Jリーグ理事 佐伯夕利子 YURIKO SAEKI Vol.2「優秀なタレントを見落とすのはありえない」
経済格差で未来が変わってはいけない
——日本サッカーを強くする、というとトップオブトップの強化に目が行きがちですが、仕組みの構築がより重要になってくるなと感じます。
驚いたのが、Jクラブのアカデミーでも選手たちがみんなお金を払っているということです。つまりトップアスリートと認められるぐらいの能力があっても、裕福な家庭でなければJクラブのアカデミーには入れない。ビジャレアルのアカデミーの選手というのは、いろいろと条件はあるんですけどスポーツ庁から定められているトップアスリート認証というものをもらいます。それがあると大学の優先入学とか、国立体育大学に入りやすいとか、コロナ禍で実質的に外出禁止令が出ているスペインでも、トップアスリート認証を持っている選手は外でトレーニングをしてもいいというような特例措置があります。
——特別な才能を持った選手に投資するという文化がある。
日本を背負って立つかもしれないトップアスリートが、親の経済事情で夢を絶たれることが起こっているのだとすれば、なんとかしなければならないと思います。例えばゴルフやフィギュアスケートのように個人スポーツで、練習するのに特別な環境が必要なスポーツは仕方ない面もあります。でもサッカーはそうではない。ヨーロッパのクラブは資金があるので、単純に比較はできませんが、アカデミーの1人の選手につき年間300万はかかると言われています。そうした選手を100人抱えるのは、投資として考えているからです。裕福な家の子のほうが有利になっていく可能性がある今のシステムは変えていなければいけないのではないかと考えています。
Vol.1「“普通の人間”になりたくなかった」
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Vol.3「日本の指導者ライセンスは閉ざされている」
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■プロフィール
佐伯夕利子(さえき・ゆりこ)
1973年10月6日生まれ。福岡県出身。2003年にスペインサッカー界で女性として初めて男子チームのプエルタ・ボニータ(スペイン3部リーグ)の監督に就任。04年からアトレチコ・マドリードの女子チーム監督などを務め、07年にはバレンシアに移り育成の中枢を担う強化執行部セクレタリーを務めてスペイン国王杯優勝にも貢献した。08年からはビジャレアルでトップチームをはじめ全カテゴリーの育成と強化を担う重要ポストや、ユースチームのスタッフ、女子チーム監督など多岐にわたって活躍。同クラブを休職し、20年3月から2年間の任期でJリーグ理事を務めている。
■クレジット
取材・構成:上野直彦、北健一郎
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