• HOME
  • 記事
  • その他
  • 人を繋ぎ、楽しませる“魔法の輪”。ラートで生きていける世界の実現を目指す、吉田望

人を繋ぎ、楽しませる“魔法の輪”。ラートで生きていける世界の実現を目指す、吉田望

大きな鉄の輪が2つ組み合わさった器具に人が大の字で捕まって横向きで転がっていく。テレビ番組でも時々見かける光景だが、あのスポーツは「ラート」という名前なのをご存知だろうか。

今回はそのラート日本代表としても活躍した、吉田望さんに競技について語ってもらう。現在はパフォーマーとして舞台に立つ他、イベントのオーガナイズ等、幅広く活動中。彼女はラートを通した国際交流にも力を入れており、「日米ラート交流企画」を立ち上げた。第2回となる今年は8月に日本での開催が予定されている。

ラート:ドイツ発祥のスポーツ。種目は直転・斜転・跳躍の3つから構成されており、それぞれの演技を採点することで勝敗を決する。器具は身長に応じて選ぶことになり、5cm毎に異なるサイズのものがある。器具の重さはサイズによって若干異なるが、一台45kg前後。持ち運びは大変だが、演技がぶれないよう、この重さが必要になる。

吉田さんパフォーマンス紹介動画

ラートとの出会いは新聞の紙面で

-**初めにラートとの出会いから教えてください。**

私実は中学生の頃、嫌いな先生がいて学校があまり好きではなく、それ以外で何か好きなものを見つけたいと思ってアンテナを張っていた時期がありました。

そんな時にたまたま筑波大学体操部のラート競技の記事が新聞に載っていて、母に「これ、やってみたい!」と言ったら、取材先に電話をかけてくれたんです。いろいろ繋いでもらった結果、東海大学の湘南校舎で体験させてもらえることになりました。それがラートとの初めての出会いです。

-**一番初めにラートをやった時のことを覚えていますか?**

覚えてますよ!衝撃的でした。体操をやっていたこともあって体が逆さになる感覚には慣れていると思っていたのに、ラートはまた全然違って、楽しくてずっと叫んでいました(笑)

体験させてくれた東海大学の人達もすごい良くしてくれて、私があまりに楽しいというので、『来週から練習に来てもいいよ!』と誘ってくれたんです。それで週末に大学の練習に通わせてもらえることになりました。

そこからずっと当時の東海大学の学生の方とはお付き合いがあります。こういうところがニッチなスポーツの良さの1つだと思います。

-**吉田さんをそこまで虜にしたラートの魅力はどういったところでしょう?**

やって楽しい、観て楽しいスポーツです!回る感覚は気持ちいいですし、技も何百とありますからそれができるようになればすごく嬉しいんです。見た目もサーカスみたいで楽しいじゃないですか。

何より回ると観ている人も喜んでくれますしね。これは特にパフォーマーとして活動するようになってから感じたことで、1つ自信になった瞬間でした。今コーチとして指導していても生徒が練習し、発表会にその人の家族や友人が来て喜んでくれている姿を見ると感激します。

私の生徒には大人の方もいます。年齢を重ねてから始めたのにたくさんの技ができるようになって、自信になったという声も頂いています。その人のチャレンジにコーチとして寄り添えたことは私としても嬉しいですね。

吉田望

-**ラートをやることで得られるメリットはあるのでしょうか?**

全身運動なので、血の巡りがよくなってすぐに体がポカポカしてきます。体幹も使いますし。平衡感覚が良くなるとも言われています。体重移動で回転するスポーツなので、どのくらい体を傾ければ器具が回るのか、常に感じ考えながらやらなければならないですから。そのおかげか乗り物には強いです。でもラートをやっている全員がそうではなく、高校2年の時まで教えてもらっていた私のラート界における2人の“先生”のうちの1人、竹内直美さんという方は絶叫マシーンとかも全然ダメだったので一概には言えませんね(笑)

ラート界における2人の恩師の存在

-**その2人の“先生”について教えてください**

今お話した竹内直美さんとの出会いは私のラート人生に大きな影響を与えてくれました。本当に練習はきつかったですが、2度目の出場となった日本選手権で銅メダルを取れたのは先生のおかげです。

しかし、竹内先生は私が高校3年になるタイミングで国際結婚してデンマークに行くことになってしまったんです。最後の練習なんて寂しくて号泣してしまってラートどころではなかったですね。でも彼女は『世界選手権に来ればまた会えるから、ラート頑張るのよ!』と強く握手してくれました。そこから私はその約束を守るために世界を目指すことを決意したので、強く心に残る出来事でした。

現在彼女はデンマーク代表のコーチとして競技に従事しています。一方の私も2011年にアメリカ代表のコーチとして初めて世界選手権に行きました。それ以降、私と竹内先生は日本人なのにお互い別の国のジャージを着て、世界選手権で再会するということを楽しみにやっています。

吉田望

1人目の恩師は竹内直美さん(左上)。今年も世界選手権で2人は再会を果たすことになるだろう。

ラート界における2人目の先生はその竹内直美さんと今度一緒にイベントをやるWolfgang Bientzel(ウォルフギャング・ビエンツェル)さんです。彼は私がアメリカに武者修行しに行った時に影響を受けた方で、世界選手権で8回優勝しています。

2人に共通するのは隣にいてくれると選手が安心できる、強くなれるような気がするコーチだということです。私もそこを目指しています。

吉田望、ウォルフ・ギャング

ウォルフギャングさん(右)と。8月の日米ラート交流企画の際には来日予定。

吉田望

関連記事