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バンカーに“出入り口”があるって知ってた? 迷惑ゴルファーにならないための流儀とは

セルフプレー全盛の今、バンカーを均してくれるキャディさんはいない。バンカーもセルフで均す(撮影:ALBA)

バンカーが苦手で、大嫌いだという人もたくさんいます。
嫌がる人ほど、大事な局面で、バンカーに入ったりするからゴルフというゲームは面白いのですが、バンカーは、好き嫌いに関係なくゴルファーを丸裸にするようなアピールポイントとしても機能することもあるので注意が必要。

他のショットではわかりませんが、視力が良い人であれば、200ヤード先のバンカー内で打っている人のことがよく見えるものです。何回打ったかは当たり前で、バンカーのどこから入って、どこから出たか、レーキを使って打った跡を均したか、足跡も均したか。手に取るようにわかります。「バンカーの流儀がなっていない」と、厳しく指摘してくれる重鎮が、昔は、どのグループにもいたものです。

バンカーの流儀は覚えてしまえば簡単。

・バンカーの出入りは、グリーンサイドではないボールに近い所からする
・バンカーレーキは打つ前に使いやすい所まで持ってきておく(打ってから、行ったり来たりする無駄な時間を最小限にするため)
・打ち終えたら打った跡、足跡を均してしてからバンカーを出る
・バンカーの外に向かって高くなっているエリアから出入りしない

流儀っていうほど大袈裟なものでもないね、と軽く扱ってはいけません。例えば、打ったボールがバンカーをギリギリに出て、高い土手の芝生の上にちょこんと止まっていたとします。早く打ちたい気持ちを我慢せずに、バンカーの坂を登って、結果的にグリーンサイドの高い位置からバンカーを出て、ボールを打った人がいました。キャディがいたので、均すのはやってもらいました。この人は即日、後ろから見ていた複数のメンバーからメンバーとして相応しくない行為をした、と告発されました。本人はスロープレーにならないように、やむを得ずバンカーのマナー違反をしたと弁明しましたが、半年間の来場停止という処分が下りました。復帰後、この人は同じことを再度やって、結局会員資格停止という追放処分になったそうです。

ではなぜ、グリーンサイドの高い位置からバンカーを出てはいけないのか? 理由はふたつあります。
ひとつは、坂道を登って外に出る際にアゴになっている部分の芝生はデリケートで、ちょっと引っかけても剥がれたり、破損しやすいから。もうひとつは、傾斜した部分の砂を均すのは、平らなところの何倍も時間がかかり、完全に再生するにはテクニックも要るため、不要な時間と労力をかけないようにするためです。

いろいろな意味でバンカーは目立つのです。
上述のような処分が下ることは、超名門だけの特例と高をくくるのは危険。本当に怖いのは、自分の知らないところで、知り合いたちから“彼はバンカーの流儀すら実行できないゴルファー失格人間。可哀想だから一緒にゴルフをしているけれど、本音を言えば一緒にやりたくないよ”と思われてしまうことです。

軽く考えて適当にやった結果、そのダメージは徐々にゴルファーとしての自分を殺すことになる致命傷となることもあるのです。たかがバンカー、されどバンカーだということを忘れてはいけません。その人の本性が表れてしまう怖い場所でもある。こういうことを書くと、「そんな固いこと言ってるからゴルフが普及しないんだよ」とか、「頭の固い古い考え方」「そんな細かいこといいじゃない」と、批判する方々が一定数いることは承知です。しかし、なぜバンカーの流儀が今でも継承されているのか? それは、使ったトイレを流すように、次に利用する人を不快にさせないリレーの参加資格として機能しているからです。

つまり、後続組みの誰かがバンカーに入った時にも綺麗な状態しておくこと。そしてその行いをすべての人が数珠つなぎで実行すれば、巡り巡っていつか自分がバンカーに入った時にも、砂は綺麗に均されているはずです。だから流儀が必要なのです。そこには、名門コースも大衆コースも関係ありません。

キャディなしのセルフプレーが主流となり、昔のように会社の上司や先輩とゴルフする機会も少なくなった現在。バンカーの流儀を教えてくれる人は、もはやいないのかもしれません。自ら必要な情報を学んでいく時代なのです。ちなみに、砂混じりになってサンドウェッジのソールのメッキが剥がれるぐらいバンカー練習をすれば、どんな人でもバンカーが得意になるという都市伝説があります。流儀を身につけながら、試してみる価値はあります。

(取材/文・篠原嗣典)

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