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女子アマ日本一の次は“世界一”へ 馬場咲希から刺激を受けながら飯島早織が成長中

良きライバルの飯島早織(左)と馬場咲希。今週はともに日の丸を背負って世界の強豪と戦う。(撮影:ALBA)

<トヨタジュニアゴルフワールドカップ 事前情報◇19日◇中京ゴルフ倶楽部 石野コース(愛知県)◇6130ヤード・パー72>

先週、女子プロへの登竜門といわれる「日本女子アマ選手権」を制した飯島早織(ルネサンス高3年)。初日「69」をマークして首位タイで滑り出すと、最終日まで首位を譲らず完全優勝でビッグタイトルを手にした。今週は馬場咲希(代々木高3年)、荒木優奈(日章学園高3年)とともに国別対抗戦「トヨタジュニアゴルフワールドカップ」に出場する。今もっとも勢いに乗る18歳の素顔に迫る。

■“ライバル”をおさえて日本一に

飯島の女子アマ日本一決定の瞬間を見届けた多くのギャラリーの中に、昨年の「全米女子アマ」を制した馬場の姿もあった。10センチのウィニングパットを沈めてグリーンを下りてくる飯島を迎えた馬場は、自分のことのように喜び、祝福した。馬場との付き合いは小学生の頃からだという。

馬場について飯島は「すごく仲のいい友達」とする一方で「向こう(馬場)がどう思っているか分からないけど、ライバルとして意識しています」と切磋琢磨するいい関係。昨年、馬場が全米女子アマを制して日本中を驚かせたが、「びっくりというのはあまりしてないかも。勝ててもおかしくないだろうなと思っていたので、実力的に。やっぱりという感じ。自分も早くタイトルというか、そういうところに行きたいと思っていたので今回の結果は良かったです」と、馬場を追いかけるように日本タイトルを手にした。

■持ち味を磨き続けて飛躍 昨年から立て続けにV

飯島は昨夏の「日本ジュニア」では43位タイに終わっているが、馬場の刺激を受けたのか、それ以降は目覚ましい活躍を見せる。昨年11月に松山英樹の元キャディの進藤大典氏が主催の「ジュニアトーナメント」で優勝を飾ると、今年3月には丸山茂樹主催の「ジュニアファンデーション」でも優勝。そして、「全国高校選手権春季大会」を制覇し、5月の関東女子アマナンバー1を決める「関東女子ゴルフ選手権」も制した。4月に行われた「全英アマ」の出場権をかけた3日競技の「ザ・ロイヤルジュニア」は5ホールのプレーオフで敗れたが、2位に入っている。レギュラー、下部を含めてプロの舞台も経験している。

身長159センチの飯島はドライバーの平均飛距離は220~230ヤード。270ヤード級の飛距離を持つ馬場を筆頭に、いまは女子アマでも250ヤードを越えることが少なくない時代だ。「だいたいどの試合にいってもセカンドオナー」と最初に2打目を打つことが多い。「グリーンに届けば狙える」というショットの正確性とマネジメント力が強みである。

「昔から飛ばすことは得意ではなかった」。克服しようとする時期もあったが、「(飛距離は)伸びていないワケではないのですが、それよりも先に伸ばしたほうがいいところがたくさんある」と自身の持ち味を磨くことを選んでいる。フェアウェイにさえおけば多くのチャンスを演出でき、「パットが入ればいいスコアは出せる」と自負する。

プロの世界を見ても、ドライバーで250ヤード以上飛ばす選手は多い。だが、「古江彩佳さんや青木瀬令奈さんとか、飛距離が武器でなくても優勝したり、毎試合上位に絡んでいる。(ツアーで)やっていけるのは見ていてわかるので、自分もそこを目指したい」とゴルフの方向性もブレない。「誰よりも曲げないで、パットも全部入れにいくという強い気持ちを持ってプレーしたら、いつか納得できる日がくるんじゃないかと思っています」。これまでの取り組みを証明するように結果を残している。

■“ヨーイドン”で始めたゴルフ 兄の背中を追ってトップアマへ

飯島が「家族の影響で」ゴルフを始めたのは4歳から。その頃、家族5人は誰もゴルフの経験はなかったという。「家族は年が離れていて…」。兄・健之恭(けんのすけ)さんは8歳年上、姉・美卯さんは6歳年上。父・健男さんと母・晴美さんも9歳差だ。「家族全員で共通な趣味とか話題を作るために、みんなで同じスポーツをやろうとなって」と全員初心者からクラブを握り始めた。当時、小さかった飯島は練習場で打席に立つことが許されないことも多く、4歳でもボールが打てる練習場を探したという。

そんな飯島を献身的に支えるのは、コーチを務める兄・健乃恭さんだ。妹ともに始めたゴルフだが、「最初はあまり…」とほかのものに興味を持つこともあった。しかし、練習場に通ううち、ゴルフにハマる。毎日ボールを打ちたいと懇願するようになり、競技にも出るようになって、2008年のプロテストに合格した。妹も兄の背中を追うようにのめりこみ、プロの道を志すようになった。子供が本格的にゴルフを始めると両親はサポートする側に回り、クラブを置いた。

兄とともに作るスイングは効率の良さを重視する。「体の動きでスイングを見るので、不調になっても直しやすい」(健乃恭)のが特長の一つである。全米女子アマ覇者で女子アマ世界ランキング2位というライバルに刺激を受けながら、他に流されず自分の持ち味を伸ばして「欲しかったタイトル」を獲得した。今年の最大の目標はプロテスト合格。その狭き門に挑む前に、愛知で世界一の称号を手に入れる。(文・小高拓)

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