「今、最強なのはエンビードだ」シャックも太鼓判を押すMVP候補が自身の転機を語る<DUNKSHOOT>

6年目の今季、自己最多の平均29.0点をあげるなど支配的な活躍を続けるエンビード。MVPの有力候補に浮上している。(C)Getty Images
 現地時間1月25日(日本時間26日、日付は以下同)に行なわれたニューオリンズ・ペリカンズ戦。ホームのフィラデルフィア・セブンティシクサーズは前半を終えて50−58と8点のビハインドを背負っていた。

 だがシクサーズは後半に入って67−49と一気に形成を逆転し、最終スコア117−107で勝利。前戦に続き2連勝を飾った。

「彼は素晴らしい選手。それが彼を表現するのにうってつけの言葉だと思う。素晴らしい選手というのは本当にいいプレーをするし、凄く集中していて、チームを束ねる見事なリーダーなんだ。ハーフタイムの時、彼は真っ先に手を挙げて『俺のせいだ。俺がディフェンスでもっといいプレーをしないといけない。皆のディフェンスも引き上げてみせる』と言ったんだ。私は非常に嬉しかったね」

 試合後にシクサーズのドック・リバースHCが絶賛した彼とはもちろん、ジョエル・エンビードのこと。27歳の大黒柱は、前半で18得点、7リバウンドを記録していたものの、後半に入ってさらにギアを上げ、24得点、7リバウンドに4ブロックと攻守両面で暴れ回った。
  終わってみればいずれもゲームハイとなる42得点、14リバウンド、4ブロックの大活躍。直近4試合連続で35得点、10リバウンド以上と、支配的なパフォーマンスを続けている。

『ESPN Stats & Info』によると、NBAとABAが統合された1976−77シーズン以降、この記録を達成したのはエンビードが史上4人目。シャキール・オニール(元ロサンゼルス・レイカーズほか)、アンソニー・デイビス(レイカーズ)が4試合連続、カール・マローン(元ユタ・ジャズほか)が87−88シーズンに唯一5試合連続で達成している。

 また、エンビードは上記の4試合を含む5戦連続でプレータイムを上回る得点を奪う効果的な働きを披露。12月16日以降の18試合では平均34.2点をあげ、その間チームを13勝5敗に導くなど、今季のリーグMVP有力候補に浮上している。
  そんなエンビードは自己最多タイの50得点を奪った19日のオーランド・マジック戦後、飛躍のきっかけとなった自身のターニングポイントについて語っている。

「2年前の夏だ。昨シーズンの前に、俺は毎日ワークアウトしていくことを決断した。栄養士と一緒に身体を作り直していき、自分の身体には何が必要なのか、ベストな方法を話し合ったんだ。でも減量したわけじゃない。食生活を変えていったんだ。どの試合でも快適にプレーできるように、自分の身体がいい反応をするようにとゴールを設定した」

 エンビードは2014年のドラフト全体3位でシクサーズから指名された後、足のケガのため2シーズンを棒に振るなど数々のケガに悩まされてきた。食生活を改善しようと決めたのは、20年にフロリダ州オーランドのバブル(隔離された施設)で開催されたプレーオフ1回戦で、ボストン・セルティックスに4連敗を喫したことがきっかけだったという。
 「俺たちはファーストラウンドで敗れた。スウィープされたんだ。バブルはいい経験ではなかった。いいシーズンでもなかった。俺はあの時めちゃくちゃがっかりしたんだ。オールNBAチームにも入れなかったしね。そこで俺は(トレーナーの)ドリュー・ハンレンや栄養士と話して、自分の身体とゲームを磨いていくことが必要だと痛感した。そのことが、自分の持つ才能を最大限に発揮する機会になったんだ」

 今季のエンビードはここまでリーグ3位の平均29.0点、10.8リバウンド、4.3アシスト、0.97スティール、1.44ブロックを記録。5年連続のオールスター選出に加え、初のMVPも狙えるポジションにいる。

「俺はいつも、MVPというのは別格のアウォードだと思ってきた。それはリーグで最強の男であることを意味する。今、リーグで最強なのはジョエル・エンビードだ」

 同じビッグマンで00年に同賞を受賞したレジェンドのシャックは、『NBA on TNT』の番組内でエンビードに最大級の賛辞を贈った。今後もケガなく支配的なプレーを続けて、シクサーズをイースタン・カンファレンス上位に導くことができれば、エンビードが悲願のMVPを手にする可能性はさらに高まるはずだ。

文●秋山裕之(フリーライター)
 

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