 ということはJのアカデミーは一学年で一人上がるかどうかなんです。だけど興國だけじゃなくて青森山田高校さんとか昌平高校さんもそうですけど、Jリーグの全チームが受け皿になっています。例えばガンバ大阪とセレッソ大阪はボランチの選手を必要としていないけど、ヴィッセル神戸は探しているとか、ガンバはFWを欲しがっているけど、セレッソはいらないとか、チーム事情によっていろいろあるじゃないですか。なので高校にいればボランチを探している何十クラブの中から一つ選べるんです。これが海外だと良い選手はお金でどんどん買われていくので、久保(建英)くんの同級生のキャプテンのCB(エリック・ガルシア)は当時、高校一年生にして2億4千万円でマンチェスター・シティに買われているんです。日本で例えるとセレッソの優秀なユースの選手をガンバが「セレッソよりお金出すから」といって獲得できるわけです。海外ではそれが至ってノーマルなので別に裏切りでもなんでもない。日本はあるアカデミーで育ったらそこのトップしかない。他のクラブのトップチームにいく可能性も0ではないですけど、お互いにナーバスになるので大学に進学することになる。なのでJユースの指導や指導者がダメというわけでなくて、日本のユースの仕組みが実はプロになりにくい。環境はプロに近いですけど結局一学年で一人くらいしかプロになれないんです。

──実際、売り込むようなことはあるんですか?

内野 基本的にはないです。基本的には試合を観に来てくれて話をして、何試合か見られて練習に呼ばれて、どんな人間性か、どんな実力があるかという質問に答えながら練習参加をして「ダメ」と言われたり「是非!」と言われるのが基本。ですがユースにいたら他のクラブのトップチームの練習参加もほとんどできない。樺山はそれを理解していたのでユースを断って興國に来たんです。

──ある意味で戦略的に。

内野 そうです。例えば樺山がすごくポゼッションをするユースに行ったとしても、そこのトップチームの監督がリアクションサッカーを好む監督に変わったらもうポゼッションする選手はいらないんです。だから今の日本の仕組みはすごくリスクが高いんですよ。でも高校だとヴィッセル神戸がポゼッションじゃなくなろうが関係ない。じゃあポゼッションじゃないスタイルに合う選手をとればいいだけの話なので。ただ指導内容はユースと高体連でいろいろ変わってくるのでそこは実際に練習参加して決めるべきだと思いますけど、今の日本の仕組みで言うと、例えば今年のリップエースの中学3年生はJリーグの10チーム以上からオファーが来ています。下手にJアカデミーに行くよりもユースに対する門戸はリップエースの方が広いわけです。

──10チーム以上からオファーが来ているというのはどういうことですか?

守山 U-15の選手が来年度の進路のときにJアカデミーさんからいろいろお誘いを受けていたという中でうちのところにお世話になる選手もいるという話です。

内野 それがJアカデミーに行っていたら他所のユースから誘われることはほぼないじゃないですか。だけどリップエースの選手ならJユースの全チームが誘える。自分がそのときにやりたいサッカーを選べるのと選べないのでは大きな差になりますよね。だから僕の息子はリップエースなんですよ(笑)。

──内野さんの息子さんはリップエースの選手なんですね(笑)。

内野 守山さんに教わっています。

──今おいくつなんですか?

内野 小学6年生と4年生で2人ともリップエースです。

幸野 僕から見ると内野さんの今のやり方は来年だけでも多分、育成費が数百万円入ってくるじゃないですか。日本って育成がかなり安いんですよ。FIFAのルールのトレーニング・コンペンセーションに比べれば0が1つ、2つ少ない。内野さんは今後、海外に直接売って、ヨーロッパの主要リーグの1部のチームに入団したら1000万単位でお金が入ってくるやり方を目指していると思います。僕もそこを目指していますがやはり育成のクラブは日本だけじゃなくてヨーロッパとか海外のクラブに選手を輩出するようになっていったらもっと潤って、お金がたくさん入って好循環になってくるはずです。

内野 J1だと入ってくるお金は90万円です。でもUEFAの主要リーグに行けば1300万円です。

──高校からダイレクトにですか?

内野 そうです。

──ある意味ではクラブは1300万円を払わなければいけない。

内野 死ぬほど安いですよ。だってCLでベンチ入りして勝てば勝利給として一番安くても300万円位入りますから。なのでもらっている人は給料とは別に500万〜1000万円が入っています。そういう世界なので1300万円なんて1万3000円以下くらい(の感覚)ですよ。

──では日本の90万円は安いどころの話ではない気がしてしまうのですが……。

内野 ドメスティックなルールで、このせいで日本の成長は止まっていると思います。今回、5人(Jクラブへ)行きますけどこれがヨーロッパなら6000万円くらい入ってますからね。でも日本なので400万円くらい。例えばリップエースから興國に来た樺山はマリノスに行きますけど、これがヨーロッパの場合はリップエースにも600万円くらい入ってます。そうやって選手を育てることで新しいグラウンドを作ったり、新しい雇用を生んだりするんですよ。

──それ以外にも移動のためのコストとかもですよね。

内野 そうです。選手を育てることが町の雇用を生んで町を豊かにするんです。だから町ぐるみで選手を育てているんですよ。でも育成年代で優勝してもお金が全く入ってこない。出ていく方が多いです。だからヨーロッパでは育っているんです。

──ちゃんとビジネスモデルが出来上がっていると。

内野 ビジネスモデルですし選手を育てることは自分たちが生き残っていくための収入源ですよ。

幸野 ヨーロッパのクラブの考えは下から選手を育てることです。外から選手を取る場合は「本来なら自分たちが育てるための費用がかかっているけど、他に育ててもらったからその対価としてそれに応じたお金を払う」というのが基本的な考え方です。それが日本では高校3年間で90万円。中学は30万円とあまりにも安すぎる。FIFAのルールを適応しなかった理由は「そんなにお金を払ったら潰れてしまう」とJクラブが反対したから。だからFIFAの国際ルールと日本のルールは違うんです。そこが僕ら育成に携わるものとしてはFIFAのルールに近づけてほしいとすごく思っているところ。そうしたら僕らも頑張って選手を育てて収入を得て還元する仕組みが出来上がるはずなので。そうしたら育成年代の指導者たちは頑張ると思います。

──守山さん、今回リップエースジュニア出身の選手が4人もプロに行かれますが「お金は入ってくるけれども……」という感じなんでしょうか。

守山 いや、嬉しいですよ。ただ今の話を以前もウッチーから聞いていたのでそうなってくれた方が単純に日本サッカーが良くなると思います。競争の原理が少し働いたり、雇用だったりサラリーが増えると単純な発想ですがもう少しパイが大きくなると思うので。

幸野 今だったら100万円くらいしか入らないから守山くんの飲み代で全部消えちゃうと思うけれど(笑)、これがFIFAルールならすごいお金が入ってきているはずです。でも4、5人をいっぺんにプロにするのはすごく大変なことですし、その対価がたった100万円じゃかわいそうだなと思います。

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