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土井レミイ杏利“レミたん”が異国の地で受けた壮絶な人種差別「自分だけは、自分を信じてほしい」#JHL #ハンドボール

自宅で包丁を持って立ちすくんでいた

毎日のように差別的な言葉を浴びせられ、追い詰められていった土井はある日、自分でも想像していなかった行動に出てしまう。

「自宅で、気付いたら包丁を持って立ちすくんでいました。誰かに向けようとしたのか、自分に向けようとしたのかは今でも分かりません。我に返ったときは尋常じゃないほどの汗が噴き出て、頭を抱えて震えていました。そのときです。『このままじゃダメだ。俺が変わらないと終わってしまう』と思ったのは」

遠く日本から単身フランスにやってきた土井は、そのとき初めて「チームメイトを敬い過ぎていた」ことに気付いた。大学を卒業したばかりで、日本代表での経験もない。そんな自分が金メダリストを相手に意見をするなんておこがましい……。そんな呪縛を、自らにかけてしまっていた。

「日本の『相手を敬う』文化は素晴らしいと思います。ただ、フランスではそれだけではダメでした。相手をリスペクトする前に、まずは自分をリスペクトする。自己主張の強いフランスでは、『何も言わない』は『何も考えていない』『何も感じていない』と同じこと。僕自身、周りから差別的な言葉をかけられても『ここで怒ったら雰囲気が悪くなる』と思い込んでしまい、はっきりと相手に『NO』を伝えることができていなかった。もちろん、差別している側のほうが悪いに決まっているので、本当なら周りが変わらなければいけないのは分っていました。でも、他人を変えることってそんなに簡単じゃない。だから、自分が『変わろう』と決意したんです」

「このままでは終わる」――。そう考えた土井は、まずチームメイトへの態度を変えることから状況を打開することにした。

「たとえば、いつものように『おい、シントック』と言われる。そんなとき、僕も相手に対してブラックジョークで返してみる。すると、『お、お前、言うようになったじゃないか』となるんです。そもそもブラックジョークが主流の文化なので、それで雰囲気が悪くなることはありませんでした」

土井自身の変化で、チーム内の雰囲気も少しずつ変わっていった。ただそれでも、人種差別が完全になくなることはなかった。

涙をボロボロと流しながらチームメイトに訴えた

そんなある日、事件が起こる。

「チームのSNSに試合結果が出ていて、僕の個人成績が間違って記載されていたんです。当時の僕はとにかく『結果を出して認めてもらう』ことを考えていたので、自分のFacebookで『この記載は間違っています』と投稿したんです」

これに、チームメイトのひとりが反応した。投稿の翌日、強い口調で「なんで自分の成績なんて気にしているんだ?チームのことの方が大事だろ!」と土井を責め立てたのだ。

その瞬間、土井のなかでなにかがブチッと切れた。

「お前ら、毎日俺のことを『シントック』と罵っておいて、なんでチームのことを考えろとか言えるんだ?俺が一体、なにしたっていうんだよ!」

今まで抱えていたストレスがあふれ出し、涙をボロボロと流しながらチームメイトに訴えた。

その日を境に、人種差別はピタリとやんだ。

「最初は腫物を触るように誰も話しかけてこなくなりました。それはそれで嫌なので、僕のほうから冗談めかして『この雰囲気はさすがに嫌だ』ということもみんなに伝えました。そこからは多少のブラックジョークはありましたけど、僕の本心は理解してもらっていたので、お互いの感情は全く違いました。当時、毎日のように僕を『シントック』と呼んでいた一人の選手は、今では僕の親友です(笑)」

人種差別を克服したレミたんからのメッセージ

異国の地で壮絶な人種差別を受け、それを克服した土井は改めてこう感じたという。

「フランスでは『自分を出すことで相手に認められる』ことを学びました。日本では海外ほど人種差別が身近ではないかもしれないけど、いじめや自殺の多さは大きなニュースになります。もちろん悪いのは加害者ですけど、自分を守るためには、自分自身を認めてあげる必要がある。もし今、何かに追い込まれている人がいるとすれば、『どれだけ周りに否定されても、自分だけは自分を肯定してあげて』と伝えたいです。どんな人にも無限の可能性がある。そのことに、一人でも多く気付いてほしいです」

常に「ポジティブ」な投稿を見せてフォロワーを楽しませている“レミたん”こと“土井レミイ杏利”。しかし、その裏には大きな挫折と傷を負いながら、「思考」を転換することで乗り越えた過去がある。

傷ついたことがあるからこそ、その発信が、多くの人々の心を打つのかもしれない。

土井レミイ杏利『レミたんのポジティブ思考“逃げられない”なら“楽しめ”ばいい!』(日本文芸社)

■プロフィール
土井レミイ杏利(どい・れみい・あんり)

1989年9月28日生まれ、32歳。千葉県出身。フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、小学3年生の時にハンドボールを始めた。全国でも屈指の強豪校である浦和学院高校へ進学し、大学も全国トップの日本体育大学へ進む。その後、語学留学を目的にフランスへ渡り、2012 年に1部リーグに属するシャンベリ・サヴォワ・ハンドボールのセカンドチームの練習に参加。同チームのトップ昇格を機にプロ契約を結ぶ。2014-15シーズン序盤からスターターに抜擢されると、驚異のシュート成功率75.61%を記録し、チームをリーグ4位、EHFカップ出場権獲得に導く。2017年2月にパリで開催された「ハンドスターゲーム2017」の外国人国籍選抜チームとして、日本人ハンドボール選手史上初の出場を果たす。6シーズン、フランスでプレーした後、2019年7月より日本ハンドボールリーグに所属する大崎電気OSAKI OSOLにてプロ契約。2年間プレーし、2021年5月にジークスター東京へ移籍。東京2020大会をもって、ハンドボール現役日本代表を引退した。ハンドボール以外でも多彩な才能を発揮し、ダンス、楽器演奏、マインドフルネスなど様々な趣味を持つ。TikTokのフォロワーは、560万人(2022年3月30日現在)を超え、TikTokクリエイターとしても注目を集めている。

TikTok(560万人):@anriremi
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公式ホームページ:https://anridoi.com

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