SASUKEに挑む勇者たち。御田寺圭コラム

『白饅頭note』の著者であり、有料noteにも関わらず57,000以上のフォロワーを持つ御田寺圭(みたてら・けい)さんの連載コラム。

今回のテーマは「SASUKEに挑む勇者たち」です。

すっかり年末の恒例行事として定着したTBSの人気番組「SASUKE」。今回も一般参加者からプロアスリート、タレント、YouTuberなど、個性的な挑戦者が集まり名場面を演出してくれました。

そんなSASUKEが好きで毎回視聴している御田寺さんは、全身全霊をもって真剣勝負を挑んでいる人たちの姿に心を打たれたと言います。仲間の成功に歓喜し、脱落に悔し涙を流すかれらの姿から学んだことを綴っていただきました。

■クレジット
文=御田寺圭

■目次

SASUKEという年末の風物詩

殺伐としたニュースの多かった2021年末──振り返ってみると、そんな剣呑とした情況においてさえ、穏やかな時間が流れていたひとときがあった。

TBSが毎年放送している人気テレビ番組「SASUKE」の放送時間中である。

すっかり年末の恒例行事として定着した同番組では、今回も総勢100人の個性的な挑戦者が集まり、大いに盛り上がったようだ。私もリアルタイムで視聴していた。

一般参加者からプロアスリート、タレント、YouTuberなど、実に多様な顔ぶれとなった今回大会でも、他の参加者に対して老練の達人よろしく上から目線で講釈を垂れながら、満を持して終盤に登場したSASUKE界の英雄・山田勝己氏が開始5秒で失格になるなど予想外の名場面を演出してくれた。

今回も世間の暗いニュースやピリピリとした雰囲気を忘れて、素直に楽しむことができた。さすがはSASUKEである。ずっとこういう番組だけをやっていればいいのではないか。2021年でいちばんリラックスしたのは、暖かい部屋で食事をしながら、余計なことをなにも考えずにSASUKEを視聴し、挑戦者たちとともに一喜一憂していたあのひとときだったかもしれない。私は個人的にSASUKEが好きなので毎回視聴している。考えてもみれば、私が視聴する唯一の地上波テレビ番組かもしれない。

SASUKEはもう「にぎやかしの企画」を超えている

SASUKEは、実際のところテレビ局によるひとつの企画にすぎない。

だが、そこに参加する人の幾名かにとっては、もはやいち企画程度の枠組みに収まるものではない。誇張でなく、自分の人生のすべてを賭けて、その瞬間の全身全霊をもってSASUKEに真剣勝負を挑んでいる人が少なからずいる。

毎年開催されるSASUKEのために、日々の生活を厳しく律して、激しいトレーニングを積み、大会に向けてモチベーションを高め、心身のコンディションを整えて、それまでの自分が築きあげてきたすべての日々の集大成を、感謝と情熱をもってぶつけるのである。

かれらは単なる遊びでやっているわけではなく、自分の人生に見出した「生きる場所(もっといえば死に場所)」としてSASUKEをとらえている。大げさに言っているわけでもない。SASUKEと出会って、SASUKEに人生をささげ、そしてSASUKEによって人生が変わった人が、放送が開始された1997年から今日までの歴史のなかで大勢いるのだ。

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