佐藤亮。明治大の大型新人が見すえる、東京五輪と「長友超え」。
ジュニアユース時代から切磋琢磨するライバルの存在
FC東京入りへのモチベーションが、佐藤の活躍を支える要因となっていることは想像に難くないが、ライバルの存在も刺激となっているようだ。
ジュニアユース時代から同級生として共に時を過ごした、チームメイトの安部柊斗は、佐藤にとって明治大学入学時に「一緒に先輩を喰っていこう」と誓い合った仲間だが、ユース時代は目の前に立ちはだかる大きなライバルでもあったという。
FC東京の下部組織で共にプレーしていた佐藤亮(27番)と安部柊斗(28番)
ユース所属時には1年生からレギュラーとして活躍していた安部だったが、その一方で佐藤はベンチを温める日々が長かった。「ユースの時はずっと悔しい思いをし続けていて、いつか追い越してやろうと思っていた。彼は仲間ですけど、いちライバルでもあり、常に切磋琢磨している」と、互いに刺激し合っていることを明かしている。
安部が、佐藤とユース以来の共演となったアミノバイタルカップ3位決定戦後に「ユース時代のような懐かしい感覚があった。彼がいてくれるだけで、安心してプレーすることができた」と語っていたが、この言葉からも2人の関係性が手に取るようにわかる。
彼らの活躍は、同年代にも刺激となる。普段の試合では、スタンドで応援に廻る1年生も「同年代の活躍はすごく刺激になるし、自分も早く出たいという気持ちになる」と口にしていた。佐藤自身も「1年生を引っ張っていける存在になりたい」と言っていた。彼の飛躍は明治大学の結果に繋がるだけでなく、同年代を奮い立たせるという相乗効果もあるのだ。
自国開催の五輪出場と、その先に見据える世界
「(安部と)2人で一緒にFC東京へ戻りたい」と吐露する佐藤だが、目標はより高い位置にも設定している。1997年生まれと(※)東京五輪世代の若武者は、自国開催の五輪出場を切望しており、その実現のためにも、まずは年代別日本代表への定着を図りたいところだ。
※オリンピックのサッカー競技では、23歳以下の選手に出場権が与えられている
ユース時代にはU-18日本代表 “候補”に選出されていたが、日の丸を背負って世界の舞台に立つことはなかった。しかし、今年5月に韓国遠征へ臨むU-19日本代表メンバーに選出されると、U-19ブラジル代表戦で初めて代表のユニフォームに袖を通している。
「日の丸を背負って国歌を歌った時には、緊張と喜びを感じた。この舞台に立ち続けたいという思いが強くなった」と初めての代表戦を振り返る佐藤。しかし、「他の選手たちが代表の舞台に慣れている一方で、自分はどうしても初々しいところや、まだ慣れない部分があった。もっと経験を積んでいかないとならない」と、経験の浅さを課題に挙げている。
韓国遠征のU-19日本代表は、20人中15人がJリーガーだった。日頃から高いレベルを経験している彼らと対等に渡り合っていくためにも、まずは代表定着が五輪出場への試金石となる。池上氏が「五輪代表の枠を競うのはJリーガーたちなので、全ての面でセレクトする人間を納得させられるようにしないといけない」と述べるように、プロとアマチュアの壁を越える必要がある。
一方で、佐藤にとっての五輪出場は単なる通過点であることも事実だ。この19歳は将来的にワールドカップ出場、そして海外のビッグクラブへの挑戦も望んでいる。明治大学卒業後の“FC東京経由世界行き”というルートは、長友の道筋と重なるものがあるが、彼はそれ以上のステージも見据えている。
「長友さんは良いお手本となる先輩なので、まずは追いつきたい。その後はインテルよりも強いクラブに行って、長友さんを超える存在になりたい」。ストライカーの模範として、イタリアの英雄であるロベルト・バッジョに憧れる青年は、すでに長友超えを目論んでいた。
紫紺の名門から世界へ。佐藤亮は先輩を喰い、先駆者を超え、先陣を切っていく。
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