最高の一瞬『悔しさをエネルギーに_大迫勇也(サッカー)』

今から10年ほど前になりますが、大迫勇也選手の撮影とインタビューをしたことがあります。2012年にロンドンオリンピックがあり、日本チームはベスト4へ入りましたが、大迫選手はこのメンバーに選ばれず。取材はそのあとのタイミングでした。

インタビューの構成上、やはりこのロンドン五輪に関する質問をしたのですが、すると、彼はしゃべりたくない様子で黙ってしまいました。

これはしょうがないとも思いましが、驚いたのは、あの「ハンパない」と言われた彼の高校サッカー選手権のころの話を聞いたとき。こちらも「しゃべりたくない」と言うんです。大会記録の10ゴールを挙げ大活躍だったのに。ただ決勝で敗れて準優勝だったんです。

時は経って2018年のロシアワールドカップ。大迫選手は初戦のコロンビア戦で、コーナーキックから決勝ゴールを挙げる大活躍を果たしました。写真はそのときのシーンです。

このころから現在もそうですが、大迫選手はゴールだけでなく前線でのポストプレーもすごく、日本代表に欠かせない絶対的なエースになっています。

そう考えたときに、「ああ、大迫選手は悔しさをエネルギーに変えて頑張るタイプなんだ」と確信しました。そして悔しがりの度がすごいわけですよね。あのとき、ロンドン五輪のメンバーに入れなかったのが悔しすぎてしゃべれなかった。だいぶ前の高校選手権のことも、悔しくてしゃべりたくなかったと。

それを未来へのエネルギーに変えて成長したんですね。こういうのも、トップクラスの選手ならではのすごさだと思います。

▼佐野美樹(さの・みき)

1977年、東京都生まれ。写真家いしだまことに師事後、スポーツフォトグラファー梁川剛のアシスタントを経てフリーに。サッカーやレスリングを中心としたスポーツだけでなく、人物ポートレートや料理など、広告やエディトリアルにて幅広い分野で活動している。仕事柄、国内外問わず出かけることが多いため、密かに旅の写真を撮りためている。

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