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飛距離のロマンかスコアの現実か? アマチュアはドライバーを使わない方がスコアが良くなる可能性も

ドライバーショットが芯を食って真っすぐ飛んだ時の爽快感はゴルフの醍醐味のひとつだが(撮影:上山敬太)

ドライバー命、という人がいます。
とにかくドライバーでかっ飛ばす快感が大好きで、ドライバーショットが決まれば他のショットがダメでも気分良くゴルフができる、というわけです。

ゴルフに何を求めるのか? 単に楽しくプレーすること、スコアが良くなることなど人によって様々あるかと思います。(中には、スコアがなかなか良くならない、上手くいかないことが楽しいという人も…)

練習場で打っている人たちを観察していても、アイアンの精度を高める、あるいはショートゲームの鍛錬に時間を割くよりドライバーをぶん回している老若男女に溢れています。「ドライバーは麻薬だ」と言った人を何人も知っていますが、まさに言い得て妙。ドライバーが上手くなるためにドライバーを練習するのはごく自然な流れではありますが、同時に短いクラブで基礎となるスイングを作ることで初めてドライバーも上手く打てるようになるという事実も忘れてはいけません。

確かに、真っすぐ飛んだ時の快感はゴルフの醍醐味のひとつですし、正確に遠くまで飛ばせれば、スコアアップに貢献することは疑う余地がありません。しかしそれがなかなか難しい。多くのゴルファーが経験的に知っていることです。

ゴルフにおいて、いくつか革命的な発明がありますが、ドライバーの誕生は間違いなくそのひとつ。ドライバーの原型が発明されたのには諸説あり、初期のものは木製の馬面の形状で現在のユーティリティに似ていました。丸くなって、今のようなヘッド形状になっていくのは19世紀になってからです。それもヘッドは子供のゲンコツ程度の大きさしかありませんでした。どんな木がヘッドの素材として優れているのか? 研究は進んでいき、パーシモンという柿の木の一種に辿り着く頃には20世紀になっていました。

20世紀末に、中空構造にした金属製ヘッドにいくつかの革命が起きます。素材の発見と体積を大きくすることで飛躍的にやさしいドライバーになることがわかったのです。それからたった30数年で、200年以上続いてきた木製のドライバーは過去の物になり、金属製のヘッドが当たり前に。ゴルフ規則で規制された上限の460ccまでドライバーヘッドは巨大化していきました。パーシモンヘッドのドライバーの体積は大きなものでも180cc程度でしたから、約2.5倍も大型化したのです。

良くも悪くも、ドライバーはゴルファーを虜にするクラブ。
1ヤードでも飛ぶと聞けば打ってみたくなるのは人情ですし、几帳面に何でも揃えるのが好きな人でも、ドライバーだけは別のメーカーやブランドでもまったく気にしません。

今回のタイトルにも書いたように、飛距離のロマンとスコアの現実という、ゴルファーにとっては切実なテーマを如実に表したエピソードをひとつ。

僕の知り合いで、15年間ストイックにゴルフをしてきたのに、平均スコアは100を行ったり来たり、ベストスコアも90で、80台は夢のまた夢だと嘆いていた人がいました。彼はレッスンを受けて、5ラウンドだけでいいからドライバーを家に置いて、ドライバーなしでゴルフをするようにプロから言われたそうです。3ラウンド目、4ラウンド目、5ラウンド目、すべて違うコースですが88、92、86というプレーが実現。まさに開眼です。本人は狂喜乱舞で祝賀パーティをするほどの勢いでした。

あれから2年が経ちましたが、彼は元の100前後の平均スコアで、90台は出ても80台は出そうにないというゴルフに戻ってしまいましたが、「ドライバーなしで良いスコアが出ても、面白くないんだよね」と笑って言うのです。ドライバーを使わないということは、その人にとっての最大飛距離を諦めたプレーになる。飛距離というロマンを諦めれば、たとえスコアが現状より良くなる可能性が高くても、ゴルフをしている本人にとっての満足度は低い。その現実を前にしたとき、あなたならどんな選択をしますか?

ドライバーを悪魔のクラブにするのも、神様からの贈り物にするのもゴルファー次第。あなたのドライバーは、どちらですか?

(取材/文・篠原嗣典)

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