デジタル全盛の昨今、ゴルフ情報誌が思い描く「上達戦略」

ゴルフには専門誌が10誌近くあり、これはスポーツ雑誌の中でも際立って多い。特異なジャンルといえる。だが、スマートフォンの普及により、雑誌不況の波が確実に迫ってきているのもまた事実。過去に30万部近くの発行部数を誇ったALBA(アルバトロス・ビュー、隔週刊)の園山隆文編集長に、同誌が描く戦略を聞いた。

■情報伝達変化の中で、教える側と教わる側が身近になった

「雑誌不況」という言葉の表層だけとらえて嘆くのは簡単ですが、自分は決してネガティブに考えていません。活字離れではなくデバイスの多様化であれば、すみ分けして雑誌とスマートフォンが共存していくことは可能なはずです。

ですから、特にここ数年は「雑誌を読んでゴルフがうまくなるのか」ともよく言われますが、これに対してALBAは明確な答えを持っています。掘り下げる前に、ALBAについて少しお話させてください。

弊誌はゴルフ誌の中でも、“レッスン誌”という位置づけで従来から発行してきました。ひと昔前は今と違い、アマチュアゴルファーがレッスンの場や情報を手に入れることは難しく、ティーチングプロや知り合いに習うしか方法がなかった。そういう時代に創刊したため、雑誌に様々なプロのレッスン記事が載っているということもあり、「ALBA」は大ヒットしました。

30年以上たった今では、YouTube動画やスクールもたくさんありレッスンにすぐアクセスできるので、ティーチングプロの存在も身近になっています。ちまたには様々なレッスン情報があふれ、ゴルフを始める敷居が下がったのは業界としても喜ばしいことではないでしょうか。そして、我々はこの「身近さ」にチャンスがあると思っています。

■お金を払う価値は「正確性」にこそある

今後、ALBAは雑誌としてどうしていくべきか。一つのキーワードとして掲げたのが、ゴルファーにとっての“羅針盤”のような存在になるということでした。

「インターネット上に動画や記事が無料であるのに、雑誌にはお金を払って買う価値があるのか」

まさしくこれです。お金を払う価値があればいいわけです。

世にあふれたレッスン情報が脅威でないはずはありません。誌面掲載のレッスンが、全部の読者にマッチするとも思っていません。

ですが毎号多くのプロや上級者に取材をし、その中から編集部員というフィルターを通して厳選。そして、練り上げたレッスンのみを掲載しているという自負があります。正確性すら疑わしいインターネット上のレッスンを検索で探し、仮に壁にぶち当たったら問題点を正確に把握せず、また探すという作業を繰り返す。それなら正確性を担保している雑誌のほうが、上達のスピードはむしろ速くなるのは必然です。

ありきたりですが「やらせ」ではないレッスンが、ALBA誌の中には掲載されています。合う、合わないではなく、「ALBA」を読んでおけば間違いないというゴルファーにとっての羅針盤のような存在。レッスンのトレンドもわかるし、自分に合うレッスンも必ずそこにある。これが弊誌の掲げているコンセプトです。

■生き方のスピードを緩める50代に新たな提案を

とはいえレッスンだけで雑誌が反映し続けるとも思っていません。常に試行錯誤の状況であり危機感は満載ですが、もう一つの方向性は見いだしています。キーワードは既存の読者層である「50代」です。

人生において様々なものに関心が沸く年代。積み上げてきた仕事(キャリア)が閉幕に向かっていく一方で、迫る老後、ガタがでてきた自分の健康、これからの友人関係など、これまでと異なる感情が湧き始めます。猪突猛進(ちょとつもうしん)の人生に対し、スピードを緩めて周りを見回す年齢になったとき、そこに趣味も健康も一気に置き換えられるゴルフをあてはめる人が多いのは間違いありません。

だからこそ50代からのライフスタイルを提案したい。レッスン記事以外のコンテンツを充実させ、読者の知識欲を満たし、“トータルで楽しいゴルフライフの創造”に寄与したい。これがALBAの第二のコンセプトです。

一打でもスコアを縮めたい。もっともっとゴルフを楽しみたい。そんな読者がいる限り、ALBAは全力でそれをサポートします。ALBAがあるとゴルフが5倍楽しくなる! そう思ってもらえれば本望です。

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