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山内日菜子の“史上最大の下剋上V”にステップ選手たちは何を思った? 希望の勝利「全員にチャンスがあると思えた」

<ラシンク・ニンジニア/RKBレディース 事前情報◇27日◇ザ・クラシックゴルフ倶楽部(福岡県)◇ 6521ヤード・パー72>

先週、宮崎で行われたレギュラーツアー「アクサレディス」では、地元出身の山内日菜子がプロ8年目にしてうれしい初優勝をつかんだ。プロ生活のほとんどをレギュラーツアーと下部のステップ・アップ・ツアーを行き来し、今季に関してはQTランク181位。これは2002年のQT開始以降、最もQTランクの低い選手によるレギュラーツアー優勝だった。下部ツアーへの出場もままならない状況から人生を変える史上最大の下剋上Vとも言われた。

そんな背景もあり、山内と同じようにステップ・アップ・ツアーから飛躍のチャンスをうかがう同期や同年代の選手たちからはよろこびと同時に、刺激になったというような言葉が多く聞こえてきた。

「最初から最後まで全部見ていました。今ひなちゃん(山内)がどう思ってるか、もなんとなく分かりましたし、本当にうれしかった。私も早く後を追いかけないとと思いました」。こう話すのは、山内と同じ2016年プロテスト合格組の但馬友だ。山内のほうが1学年上ながら、大分県出身の但馬にとっては同じ九州出身の同期で、「ずっと『ひなちゃん、ひなちゃん』って感じで、一緒にいることが多かった」という仲良しでもある。

山内については「いいことも悪いこともすぐ忘れるんです(笑)。なので、ゴルフでも一打一打にすごく集中できていて、そこがうらやましい」と明かす。「私は先のことを考えてしまうタイプで、ひなちゃんの性格にはいつも憧れてます。『どう考えてますか』とかよく相談してきました」と頼れる存在でもある。ステップ・アップ・ツアー1勝(19年)で、レギュラーとステップを行き来する立場という部分も似ている。それだけに強い刺激になった。

「もうちょっと自分も頑張ろうって思えました」と話すのは同学年の高橋恵。優勝後にはすぐにLINEを送り祝福した。「調子はずっとよかったように見えてました。オフにすごく練習している姿を見て、そういう人に結果はついてくるって改めて思いました」。隣にいたこちらも同学年の川崎志穂は、「96年生まれはみんな仲が良くて、遊びにもいきます」と明かす。自身も今季はQTランク194位と苦しい立場でのシーズンインになったが、「まだ頑張れるんだなって思いました」と力になった。

「ベテランの少し下という世代。若い子も多いし、先のことも考えてしまう」(高橋)というように、女子ゴルフ界において26歳は中堅にあたる。それもあって、今回の山内の優勝は「勝った時に『私も頑張ろう』って思えたし、その気持ちがあればまだ私たちもやれると思う。これがなかったら引退かなって思ってしまいます」(川崎)という自分のゴルフへの気持ちを再確認する、いい機会にもなった。

今週のステップ・アップ・ツアー会場で話を聞いた選手の多くは、『私も!』、『頑張ろう!』という気持ちを強めたようだ。「自分にもできるなと思えました。QTランクどうこうではない。(上との差は)天と地の違いというほどではない。『ステップだから』というのも関係ないって勇気をもらえました」(同期・村田理沙)。「最初のチップインバーディ(6番)からもう泣きそうでした。同級生で仲良くて、ずっと調子もよさそうだった。私ももっと頑張らないといけないと思いました」(丹萌乃)。身近なだけに、すぐに自分のことにも置き換えられる。

ステップ・アップ・ツアーの今季開幕戦となった2週前の「大王海運レディスオープン」初日に、同組でプレーしていた山田彩歩は、なおさら「ステップに出てる選手全員にチャンスがあると思えるような試合でした」という思いを強くした。その翌週の偉業達成だっただけに、「こういう道もあるんだな」。わずか1試合でも、キャリアを変えるのには十分、ということを痛感した。

下部ツアーといえど、ここに出場しているのは、厳しいプロテストをくぐり抜け、女子ゴルフ界のトップを争う選手たち。山内が示した道は、選手たちに勇気を与え、そしてさらなるやる気を呼び起こしたようだ。今週はステップ唯一の2日間大会。初日からスタートダッシュをかける選手たちの姿に期待したい。(文・間宮輝憲)

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