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レブロンも「どんどん成長している」と太鼓判を押すドラ2新人グリーン。飛躍の理由は“フォームの微調整”と“守備を読むプレー”<DUNKSHOOT>

コーチ陣との特訓や試合中の駆け引きなどを学び、グリーンは加速度的に成長を続けている。(C)Getty Images
現地時間3月9日(日本時間10日、日付は以下同)のロサンゼルス・レイカーズ戦で、キャリアハイの32得点をマークしたジェイレン・グリーン。昨年のドラフトでヒューストン・ロケッツから2位指名された期待のルーキーは、試合後「今夜はバスケットが大きく見えた」と語った。

第4クォーターを終えて120−120、延長にもつれる大接戦となったこの試合、グリーンはオーバータイム開始から3連続でゴールを奪い、一挙7得点をマーク。その間レイカーズは1バスケットも沈めることができず、相手を突き放したロケッツが139-130で勝利を飾った。

試合後、敵将のフランク・ヴォーゲルも「彼の爆発力は素晴らしい。将来スター選手になる」とグリーンを絶賛。そしてトリプルダブル(23得点、12アシスト、14リバウンド)の奮闘も空しく敗者となったレブロン・ジェームズも、「彼は高いシュート力を持っているね。運動能力は見てのとおりだが、彼はその能力を高校時代からずっと発揮し続けていて、今もどんどん成長している。若いチームにいて、失敗しながら学べる環境にあるのも、彼にとって良いことだ」と若き後輩にエールを贈った。
ロケッツが「シュート力を見込んで上位指名した」というグリーンは、デビューからわずか3戦目のボストン・セルティックス戦で8本の3ポイントを含む30得点と、その実力をさっそく証明。ハムストリングを痛めて11月下旬から約1か月間離脱したが、復帰後もコンディションを取り戻し、オールスター以降の10戦では6試合で20得点以上を奪取している。

特筆すべきは、単純なシュート数だけでなく、成功率が向上していることだ。デビューからケガで欠場する前までの18試合は、フィールドゴール成功率が38.2%、3ポイントも27.8%と今ひとつだったのに対し、直近の10試合ではそれぞれ49.1%、35.2%と、ともに10%前後アップしている。

これには、コーチ陣との反復練習によるシュートフォームの微調整、そしてグリーン自身が自分のプレースタイルについて常に貪欲に学んでいるからであると、ロケッツのスティーブン・サイラスHC(ヘッドコーチ)は地元紙『ヒューストン・クロニクル』にこう語っている。
「これまではボールをリリースするタイミングがやや遅かったが、テンポをみっちり叩き込まれて、いまは速く打てるようになった」

グリーンがジャンプシュートを打つ時のフォームは独特だ。教科書どおりのフォームならば、左手(ヘルプハンド)をボールの横に添える形だが、グリーンは右肘が開き気味で、左手はボールを抱え込むような形になっている。

これにはグリーン自身の持論があった。

「自分は手があまり大きくないから、サイドに添えると、かえってバランスが崩れてめちゃくちゃなシュートになる。それに余計に肘も張ってしまうんだ」

これまで指導を受けたコーチたちはみな改善しようと試みたらしいが「頑張ったけれど、自分には合っていないとわかった。だから自分のスタイルを貫くことにした」とグリーンは語っている。
また、グリーンはシュートフォームに入る瞬間、足をやや広めに開けるため、沈み込む時にヒザがX字のように内側に寄る傾向がある。これではヒザに負担がかかり、長期的に見れば故障の要因にもなりかねない。アシスタントコーチのジョン・ルーカスは、肩幅と同じ間隔に足を開く、という点についても指導している。

そのほかにも、低めの位置からボールをリリースするなど、グリーンのシュートフォームは個性的だが、サイラスHCらコーチ陣は「本人が自信を持ってプレーすることができ、かつ繰り返してできるものであるのなら、我々にとっては問題ない」と容認しているそうだ。

歴代の名シューターがみな、レイ・アレン(元ボストン・セルティックスほか)やクレイ・トンプソン(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)のように美しいフォームを持っているわけではない。本人が快適に打てて、そして実際に得点が入れば、それが自分のフォームになる。

グリーンは自分のシュートフォームを「ちょっとファンキー」だと描写しているが、「でもこれが僕のシュートだ」と自信も持っている。

そして今、彼が取り組んでいるのは、7フッター(約213cm)級のビッグマンのブロックをかわしてシュートを決めるテクニックだ。
今年に入ってからの試合でも、グリーンはロサンゼルス・クリッパーズのアイザイア・ハーテンスタイン(213cm)や、ユタ・ジャズのルディ・ゴベア(216cm)からブロックを食らっている。

「彼はディフェンスを読んでプレーするようになったね。シーズン初めの頃は、何も考えずにやりたいようにプレーしていた。しかしNBAでは、ただプレーするだけでは通用しない。彼はとても勉強家で、今は相手のディフェンスはどう動いてきて、それをかわすために自分はどうすべきかを学んでいる最中だ」(サイラスHC)
最近の試合でミドルレンジのシュートが増えているのは、その対策のひとつでもある。

ロケッツは17勝51敗と苦戦を強いられているが、レブロンが言うように、新人のグリーンにとってはそうした試行錯誤を繰り返しながら学べる、実は格好の環境であるようだ。

文●小川由紀子

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