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【テキスト版】CROSSOVER「スポーツコンピテンシー」深堀圭一郎×田中理恵

「スポーツコンピテンシー」とはビジネスで用いられる「コンピテンシー=成功者に見られる行動特性」をスポーツに当てはめたもの。

そんなトップアスリートが兼ね備えたスポーツで結果を残す秘訣や人生を成功に導くヒントに迫ります。

第6回のゲストは田中理恵さん。

※敬称略

中学時代に怪我が原因でスランプに。弟の言葉により本気で体操へ向き合うことを決意!

深堀:元体操選手で、ロンドン五輪日本代表の田中理恵さんをお招きして、お話を伺います。田中さんは、コロナ禍で自宅にいらっしゃるにインスタグラムやユーチューブなどで、動画を配信されて話題になっていましたよね。

田中:今回のような自粛は、みなさん初めての経験だったと思うんです。家の中で何もしないと気持ちも暗くなってしまうので「スッキリできる時間」を多くの人と共有できればと考えて、自宅で可能なストレッチやトレーニング方法などの情報を発信しました。

深堀:話は変わりますが、田中さんは東京五輪の開催が決定したとき、招致団のメンバーの一人として、あの場にいましたよね。世界に向けて英語でスピーチもされていました。

田中:実は英語が全然話せなかったので、毎日練習したんです(笑)。当日は、気持ちが伝わるように笑顔で喋るようにしました。

深堀:東京五輪が延期になったのは残念ですが、来年に向けての現在の心境は?

田中:今回の延期は、みんな初めての経験です。オリンピックを目指して頑張ってきた選手は本当に大変だと思います。しかし、現実を受け入れるしかありません。とはいえ、私自身は選手に寄り添いたい気持ちが強いのですごく複雑です。「体操ができる喜び」を感じて欲しいですが、練習すらできない状況でしたから。今は21年に向かって、もう一度気持ちを切り替え頑張って欲しいと思います。

深堀:練習ができない状況は、選手にとって相当ストレスで辛いことですね。そういう意味でも、トップアスリートはオリンピック出場などを夢見て、子供のころから練習に励む選手が多いです。ちなみに、田中さんの幼少時代はどんな女の子だったのでしょうか。

田中:私の場合、父が体操の指導者で母も体操経験者だったので、物心がついたころには家にトランポリンや鉄棒がありました。大きな滑り台やジャングルジムなど、遊び道具も体操競技の器具に近いものが揃っていて。ですから、家の中を、お猿さんが飛び回っているような、そんな子供でしたね(笑)。当時は、父が体操クラブを運営していたため、そこに兄弟3人が集まり練習していました。

深堀:そのような環境を自然に受け入れられたのでしょうか。

田中:小学校2年生のときから本格的に体操競技を始めましたが、夕方、校門前に両親の車が待っているんですね。そのまま、練習場所の地元の和歌山北高校の体育館へ行って夜10時ごろまでトレーニング。休みの日も朝10時ころから夜まで練習でした。

深堀:競技に対する強い想いは、いつごろ芽生えたのでしょうか。

田中:小学5年生ぐらいのとき、シドニー五輪をテレビで見てオリンピックに出合ったんです。出場選手の技がすごくて、みんな輝いていたのですが、中でもロシアのスヴェトラーナ・ホルキナ選手の演技に魅了されました。スタイルがよくて表現力も豊か。女優ような美しい立ち姿を見て「こんな選手になりたい」と、目標を持つようになったんです。

深堀:田中さんは中学時代、全国大会で優勝するなど順調にキャリアを伸ばされましたが、高校時代はスランプに陥ったと伺いました。

田中:中学生のころは、周囲からオリンピック出場を期待された時期でしたが、中3のときに足首と腰を怪我してしまったんです。それでコンスタントに練習ができなくなってしまい、身長が10cm、体重は10㎏増。その結果、今までのような演技ができなくなってヤル気を失いました。地元の和歌山北高校へ進学後も、同じような状況が続きましたね。

深堀:そんなとき、ご両親から何かアドバイスはあったのでしょうか。

田中:父は長く続けることを考えて、「体を作り直すことから始めたら?」と優しい言葉をかけてくれました。しかし、兄弟が体操で活躍している姿を見て一時は「辞めよう」と思ったこともあったんです。そんなモチベーションの上がらない時期が3年続きました。

深堀:体操への想いが再び強くなる、きっかけはあったのでしょうか。

田中:高校3年生のとき、進学するか悩みました、そんなとき弟に「そろそろ真剣に体操をやりなよ」と怒られて。このひと言で自分が恥ずかしくなり「もう一度本気で取り組もう」と思い直しました。それで声をかけていただいた、日体大への進学を決めたんです。

深堀:弟さんの言葉が、心に深く響いたんですね。

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