THINK SPORTS『断捨離なんていらない!』

実家に帰るたびに、母にしかられる。

「古いバッシュ、いつまで保管しておくの? もう履かないんでしょ」

またかよとうんざりしたが、父の「黙って我慢しろ」というアイコンタクトを確認し、グッと言葉を飲み込んだ。

野球のグローブ、サッカーのスパイク、バスケットボールのシューズ、テニスのラケット……。

初めて買ってもらったグローブを手に馴染ませるために、毎日、毎日、オイルをつけて磨いた夜があった。

新しいスパイクを手に入れた。うれしすぎて枕元に置き、一緒に寝てしまったことがある。

友だちの高価なバスケットシューズがうらやましかった。でも、自分が大切に履いてきたこのシューズだとなぜか活躍できるから、たまらなく好きだった。

ショットがうまくいかなくて、思わずラケットを地面に叩きつけてしまった。でも、次の瞬間、思わずラケットに謝っていた。

スポーツと道具は切っても切り離せない関係。スポーツを始めた時点から魂を宿らせ、共にストーリーを作り上げていく。大事なパートナーだ。

その夜、父がこっそり教えてくれた。

「母さんな、ときどき高校時代の部活の写真を見ながら、あのときのラケットはどこにいったんだろうと落ち込んでいるんだ」

引っ越しで行方が分からなくなったときの母の気持ちが痛いほどわかる。断捨離なんてもってのほか、ボクとバッシュの未来は永遠なんだ!

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