企業のマーケティングに「スポーツ」を。Instagramが示す新たな可能性
Instagramの投稿は“重く”ない
−狙いとしてはアスリート個人の発信を増やして価値を高めるという部分もあると思いますが、“企業がアスリートやスポーツをどう活用するか”というところをもっと広く教えていきたいのかなと。今でも企業がアスリートをPRに起用しますが、一番の目的はどこにあることが多いのでしょうか。
ブランドの語り手、代弁者としてアスリートを使うケースが多いです。好きなアスリートに影響を受けて購買行動を起こしたInstagram利用者が60%だという調査からも分かるように、アスリートを起用することでブランドや商品の価値が効果的に伝わり、売上などのビジネス結果につながることが見込めます。
また、企業として「アスリートにInstagram 上で商品を紹介してもらい、結果どれだけ売れたのかを追いたい」と思うのは当然ですが、今まではそれを追うことができませんでした。しかし、それも今後は変わってくるかもしれません。まだアメリカのみですが、インフルエンサーがショッピング機能を使って商品を紹介し、そこからECサイトへの流入を見ることで、どの程度売れたのかを測るという機能のテストも行っています。
その機能が日本に入ってくれば、Instagramの投稿をきっかけとした購買数が追えるようになります。例えば、堂安律選手が商品を紹介したらその投稿からどの程度売れたのかを裏側で追うことができる。これができると企業も、ブランディングだけでなく販売チャネルとして選手を活用できることになります。今は本当に過渡期というか、フェーズが変わっていくタイミングですね。
Instagramを使って色々とプロモーションをしたいと思っている中、様子見のチームもいるのかなと。
トライしたいけどデジタルに精通した人がクラブ側にいない、というケースは多いです。よく見るのが、チームのSNSよりも選手個々人のSNSの方がよく発信されていて、チームスタッフよりも選手の方がむしろ詳しいということもあります。
また、チームの方からすると、Instagram上での投稿を重く考えすぎてしまうという傾向が若干あるように感じます。実際には利用者の方はそこまで重い気持ちで見ていないですよというのは伝えたいですね。一語一句こだわってテキストを考えて投稿するよりも、もっと気楽に選手同士のトレーニング後の姿を撮ってあげるくらいで良いと思います。
特にストーリーズは、しっかりと文章や写真を構成してから投稿するのではなく、何気ない瞬間を撮影してシェアするのに向いています。ブーメランやアンケートスタンプ機能など様々な機能があるので、気軽に使って投稿してもらいたいです。
−海外の事例ではどういうものがあるのでしょうか?
サッカーチームでいうと、レアル・マドリードも効果的に活用していますね。オーガニックの投稿だけでなく、彼らはちゃんと広告も活用しているんです。これはFacebook広告ですが、ビジュアルにも動きをつけてモバイルに合わせたクリエイティブを作っています。
こういう形でグッズや年間チケットを売っていっています。普段の投稿だけではなく、InstagramやFacebookの広告も併用しながら、ビジネスを伸ばしています。「さすがレアル」という感じですね。
−自社のサービス、ブランドのPRだけではなく、スポンサー企業を絡めた動きもできそうですね。
テニスのジョコビッチ選手はアシックスさんと契約しているのですが、ジョコビッチ選手を起用したブランディングムービーやCM素材をアシックスのアカウントの投稿から投稿するだけではなく、さらにジョコビッチ選手にブランドコンテンツタグを付けて彼のアカウントからも投稿してもらっています。そうすることによって、ジョコビッチ選手のアカウントからもファンに効果的にリーチし、ブランドメッセージを発信することができます。
“本当に選手自身が好きなプロダクトを紹介しているかどうか”という点がこのような広告では大事になってきています。インフルエンサーマーケティングでは、多額のギャラを払って1回限りの投稿で商品を紹介してもらうというケースも見受けられますが、それだと利用者もわかってしまうんです。スポーツ選手とスポンサー企業の関係でいうと、ある程度の期間継続して選手を支援するというケースがほとんどですので、選手がブランドに対して持っている愛着や思い入れが投稿にも反映され、利用者にも伝わると思います。
売りや露出が数値化され、スポンサーメリットに
−スポンサーに対してどういう形でリターンを出すのかというのを苦心しているチームは多いかなと思います。
ブランドコンテンツツールを活用いただけると、企業側でも、チームやアスリートがした投稿が見られた回数や、いいねの数などのパフォーマンスを全部追えるようになります。例えばアディダスさんからすると「レアルから投稿してもらうとエンゲージが高まるので、これだけのスポンサーフィーをお支払いしても効果はあるよね」といった会話が生まれると思います。Jリーグのチームなど、国内のスポーツチームにもぜひ活用してほしいですね。
−プロスポーツクラブもInstagramを1つの商材として売っていくのは良いのかなと。
ありだと思います。おそらく年に1回スポンサーと契約の見直しがあると思うのですが、「今年払った金額の価値はありましたか?」というような話は絶対にあると思っています。そういう時、「私達のチームはデジタルの使い方をわかっていてInstagramをこういう風に使っていて、御社にこうしてお返しができますよ」ということを言えると良いのかなと。
−将来的に取り組んでいきたいことを教えていただけますか?
今後もアスリートやクラブチーム側にInstagramをよりうまく使っていただけるようにアプローチしていきたいです。もう1つは、企業とアスリートが効果的にコラボレーションする方法の情報発信です。アスリートはアスリート、企業は企業でセミナーをやることが多かったのですが、一同に両者が集まる場をもっと作っていければと。スポーツを取り巻く色々な人たちを集めて、Instagramというプラットフォームをどう使っていけば皆にWINがあるのかを一緒に考えるイベントを継続的にやっていきたいと考えています。
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