【#20】「フォワードプレス」が作れる?“チャーシューメン”で打つことの意味

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皆さん、9月1日深夜にテレビ朝日系列で放送された『テレビ千鳥』はご覧になりましたか?そこでは千鳥のノブさんと大悟さんが、シミュレーションゴルフ施設で対決をしていました。ノブさんはゴルフ歴4年で、コーチの指導を受けていて、ベストスコアは89。空き時間が少しでもあればゴルフ練習場に足を運ぶという、模範的なそこそこできるアマチュアゴルファーです。

一方の大悟さんは、ゴルフ経験ゼロ。普通に考えれば、大悟さんはまともにボールを打つこともできず、負けてしまうどころか、そもそも勝負が成り立たないような気がします。

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(Photo by Ju Photographer)

しかし、いざ蓋を開けてみると、初心者のはずの大悟さんがめちゃくちゃ上手かった。普通に当たっているし、飛んでいる。振った後に右足の裏がめくれるきれいなフォームでスイングができていたのです。

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一方のノブさんは、大悟さんに惑わされてすっかり調子を崩し、最終的には僅差で逃げ切って勝利、という何ともさえない結果になりました。

練習ゼロでそれなりのスイングをする大悟さんを呆然と眺めるノブさんを見て、ああ、わかるなあ、わかるよノブさん、と思いました。これがあるからゴルフは怖いんだ。

大悟さんほどではなくても、こういうことは本当によくある。1年半ゴルフをやっていてベストスコア135の私には本当に理解しがたいことなんですが、最初からそこそこできてしまう人、というのが結構な割合で存在している気がするんですよね。

そういう人のスイングは、プロから見ると荒かったり、理論的に間違っていたりするところもあるのかもしれません。でも、そこそこはできていて、そこそこのスコアは出る。そもそもクラブがボールに当たるし、ちゃんと飛ぶ。こっちはその段階にたどり着くまでにあとどれほど血ヘドを吐いたらいいんでしょうか。いまだ到着の見込みがないんですけど。

血ヘドっていっぱいたまったらマイルと交換できるんでしたっけ?それならたぶん余裕でハワイ往復できるぐらいたまってると思うんですけど。血ヘド航空ハワイ行き、たぶんビジネスクラスです。

そんなわけで、この連載ですでに何十回も何百回も書いていることですが、ゴルフって難しいですよね。何が難しいか、っていう話もすでに何回もしていますが、その理由の1つは「打ち方をすべて自分で決めなければいけない」っていうところじゃないでしょうか。

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目の前にボールが置いてある。このボールをクラブで打てばいい。やることはただそれだけなんですが、どうやって体を動かし、どこを見て、どこにクラブを上げ、どんなタイミングでどんな速さでどこに下ろし、どこに振り抜くのか。すべてを自分で決めなければいけないんですよね。やっぱりどう考えてもここに難しさの本質があるようです。

野球やテニスのように、来た球を打つ場合には、ある程度は打つタイミングが自動的に決まってくるし、その間合いは何となく体で覚えればいい、っていうところがある。でも、ゴルフではそれができないんですよね。すべてを自分でコントロールしないといけない。そこがなかなか厳しい。

ゴルフのコーチは「スイングはリズムが大事」などということをよく言います。しかし、私は長い間、その意味がよくわかっていませんでした。リズムって言われてもなあ、何をしたらいいかわからないし、それで体の動きが変わるわけでもないんだから、結果は変わらないでしょ。リズムを考えるなんて意味ないでしょ。そんなふうに思っていました。

でも、あるとき、例によってゴルフ練習に煮詰まっていた私は、ふとリズムを意識して打ってみようかなと思い立ちました。そこで頭に浮かんだのが「チャーシューメン」というフレーズでした。

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(Photo by kazuhide isoe)


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チャー・シュー・メン——。ゴルフではこの言葉に合わせてリズム良く振ればいい、というのは、子供の頃から何となく知識として持っていました。いま調べてみて初めて知ったのですが、この言い伝えのもとになっているのは、巨匠ちばてつや先生が手がけた往年の人気ゴルフ漫画『あした天気になあれ』だそうです。よし、あれをやってみよう。素直にそう思いました。

「チャー」で構えて、「シュー」でクラブを振り上げ、「メーン」で振り下ろす。自分の頭の中でそれを唱えて、体の動きや力加減は一切気にせず、ただリズムだけを意識してクラブを振ってみました。すると、自分でも驚くほどいい球が出ました。マジかよ!ちばてつやマジ神!

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(Photo by ArtMassa)

チャーシューメンでリズムを取る方法にもいろいろな説があって、どうやら私がやったのは本来の漫画に載っているタイミングの取り方とは若干違うようなんですが、それでうまくいったのだから文句はありません。

この打ち方でうまくいく秘密は「チャー」と「メーン」のところにある気がします。まず「チャー」でしっかり正しいアドレスを作って、少しだけ左に手元を動かすイメージを持つ。クラブを右に上げる前に少しだけ反対側に動かした方がいい、というのはセオリーとしてよく言われることで、「フォワードプレス」と呼ばれていたりもするんですが、「チャー」でその間合いが作れるのです。

そして、打つときの「メーン」も大事。ここは「メン」じゃなくて「メーン」。つまり、間を取ってゆったり振る、ということです。ここを意識していないと、打ち急ぐことになりやすい。ここをどれだけ余裕を持ってゆったり振れるかが鍵になります。

実際の間合いは「メーン」ではなく「メーーーン」ぐらいかもしれません。ジョイマンの「いきなり出てきてごめーん、まことにすいまめーーーん」の「めーーーん」とちょうど同じくらいの長さです。

物心ついた頃には何となく聞きかじって知っていた、古き良きゴルフの教え、チャーシューメン。それがこんなにも実践的で即効性のあるノウハウだったとは!ゴルフ漫画も馬鹿にはできません。今度は『プロゴルファー猿』を参考にして、木を削ってクラブを自作し、旗つつみやモズ落としの練習をしてみようと思います。


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