【日本代表|木暮賢一郎監督】「予選には現段階でのベストでいく」

8月24日、日本サッカー協会(JFA)は、フットサル日本代表の今後の活動に関するメディアブリーフィングをオンラインで開催した。

会見には木暮賢一郎監督と、小西鉄平テクニカルダイレクターが参加し、8月下旬から行う海外視察や直近の代表活動、来年2024年9月14日からウズベキスタンで開幕するワールドカップに向けた強化方針など、質疑応答を交えて約1時間の報告や説明を行なった。

【小西鉄平TD】「欧州行脚し、各国協会の強化責任者と話し合う」

■ブリーフィングの録画映像の一部を公開中(YouTube|SAL公式チャンネル

通訳を介さないで動けるメリットがある

■木暮賢一郎(フットサル日本代表監督)

フットサルの代表活動において大きな大会のある時期以外でいろんな話をできる機会はこれまで多くはなかったですが、みなさんと話をして、W杯だけではなく、フットサルなど様々な取り組みに興味を持ってもらえたらうれしいです。

今月末から様々な国、クラブを訪問して、コミュニケーションを取ることができることに感謝しています。有意義に活用したいと思います。各国とコネクションを持つことは今のフットサル日本代表の強みです。言葉の面もそうですし、様々な経験を通して、直接、彼らとやりとりできる。通訳を介さないで動けるメリットを最大限に生かしたいと思っています。

国内組、海外組、若手、3つのポイントがある

──インターナショナルマッチデー(IMD)以外のタイミングで選手を代表活動に送り出すことは、海外クラブにとっても難しいものですか?

自分が監督に就任してから、2022年のクウェートでのアジアカップでは、逸見勝利ラファエル、毛利元亮、内田隼太の3人は、クラブの理解を得られず、これは小西も言うようにお互いにプロフェッショナルの観点から致し方ないですが、招集できませんでした。

一方、原田快の所属クラブは理解を示してくれました。これはクラブによって様々です。そうした経験も踏まえ、こちらの代表活動への理解を示してもらうためにも直接顔を見て話すことの重要性を感じています。

ただしもう一度お伝えしますが、これはオフィシャルなルールですから仕方のないことも理解しています。その上での会話であり、いい形で大会を迎えられたらと思います。

──前回のアジアカップ予選は実力差が出る試合が多かったですが、今回もベストメンバー、現時点でのA代表でいくのか。それ以降、アジアインドアゲームズも、アジアカップのための仕上げとして使うのか、若手にチャンスを与える編成にするのか。各コンペティションに対する考え方はいかがでしょうか?

これまで「東アジア予選」と呼ばれてきたものですが、点差がつく試合が多かったのは事実です。ただし今大会からその地域予選がなくなり、アジアのすべての地域をポッドに分けて、今までとは違う厳しいグループも生まれています。格差がなくなりました。我々は、時差が少ない、台湾のブロックに入りましたが、初戦のオーストラリアは過去にも苦戦している相手です。彼らはフィジカル的な優位性もありますし、過去にはワールドカップにも出たことがある歴史のある国ですから油断はできません。台湾も戦ったことがありますし、前回は予選でしたけど、現段階では、その時のベストなメンバーを考えています。

その先については、3つのポイントがあります。

IMDの活動内のゲームは基本的に国内組、海外組からベストなメンバーを選ぶことになります。「ベスト」とは、対戦国や状況によっても変わります。そしてIMD以外のアジアインドアゲームズなどは海外組を呼べないので、国内組のベストが基本的な考え方になります。

ただし、スペイン2部では、IMDが適応されていないですから、今回の欧州行脚を通して話をします。基本的には呼べないルールですから、そのなかでのベストを考えています。

また、それぞれの活動において若い選手をピックアップすること、飛び級や若い選手に経験を積ませること、育成年代からの吸い上げも、タイミングによりますが、早くから経験させて、継続的な強化をする選手選考ということは考えています。

──12月には国内での親善試合を行います。監督が就任以降、強いチームとマッチメイクしてきましたが、今回はどういうチームを呼ぶのかなど、狙いはありますか?

国内で行うゲームも海外で行うゲームも、格上か同等という条件に見合う国々とやりたいという活動方針があります。マッチメイクを探している相手は世界のトップです。すべての条件が常にうまくいく保証はないですが、方針は大国とやることをベースに考えています。

──日本に帰化した湘南のGKフィウーザ選手の招集については?

特に、個人的な選手に対して、こういった公な場でのコメントは控えますが、一つ言えることとしては、日本代表選手として、すべての選手に招集の可能性があるということです。

──木暮監督の就任以降、若い選手の育成でもいい流れをつくっていますが、今後、先進国にどんなところを学び、突き詰めたいと考えていますか?

まず前提としては、スペイン、ポルトガルは全く知識がない状況ではありません。どんなカテゴリーがあり、年間何試合しているかはある程度、把握しています。スペイン、ポルトガルはU-15から代表があり、U-17、U-19を経てA代表につながっています。それぞれのカテゴリーで親善試合、国内での強化を行っています。南米では、U-17、U-20の南米選手権があります。

一方、アジアにはU-20のカテゴリーの大会しかありません。加えて、コロナによって直近の2大会は公式大会がないですから、欧米とは背景が異なる部分があります。

今回、欧州に行くなかで、それぞれの年代でどのように選手をピックアップしているのかという点に興味があります。U-15では、州ごとの活動でどのように選手をリスト化しているのか。スペインにはU-15年代のリーグ戦も行われています。

日本では、先日のU-18の大会でもフットサルプロパーや高校サッカーが軸のチームなど、育成環境が違います。どのように各年代をスカウティングして、どんな基準で代表チームを構成していくのか。また、U-17、U-19のどのくらいのパーセンテージの選手が成長できているのかという部分は非常に興味があります。

私たちの代表も、今は50%の活動がA代表につながっています。それらは監督が交代したからといってメンバー構成が変わるのではなく、いつの時代でも下から選手が上がっていくことが大切です。また、今はトレセンもありますが、少しずつピラミッドの年齢層が下がった活動をできているので、そうした方向性と、スペインやブラジルなどと照らし合わせてみたいと思います。ただし、基盤が違う部分もあるので、ヒントになること、参考になることですね。当然、日本が優れていることも見えるのではないかと思っています。

──年始にU-23の活動を行いました。その世代も海外活動できていなかったと思いますが、フランス遠征で得たことや2勝したことなど、どのように評価していますか?

その世代は多くの選手が、コロナの影響で世代別のアジアカップを経験できなかった選手が多く占めています。具体的には遠征に行った14名のうち13名がそうです。フランスは近年、力を入れている国ですから、そこに2勝できたことは非常に大きな成果です。

彼らは、今、世界でも評価を受けている国ですが、日本も大きな結果を出すポテンシャルのある世代です。U-19、U-23の活動をした選手がクラブに戻り、プレータイムを獲得したり、その変化を各クラブの指導者が感じたり、なにより本人がよりハングリーな気持ちで今度はA代表で戦いたいと思うような、そんな循環を生み出したいと考えてやっています。

その成果は少しずつ見えています。この先のW杯までは1年ありますが、目の前の成果だけではなく、やはり1人でも2人でもその世代から選手を引き上げて、数年にわたって継続的に代表チームを強化できるチームをつくっていけたらと思っています。

──今シーズンのFリーグをどのように見ていますか?

この先どんな展開になるかわからないですけど、3つあります。

1つは、上を見ればキリがないですが、ここ数年のコロナ禍の影響を含め、お客さんの数、ピッチでの応援のあり方など、ピッチの熱量が戻ってきている印象があります。

個別のチームを出すことはできないですが、大きな成果を出しているホームアリーナは、非常に多くのお客さんで埋まっている光景を目の当たりにしています。その熱量が加速することこそ、リーグのレベルを上げる一つの要因となりますからいい傾向です。もちろんさらに増えることを期待していますが、それが見て取れると思います。

2つめは、2021年のW杯が終わり、代表監督が代わっただけでなく、これまで日本フットサルを引っ張ってきた多くの選手が引退したり、関わり方が変わったり、世代交代と言いますか、新しいフェーズに入っています。育成年代を含め、2016年に初めて創設され、2017年にU-20アジアカップを戦った世代が主力となり、リーグを引っ張っていく成長、変化を見せてくれています。これまで育成に関わってきた自分としても、JFAとしての取り組みの成果が出てきているなと思っています。

3つめは、我々は毎週末、様々な観点から分析していますので、各クラブがどういうフットサルを指向して、どんな傾向があるかデータやスタッツを把握しています。

これは良い悪いではなく、GKを使った展開が増えている事実があります。それが良いとか悪いとかではありません。今、世界で行われている状況が、リーグでも影響を受けています。来年のW杯に向け、我々が戦う相手もそれらを駆使する可能性があります。ですから、選手もその環境に免疫がつくことは、短い活動の中でゼロから対策をする必要がなく、代表チームとしてもステップを登ったのかなと。リーグとしての傾向はあるかなと思います。

■日本代表の今後のスケジュール

2023年9月11日(月)〜9月17日(日)ブラジル遠征(サンパウロ州)

9月25日(月)〜10月11日(水)※事前トレーニングキャンプ含む

AFCフットサルアジアカップ2024予選(チャイニーズ・タイペイ)

 10月7日(土)vs オーストラリア代表

 10月11日(水)vs チャイニーズ・タイペイ代表

11月 海外遠征(調整中)

※アジアインドア&マーシャルアーツゲームズ(タイ)が延期のため

12月14日(木)国際親善試合(東京/大田区総合体育館)

12月17日(日)国際親善試合(北海道/帯広)

2024年2月 アジアインドア&マーシャルアーツゲームズ(タイ)

4月(予定) AFCフットサルアジアカップ2024(場所未定)

※ワールドカップ予選を兼ねる

9月 FIFAフットサルワールドカップ2024ウズベキスタン

関連記事