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吉田優利の遠かった3勝目&近づく理想の自分「プロとしても人間としても評価されたい」

最終18番で左こぶしを突き上げる吉田優利(撮影:米山聡明)

<ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ 最終日◇7日◇茨城ゴルフ倶楽部 西コース(茨城県)◇6780ヤード・パー72>

昨年は5度の2位がありながらも、一度も勝つことができず涙したこともあった。そんな吉田優利がしっかりとウイニングパットを沈めると、左手を高く掲げてギャラリーの声援に応えた。そこに涙はなく笑顔のみ。21年9月の「ゴルフ5レディス」以来、約1年8カ月ぶりのツアー3勝目をうれしい初メジャータイトルで飾った。

朝から雨が降るなか、吉田は後続と2打差の単独トップでスタート。最初の1番で残り80ヤードのセカンドショットをピン横3メートルにつけて、バーディを先行させた。しかし、雨と強い風に加え、風向きが変わり気温がグッと下がったことで、なかなか楽にプレーさせてくれない。そこから10番までに3つスコアを落とした。「持つ番手も変わるし、風向きは反対だし、違うコースのように感じました」と吉田は振り返る。

17番パー5のティに立った時点でスコアはトータル2オーバー。1つ前を回る申ジエ(韓国)は1打差に迫っていた。バーディが獲りたいパー5。ティショットもセカンドもしっかりフェアウェイをとらえると、「あのショットは本当に完璧だった」と、残り90ヤードの3打目を52度のウェッジでピンの少し奥に落とすと、バックスピンで戻してピンをかすめ、1.5メートルにピタリ。「次に打つパッティングのラインもいいラインにつけられていた。次のことも考えたいいショットだったと思います」と自画自賛。これをしっかりと沈め、リードを2打に広げて最終ホールを迎える。

最後のティショットは左のファーストカットへ。ジエが18番で1つ落としたため、吉田が2打目をグリーンエッジに運んだ時点で、ほぼ優勝は決まっていた。ダブルボギーでも勝利という状況だったが、ここで吉田はボギーでもOKと思わず、明確にパーを狙いにいった。

「相手がどう出るかで自分の何かを変えたりする選手もいると思うんですけど、私が理想とするプレーはそうじゃない。相手がどれだけいいプレーをしようと、自分が良ければおのずと結果はついてくる。相手がミスをしているからちょっと守りにいこうかっていうのは、あまり好きではない。次につながるゴルフをしたいと思っているので、最後のパーパットは自分でも評価したいなと思います」

相手のプレーがどうであろうと、自分のスタイルは崩さない。それはプレー中にギャラリーへ向けられる笑顔にも表れている。「私はプロゴルファーとしても、人間としても評価されたいと思っている。そう言うとエゴに聞こえるかもしれないけど、自分が夢とか元気を与える側っていうのを、理解することが大事だと思っていて。こういうプレーをしてみたいな、こういう人になりたいなと思ってもらえたら。それってプロというだけではなくて、ひとりの人間としての評価でもあると思う」と23歳は真剣に語る。

目標の選手を聞かれると、「桃子さんもかっこいい」と同じ辻村明志コーチに師事する上田桃子の名前を出しつつ、「やっぱり自分は自分。他の誰でもなくて、私のブランドをもっと確立していけるようにしたいと思います」と、オリジナルな存在を目指している。

強い吉田優利を印象づけた今季初のメジャー。「3勝目までけっこう長かったと思いますけど、そのぶん、特別な試合に勝つことができた。いままでやってきたことは間違ってなかったと思います」。もともとポジティブなことしか言わない吉田だが、メジャータイトルを手にして、さらに自信を深めたようにも見える。

「去年は勝てなかったけど、自分的には評価しています。安定してずっと勝つ準備ができていることが、プロゴルファーとしてあるべき姿だと思う」。勝てなくても自分は吉田優利。変わっていない。一方で、他人から見られる目に数字が大事なこともわかっている。「プロとしての価値は勝利数と前に言っていたと思う。それはゴルフをしてない人から見ても評価できる部分」と話す。オンリーワンでナンバーワン。この勝利で理想の自分にまた一歩近づいた。(文・下村耕平)

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