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「“3パットの女王”ですから」ツアー初Vの蛭田みな美 18番での悲喜こもごも

副賞のユンボとともに笑顔の蛭田みな美(撮影:上山敬太)

<CAT Ladies 最終日◇20日◇大箱根カントリークラブ(神奈川県)◇6638ヤード・パー72>

プロ8年目の蛭田みな美がトータル13アンダーで並んだ西郷真央とのプレーオフを制し、涙のツアー初優勝を飾った。アマチュア時代には「日本ジュニア」、「日本女子アマ」を制するなど、トップ選手の一人だったが、プロ入り後は苦戦。ここまでシード入りの経験はなかった。それでも、今大会でキャディを務めた父・宏さんとともに課題を一つひとつクリアしてきたことが、初優勝に繋がった。

1打リードで迎えた最終18番パー5。先に西郷がバーディパットを外したため、蛭田は約2メートルから2パットのパーでホールアウトすれば優勝だった。しかし、ここでプレッシャーが襲う。「今日一日、予選ラウンドみたいにプレーしようと思っていたんですけど、初めて“勝つんだ”と思ってしまいました」。

冷静な判断ができず、バーディパットを入れにいって1メートル近くオーバー。さらにパーパットはカップに嫌われ、ほぼUターンの形で80センチも戻ってきた。「パーパットはちょっと引っ掛けました」。ボギーパットは沈めたものの、勝負はプレーオフへともつれ込んだ。

この場面を振り返り、宏さんは「アイツらしさが出ましたね。“3パットの女王”ですから」。昨季の3パット率は5.63%でツアー最下位の96位。単純計算で18ホールに1回、3パットをしていたことになる。今季はこれが3.62%(68位)にまで改善していたが、大事なところでミスが出た。

プレーオフでも悪い流れは続き、ティショット、2打目と右へのミスが出る。それでも、残り157ヤード、右ラフからの3打目を7Iで1メートルにピタリ。親子が「グリーンセンターに乗せれば傾斜で寄っていくのは分かっていたけど、実際にそこに打てたのは奇跡」と声をそろえる起死回生の一打。これが勝負の流れを一気に変え、1ホール目のバーディでプレーオフに決着をつけた。

ここ2年ほどはパッティングがイップスに近い状態。「私はこのまま勝てないんじゃないかと思ったこともありました」。苦しい時間が長かっただけに、優勝が決まると自然と涙があふれた。今オフから新たなトレーナーと契約し、ジャンプ系のトレーニングを取り入れたことで、飛距離が約10ヤードアップ。最大の課題だったパッティングはスロー映像で「インパクト前にリリースしてしまう」(宏さん)という悪癖を発見し、地道に改善に取り組んできた。諦めずに努力してきたことがようやくここで実を結んだ。

初優勝と同時に初シードも確実にした蛭田は「来年も試合に出られるのが一番うれしいです。次の目標は複数回優勝。今日はラッキーだったと思っているので、次はラッキーじゃない優勝がしたいです」。初優勝はゴールではなくスタートライン。元アマ女王は早くも次の勝利を見据えた。(文・田中宏治)

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