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金谷拓実が声を詰まらせ「僕の前では元気な姿を見せようと…」 乳がんの母に捧げるメジャー初V

金谷拓実、闘病中の母に捧げるメジャーV(撮影:鈴木祥)

<BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ 最終日◇4日◇宍戸ヒルズカントリークラブ 西コース(茨城県)◇7430ヤード・パー71>

今季男子メジャー初戦は、最終日をトップでスタートした金谷拓実が気迫のこもったプレーで逃げ切り、2年ぶりとなるツアー通算4勝目。初メジャータイトルを獲得した。

1年前は海外の試合に積極的に参戦し、今大会が国内初戦だった。2020-21年シーズンに2勝を挙げて賞金ランキング2位に輝いた金谷だったが、海外では出るたびに予選落ちを繰り返し、完全に自信を喪失。「とにかく自分らしいプレーをして、自信を取り戻したい」という言葉を繰り返していた。

そんなとき、母・美也子さんから突然、衝撃の告白を受ける。「昨年の夏頃に実家に帰省したときに、急に乳がんを打ち明けられて、すごく動揺しました」。現在も闘病中で入退院を繰り返している。

「僕の前では元気な姿を見せようとしていて…やっぱり入院しているときには苦しそうにしていた」と声を詰まらせる。そんな母は結果が出なくて悩む息子を、いつもと同じように元気づけてくれた。「昨年は苦しいシーズンでしたけど、予選落ちが続いてふてくされている場合ではない。苦しい姿を見せない母を見て、また頑張ろうと思った」。

母にいいところを見せたい。それが形となって現れたのは今年の2月。アジアンツアーの「インターナショナルシリーズ・オマーン」で海外ツアー初優勝を挙げた。これをきっかけに、「自分に自信を持ち始めた」。その後、4月の「インターナショナルシリーズ・ベトナム」でも優勝争い。国内では開幕戦で8位に入り、以後も12位、13位、3位と上位を外していない。

心残りだったのは前週の「〜全英への道〜ミズノオープン」。会場のJFE瀬戸内海ゴルフ倶楽部(岡山県)は、金谷の実家がある広島県の呉市に近い。最終日は母が応援に駆けつけたが、優勝に1打届かなかった。「優勝して励みにしてくれたらと思っていたんですけど、目の前で見せられなかった」と悔やむ。それから1週間が経ち、テレビを通してメジャーチャンプになった姿を母に届けることができた。「少しでも励みになってくれたらいいと思います」。

学生時代のウェアは、東北福祉大学のカラーでもある黄色がメーン。アマチュア優勝を成し遂げたときも黄色いウェアをまとっていた。前週の最終日はオレンジ色のウェアで優勝を逃した。「最終日に最近あまりいいプレーができていなかったので、ゲン担ぎで黄色にしました」。プロ転向直後、自信を持ってプレーしていた金谷が黄色のウェアに重なった。母はきっと笑って喜んでくれただろう。(文・下村耕平)

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