すべてのクラブが中空の時代が来る!?【QPのギアマニュアル】

昔の中空アイアンはスピンが少なくて、すっ飛んでいくイメージだったが、今は違うとQP

アイアンにはマッスルバック、キャビティバック、ポケットキャビティ、中空と大きく分けると4タイプあります。中空アイアンといえば、飛距離を求めるアベレージ向きとのイメージがありました。しかし、最近の中空は、中上級者でも満足できるマッスルバックタイプも増えてきています。
 
何がいいって、ミスヒットしても曲がらないんです。ミススイングをしたときに、今までのクラブの感覚だとは、「うわっ、右行った」と思っても、中空だとグリーンの右サイドに乗っているという感じです。難しいアプローチが残るのとパットができるのとでは大違いですよね。
 
ひと昔前の中空アイアンといえば、スピンが少なくて、すっ飛んでいくイメージでアイアンも飛距離を求める人にはぴったりでしたが、コントロール性を重視する上級者には、グリーン上で止まらないため、使い勝手はよくはなかったのです。

中空でもスピンが入るタイトリスト〈T-MB〉というモデルがあります。これはマッスルバックの設計に近いのです。しかし、“やさしい中空”のイメージはなく、少しだけミスヒットに強く、アイアン寄りの少しやさしい程度でした。
 
そこに、今の中空ブームの火付け役として風穴を開けたのが、テーラーメイドのP790の2019年モデルです。やさしさを備えながら、スピンが入ってグリーンでボールが止められ、コントロールがきくので上級者も使える中空として人気を集めました。両者をぎりぎり攻めた形ですね。それ以降、各メーカーがマッスルバックタイプの中空アイアンが登場した流れになっていると思います。
 
中空とは読んで字のごとく、ヘッドの内部が空洞になっています。昔の中空アイアンは内部がぽっかり空洞になっているモデルが多かったのですが、最近はマテリアルの進化により、高比重のタングステンを内部に入れて重心位置を調整したり、振動吸収材やウレタン素材を入れて打感をよくする工夫をしています。
 
よくよく考えると、ドライバーやウッド系はすべて中空構造です。ウッドと一緒と考えると、設計の自由度が大きく生まれます。素材の進化により薄く作って軽くなったぶんの余剰重量が取れるようになったので、中空アイアンが進化しているのです。前出のP790もメタルウッドの発想で作ったと聞きます。
 
これからはアイアンのフェースの中に、フレームが入っているなんてこともあるかも知れません。今やウェッジも中空モデルが登場する時代。これからの時代は、すべて中空のクラブになるかもしれませんね。
 
ちなみに、同じ中空アイアンでもモデルによってロフト角設計が異なります。いわゆる飛距離に特化したモデルは、7番アイアンで28度前後と現代の標準的なロフトで、33度前後のモデルはクラシカルなモデルでコントロール重視といえます。自分のニーズに合わせて選ぶことをオススメします。
 
また、マッスルバック使用者がやさしさを求めて中空に替える場合、マッスルバックと打感は別物になります。ツアープロがよく「打感では飯は食えない」といいますが、スコアにつなげたい場合は何かを犠牲にする覚悟も必要です。私は打感よりやさしさを取りました。
 
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。

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