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柴崎のミスは、森保“委任戦術”の必然?変化に対して脆弱な日本

UPDATE 2021/11/10

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■目次
「ジャパンズウェイ」を探る森保ジャパンの「委任戦術」
サウジの有能なポジショナルプレーと、その不備
分析に基づく備えと、典型的な「森保ジャパンの試合」
問題1:サウジへの襲撃は、計画的反撃を受ける危険をはらんだ
問題2:サウジのプレッシングの変化に委任戦術で対応できず
森保監督が退任しても委任戦術の流れが絶えることはない

文=五百蔵容
写真=高橋学

※記事内の表記
DH=ディフェンシブハーフ
SH=サイドハーフ
CH=センターハーフ
SB=サイドバック
CB=センターバック
CF=センターフォワード

森保一監督率いるサッカー男子日本代表は、2022年カタールワールドカップ・アジア最終予選で全10節中4節を消化し、2勝2敗の勝ち点6でグループBで4位につけています。

全勝で首位のサウジアラビア(勝ち点12)、2位のオーストラリア(勝ち点9)の後塵を拝し、W杯本戦ストレートインとなる2位以内どころか、プレーオフ進出に回る3位にすら届いていない状況。ホームで宿敵オーストラリア代表に勝利したとはいえ、11月のシリーズで最終予選は中盤戦に入りますから「まだまだ序盤」とも言ってはいられません。

今回は、日本代表の「委任戦術」戦略を検討する観点から、10月のサウジアラビア戦・オーストラリア戦を1試合ずつ振り返り、そこに現れた特徴、問題点を精査。11月のアウェイ連戦、来るベトナム戦・オマーン戦における「委任戦術」戦略の働きへの見通しをクリアにしたいと考えています。

「我々の代表が、どんな狙いで何をしようとしているのか」。外部からでもできうる限りそれを正確に捉え、白いものを「黒くないからダメだ」などと言わず、実態に基づく分析、批判、提言を行っていく。苦しいときこそ、我々観客、サポーターの側からもそういった地道なアプローチが必要になるのではないかと信じます。

「ジャパンズウェイ」を探る森保ジャパンの「委任戦術」

さて、就任後の各試合で見せてきた内容や選手の証言などの経緯からうかがえる、森保ジャパンの「委任戦術」について改めて整理します。

基本的には、「ピッチにいる選手たちの自主的な判断、意思決定に委ねる」ことを主眼としています。これまでの試合を検討する限り、本来は選手ではなく、チーム指導部が規定するチーム戦術、相手に対応する作戦の範疇に入る判断、意思決定が選手たちに委ねられている節があります。

いわゆる「丸投げ」なのではなく、通常のチームにおけるように指導部が対戦相手を分析し対策、ゲームプランを用意しているようです。

直面する状況や試合の「位置づけ」に応じ、それらを選手にプレゼンテーションする濃度を調整、「現場判断による運用の自由度」=「選手たちがピッチで考え意思決定する余地」を広めたり狭めたりしながら、自由に考え解決策を見出すチーム力を高め、結果も出していく。

計画や指令によって戦うのではなく、その場その場での自主的で迅速な判断で、サッカーという流動的で不確定要素の強いスポーツに立ち向かっていく。

そのことが日本代表を、ひいては日本サッカーを強く大きくしていくはずという考えがそこにはあるようです。

そのようなマネジメントを行い、チームを成長させていくためには、個々の判断を促す曖昧な領域をあえて残しつつ、その曖昧さを解消していく緻密で不断のコミュニケーションが何よりも重要になるでしょう。

指導部から現場へのアプローチが、通訳を介する異文化コミュニケーションを挟むのは望ましくありませんし、互いへの思いやり、協調と和、それによる緊密な意思疎通、阿吽の呼吸の創出が「得意である」という「日本人の特徴」を生かす、ということになります。

だから「Japan’sWay」(ジャパンズウェイ)ということになるし、委任戦術こそ、ジャパンズウェイに最適であるという考えになるのでしょう。その意味で、ジャパンズウェイはたしかに戦術ではありませんが、戦略レベルの方針とは言えますし、委任戦術と論理的に整合していると考えられます。

では、10月のサウジアラビア戦において、その委任戦術はどのように機能し、また問題点を露呈したのでしょうか。

それを推し量るには、まずサウジアラビアのやり方や長所、問題点について把握する必要があります。

日本のやり方を評価するには、相手がどんなチームで、どこに強みと問題を抱えているのかを踏まえて試合を捉え、日本代表の振る舞いや、対応までにかかる時間・プロセスなどから、相手の強みや弱みについて日本がどんな分析をしていたか、どんなレベルの準備をしているか、事前のセッティングと現場判断での運用をどのようにバランスさせようとしているか検討する必要があるからです。

サウジの有能なポジショナルプレーと、その不備

サウジアラビアは、ポジショナルプレーを実装したモダンなチームです。

配置の均衡状態を意識した4-2-3-1のオリジナルポジションから、ビルドアップなどのボール保持時や非保持時、プレッシング時に適切な陣形の変化を行い、様々な状況に対応しながらも全体のバランスを崩さずチームプレーを安定させることを狙っています。

キーマンは、トップ下の7番アル・ファラジュ。彼はフリーマン的な行動の自由を戦略的に担っており、広範囲を動き、攻守両面、広範囲のプレーに関与します。DHの1枚がサイドに出たり1列上がれば、その空けた場所に降りてサポートやカバーリングに関与。時にサイドに開いては、SHがインサイドに侵入可能なスペースを生み出し、彼の動きを生かすためのボールの一時避難所や配球元になりつつ、ボールロスト時のポジショニングに応じた備えにも参加します。

チームの心臓となるボールプレーヤーの2DH(モハメド・カンノ、アル・マルキ)と、左右のSHにその特徴を生かさせつつ、ミドルゾーンのポジショニングバランスを保ち状況に応じたプレーを加えていく役割を担っています。

サウジアラビアは、アル・ファラジュのタスクを鍵として、状況に応じた変化をしながらも相互支援可能な位置関係をできるだけ崩さないようプレーしていました。互いの位置が離れているように見えても、ボールロスト時には相手のボール前進を抑える位置に効率的に集結し、即時奪回、1stプレスやプレスバックを挟んでからの奪回を低からぬ確率で成功させ、そこから淀みなくチームとして次の行動に移ります。ポジショナルプレーで期待される攻守・トランジションのリンケージを実現しているチームだと言えます。

ただ、そのメカニズムに不備がないわけではありません。

ポジショナルプレーを採用し、ピッチを5レーンに分割してハーフスペースを起点に攻撃的に振る舞おうとするチームに往々にしてあることですが、ボールロスト時にカウンタープレスが失敗した場合、自分たちが使っていたハーフスペースを守れなくなり、そこから崩される場合があります。

サウジアラビアは、3人のMFが逆三角形を形成するアンカーシステムではなく、2人のDHと1人のCH(トップ下)で正三角形をなす形を採用し、その危険に対して意を払ってはいましたが、「そこに誰もいなくなる」デメリットよりも、エルヴェ・ルナール監督はアル・ファラジュを中心とした流動性のメリットをより重視しているようでした。

このような場合、より低い位置でサイドを守るはずのSBをDHの位置に絞らせてハーフスペースと中央をプロテクトするという手段(いわゆる偽SB)がありますが、サウジアラビアの両SBはそういった振る舞いを恒常的なタスクとしてはおらず、アル・ファラジュの動きによって両SHがインサイドに頻繁に入っていくことから、SBは攻撃ではサイドアタック、守備では高い位置で相手のサイド攻撃のアタマを抑えるといった仕事を主に担っていました。

おそらく、彼らの攻撃力を生かすためにインサイドでDHのサポートをするウェイトを下げているのではないかと思われます。

ここで注目したいのは、サイドアタッカーとして高い位置で攻撃的に振る舞うことの多いSBの裏のスペースの守り方です。このような場合、通常はDFライン(CB)がスライドするか、DHが移動してそこを監視し、ブロックします。

けれども、サウジアラビアのCBは簡単に動かず、中央を守ることを最優先にした振る舞いを見せ、DHはアル・ファラジュ循環のタスクセットのなかで、5レーンのどこかを占めておくという基本を放棄することはないにせよ、流動的に位置を替えています。SBの裏を守ることに重きを置く選手が存在せず、そのタスクは状況に応じてシェアされているようでした。

これらの特徴から、サウジアラビアのプレー循環のプロセス上、空きやすいスペースやエリアを特定することができます。

SBの裏、ネガティブトランジション発生時のサウジ側ハーフスペース、そこを見せ金にして空けさせることのできる中央とサイドのスペース、です。

分析に基づく備えと、典型的な「森保ジャパンの試合」

日本代表は、サウジアラビアの攻め手を阻害する意図と共に、これらのスペースを陥れるための人選と布石をもって試合に臨んでいました。

サウジアラビアと同じく4-2-3-1でのスタート。前線の選手たちはサウジアラビア代表がプレー構造上、空けてしまうスペース・エリアを狙うタスクを担っています。

右SHの浅野拓磨はサウジ左SBのアッ=シャ・ハラーニーをケアしつつその裏を伺い、左SHの南野拓実は絞ってインサイドに位置し、サウジアラビア代表が自らのハーフスペースに作ってしまいがちなエアポケットをリンクマンとして活用する構えをしばしば見せ、実際にそこからいくつものチャンスを得ています。

トップ下の鎌田大地は、攻撃的MFとして浅野、南野、CF大迫勇也と連携しつつ、DHの柴崎岳、遠藤航とタスクを按分して時には2DH+1CHの正三角形を組み、時には遠藤をアンカーとした逆三角形のトライアングルを構成して柴崎と共にインサイドハーフの仕事もこなし、南野が前方に進出している局面では彼のオリジナルポジションに入ってサウジハーフスペースの裏を取るリンクマンとしてもプレー。サウジのアル・ファラジュに近い多くのタスクを引き受けていました。

鎌田がこういった多彩なタスクを遂行することによって、サウジアラビア代表の中盤の変化に適応することが可能になりました。ただ、この形の変化については明確なトリガーが見えないため、人選とタスク配分で布石は打っているが、どういった案配でサウジの変化に対応するかは、現場の運用に任せていたものと思われます。

また、サウジアラビアはボール非保持時に4-4-2の陣形を組んでハイプレス・ミドルプレスを仕掛けてきますが、中盤のMFが担う流動性の負荷もあるのか、2トップのプレッシングとMFのそれが連動せず、「4-4-2」の「4-4」と「2」の間にスペースが生まれ、相手のビルドアップ隊に余裕を与える局面がままあります。

鎌田、柴崎、遠藤はこのスペース、セットDFからのプレッシングのエラーを活用してビルドアップの起点を作っていました。試合開始時は左DH(サウジ右)にいた柴崎が右サイドに移動し、そこからサウジSBの裏狙い、裏狙いを見せ金にした配球を行い、サウジアラビアに脅威を与えようとしていました(このあたりもまた、すべてが「事前の準備」によるのではなく、「ピッチで選手が考え判断」したウェイトが高い可能性があります)。

このように、日本代表はサウジアラビアを周到に分析していたと見ることができます。実際の試合展開をみると、事前準備に基づいて打った布石を足場に、そこからソリューションを見出すための運用は現場の判断に任せる典型的な「森保ジャパンの試合」になってはいました。なってはいましたが、敵のやり方に問題を起こしうるスペースを特定し、彼らを陥れる布石を打つ備えをもっていたのは確かです。

では、どこに、なぜ問題が生じ、敗戦にいたったのでしょうか。

問題1:サウジへの襲撃は、計画的反撃を受ける危険をはらんだ

第一の問題は、サウジアラビアの「問題点」は彼らのプレー構造、プレー循環の中で「ウィークポイントでもあるが、そこを活用しようとする相手を引き込んで逆襲するための必要条件でもある」可能性が高いこと、その可能性に対する備えが日本側にほとんどなかった(なかったようにみえる)ことです。

サウジアラビアは、たしかに上述したスペースを明け渡しがちなチームになっているのですが、これらのスペースを失陥し相手に突破された後もカウンタープレス(失敗)→2ndプレス(失敗)→撤退してブロック形成という段取りに則って守備を組織します。

「やられたくないことをやられた場合」の準備がすでにできているということですが、日本代表は彼らがブロック守備に移行した場合にどこを攻めるかについても準備をしていたので、問題になったのはそこではありません。

彼らが、単に守備局面に移動しているのではないことが日本に問題をもたらしました。カウンタープレスによる即時奪回にせよ、セットDFに移行してからのボール回復にせよ、その後の攻撃へ遷移(ポジティブトランジション)しやすいポジショニングやアクションを包含した形でサウジアラビア代表は守備を行っており、それはすなわち相手(日本代表)がこの「弱点」を狙い、「人の移動」によって「自分たちのバランスを崩して」仕掛けてきた場合、サウジはその「バランスを崩した」場所を狙って自分たちの攻撃をすぐさま再開できる、ということを意味します。

日本代表の「サウジアラビアの弱点への襲撃」は、得点可能性を高めるものである一方で、計画的な反撃を受ける危険をもはらんだものになっていたのです。

さらに「サウジの弱点をどう突くか」、実際の運用が選手たちの判断に任されていたことが、その危険性をさらに強める結果になっていました。

たとえば、前半目立った柴崎の右サイド移動からのゲームメイク。これ自体は「サウジのプレッシングから逃れながら、弱点を使う」という意味では好手だったのですが、サウジアラビアにボールを奪回された後のことを考えると、以下のような問題を抱えていました。

1)バイタルエリアを守るべきDH(柴崎)がサイドに張っており、定位置にいない
2)サウジの弱点を突くくため攻撃に特化したポジショニング、局面であるため2列目の鎌田や逆サイドの南野も前目にポジショニングしている
3)遠藤が孤立

日本のバイタルエリアは危険なまでに開放されています。注目したいのは、この形を取る上で逆サイドSHの南野、もしくは南野の代わりに鎌田がDHのラインに入っていつでも遠藤周囲のスペースをプロテクトできる位置にいないこと、後方のCBやSBがその代わりそこを消せる動きをしているわけでもないこと、です。

サウジアラビアからすると、「自分たちの弱点を攻略するために相手の陣形がバランスを欠いた状態になっている」まさにそのものといった状況でこういった「攻撃の形」からボールを失った後、このような敵陣のスペースにあらかじめアタッカーをセットさせているサウジアラビアの反撃に、日本は悩まされていました。

問題の核心は、「相手の弱点を狙う攻撃の形はあるが、バランスを失うリスクをどうプロテクトするかは考えられていない」というところにあります。「相手の弱点の分析、それに対する人選と方向性は示されているが、実際の運用は選手に大幅に委ねる」という日本の委任戦術の落とし穴がここにあるのではないでしょうか。

単一の局面については考えられているが、その局面が次々と新たに生成していく局面に構造的に対応していくことはできていません(柴崎を中心とした右サイドのユニットが考え、実施した意思決定の意味やリスクが逆サイドのユニットやDFラインのユニットにまで波及・共有されるまでかなりの時間が経過しているか、前半中には共有されていません)。ですが、サッカーのように状況の進展がスピーディかつ、タイムアウトが基本的にないゲームでは、「現場の判断と運用」のみでこういった構造的な問題に十分に対応するのは、困難なように思えます。

問題2:サウジのプレッシングの変化に委任戦術で対応できず

第二の問題は、後半に現れました。サウジアラビアがプレッシングのやり方を変えてきたのです。

前半、彼らの4-4-2からのプレッシングは、中盤と前の2枚が分離しがちになるという難点を抱え、日本はそれを利用して幅を取った深い位置からのビルドアップを成功させていました。後半、サウジアラビアはプレッシングのやり方を整理。日本がサイドに出すボールに対して2FW+1DH、2FW+SH、1FW+1SH+1DHなど、逆三角形のグループを組んで、日本のビルドアップに関与するCB+SBとDHにプレッシャーを与えることに成功します。前方の「1-2」がユニットを組み、ボールサイドに歪む4-3-1-2でのプレッシングで、日本のビルドアップの幅と深み双方にプレッシャーをかけられるような変化でした。

こうなると日本は前進しづらくなり、ボールは前で詰まってバックパスが多くなります。彼らはそれも狙ってはいたでしょうが、そのプレッシングによって生まれた難しい状況を改善するため、日本のDH(柴崎)やSB、SHが無理なポジション移動を行い、密集化しすぎてしまったり、逆に離れすぎて相互支援できなくなり、サウジアラビアが後方に用意しているプレッシング網につかまりやすくなる状況を定常的に現出させることが、より優先的な狙いだったのでしょう。そうすれば、前半も彼らにチャンスメイクをもたらしていた、ポジティブトランジションにおける優位性をより生かすことができます。

この「プレッシングの変化」こそ、「何が起こるかわからないサッカー」のピッチにいる選手たち自身が自主的に観察し、判断し、対応を考え、コミュニケーションを取ってチーム全体で共有し、乗り越えねばならない難問でした。けれども、日本代表は後半のほとんどの時間帯を通じて効果的な対応をできていませんでした。権田があわやというプレッシングを浴びたピンチや、決勝点となった失点の直接の原因となった柴崎のバックパスのミスは、こういった状況の変化に日本の「ピッチで考える」やり方が追随できなかったために起きたものと思われます。

 

森保監督が退任しても委任戦術の流れが絶えることはない

サウジアラビア戦で、日本に劣勢と失点をもたらした2つの問題に共通するのは、「問題に直面するグループ」と「それ以外のグループ」間でのタスクや判断の関連付け、意思決定の関連付け、シェアに少なからぬ時間を要するという点です。

サウジなど他チームがチーム戦術、チームとして標準とするプレー構造(ゲームモデル)、メカニズムによってなかば自動的に判断できる(判断しようとしている)要素、局面の少なからぬ部分をも「現場で判断」としているため、「観察→判断→共有→意思決定」の工程の大部分を、準備段階での局面予想と対応の事前共有で自動化していることによってスキップできる相手に対し、そこを丸々考えないといけない。それだけでも時間がかかるのに、一つの意思決定がおよぼすリスクについての意志共有にも時間がかかり、チーム全体の構造的な改善はさらにその先になり、リスクはその間、放置される。「相手のやり方や変化に対し、構造的なものも含む大がかりな対応が求められると、ソリューションの打ち出しに非常に時間がかかるか、打ち出せないまま終わる」問題は、このチームの立ち上げ時から露わになっているものですが、大一番で致命傷になった格好です。

この手痛い敗戦を受けて、改善は行われるかというと難しいかもしれません。他チームでは、戦術やゲームモデルによってあらかじめ一定程度は設計されている「ピッチ上のグループ同士のつながり、関連付け、問題の共有」、まさにそこをピッチ内での意思疎通と話し合いによって作り上げる、つながっていないものをつなげるということ自体が、「“ピッチで考えよう”という日本の委任戦術の核心の一つなのではないか?」と、これまでの経緯を見ている限り感じられるからです。

そうでなければ、相手の変化への対応に前半45分を丸々要したアジアカップ初戦のトルクメニスタン戦や、決勝のカタール戦の時点で何らかの方針・方法の転換がなされているはずです。それがないように見える以上、日本代表はこの委任戦術を、このような進め方、このようなタイム感で推し進め続けるということでしょう。これがジャパンズウェイという大戦略に見合うものである以上、森保監督が退任することがあったとしても、この流れが絶えることはないはずです。大戦略が変更されない限りは。

続くオーストラリア戦で、敵将アーノルド監督は、日本代表の「委任戦術」に内在するこの問題を利用しようとするかのような、予想外の仕掛けを行ってきました。対する日本もまた、おそらくオーストラリアにとって可能性の低いオプションだったであろう「奇策」で試合に臨み、双方にとって本来の狙いが空転するなか、ちぐはぐなゲームを展開するという興味深い内容となりました。

サウジアラビア戦とまた違う形で、日本の「委任戦術」戦略を試す試合となったオーストラリア戦については、次回論考を深めさせていただこうと思います。

▷分析家・五百蔵容の論考

 

▷プロフィール

五百蔵容(いほろいただし)

1969年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、株式会社セガ・エンタープライゼス(現株式会社セガゲームス)に入社。2006年に独立・起業し、有限会社スタジオモナドを設立。ゲームを中心とした企画・シナリオ制作を行うかたわら、VICTORY、footballista、Number Webなどにサッカー分析記事を寄稿。著書に「砕かれたハリルホジッチ・プラン 日本サッカーにビジョンはあるか?」「サムライブルーの勝利と敗北 サッカーロシアW杯日本代表・全試合戦術完全解析」(いずれも星海社新書/2018年刊)がある。

Twitterアカウント:@500zoo

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