サンズの“陰のMVP”は10日間契約選手?大黒柱ポールが「心から感謝したい」と語る理由とは<DUNKSHOOT>

新型コロナにより離脱者続出も、10日間契約選手たちのおかげで何とか中断の危機は免れている。そんな“陰のヒーロー”たちにポールは感謝の言葉を述べた。(C)Getty Images
 昨年10月に幕を開けた2021-22シーズンだが、新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大によって、12月から選手たちやコーチングスタッフ、チームスタッフが続々と安全衛生プロトコル入り。12月だけで11試合が延期となったため、NBAと選手会は20日、同プロトコル入りによって欠場を余儀なくされた不足選手分をカバーすべく、代替選手と10日間契約を結んで一時的な補強をすることで合意した。

 各チームは、Gリーグでプレーする若手に加え、近年はNBAのコートから離れていたベテランまで、様々な選手と10日間契約を締結。12月27日(現地時間)を終えた時点で、今季最低1試合に出場したのは541選手に上り、これは1シーズンにおけるNBA史上最多の出場選手数となった(ちなみに1月6日終了時点でその数は609まで伸びている)。

 そのなかで、経験豊富なベテランたちがインパクトを残している。アイザイア・トーマス(現ダラス・マーベリックス)は、ロサンゼルス・レイカーズと10日間契約を結んだ初日にチームトップの19得点をマーク。アトランタ・ホークスとの10日間契約を満了したのち、4シーズンぶりに古巣インディアナ・ペイサーズへ復帰したランス・スティーブンソンも、5日のブルックリン・ネッツ戦で30得点と見事な活躍を披露した。
  10日間契約を結んだからといって、必ずしも出番が確保されているわけではない。その例が、先月27日にフェニックス・サンズと10日間契約を結んだエマニュエル・テリーだ。

 3シーズンぶりのNBA復帰を飾ったテリーだが、当日のメンフィス・グリズリーズ戦には出場せず、29日のオクラホマシティ・サンダー戦でコートに立ったものの、プレータイムはわずか1分22秒。オフェンシブ・リバウンド3本を含む4リバウンドを記録するも、3本のショットすべてをミスして無得点に終わっていた。

 さらに、31日に敵地TDガーデンで迎えたボストン・セルティックス戦では、ボストンのファンがテリーに向けて“one-day guy(たった1日のヤツだ)”とヤジを飛ばしていたと『Yahoo! Sports』のクリス・ヘインズ記者が報道。そして同記者によると、そこにクリス・ポールが立ちはだかったという。
  元NBA選手会会長で、キャリア17シーズン目の大ベテランは、ファンに向けて「この選手をリスペクトしてくれ。彼らのお陰で僕らのシーズンが続行できているんだから」と話していたとのこと。サンズはダリオ・シャリッチ、フランク・カミンスキーがケガで離脱していたことに加え、ディアンドレ・エイトン、ジャベール・マギーが同プロトコル入りのため離脱となり、ビッグマンがジェイレン・スミスのみとなっていた。

 そこでチームはテリー、その後ビズマック・ビオンボと10日間契約を結んでビッグマンを補強し、ここ5戦で4勝1敗を記録。シーズン成績で見てもリーグトップの30勝8敗(勝率78.9%)と、素晴らしい成績を残している。

 そして6日のロサンゼルス・クリッパーズ戦にも勝利し3連勝を飾ると、ポールは「10日間契約を結び、常に準備を怠らないすべての選手たちへ、僕は心の底から感謝したい。僕らが今シーズンを乗り切ることができているのは彼らのお陰だ。彼らなしにはできなかったかもしれない」と感謝していた。
  NBAチームのロースターは本契約15人、2WAY契約2人の計17人。そこに変更はないため、今後同プロトコルから解放されて契約選手たちが戻ってくれば、10日間契約の代替選手たちが今季終了までそのチームでプレーできる可能性は低いと言わざるを得ない。

 それでもポールが話していたように、一時的な補強とはいえ彼らが各チームのオファーに快諾し、契約当日に現地へ向かってチーム練習もなしにコートへ立ってプレーしてきたことが、シーズン中断という事態を回避することができている大きな要因なのは間違いない。

 たとえ1、2試合、5分前後のプレータイムであろうと、今季彼らがNBAという舞台でプレーしたことに変わりはないだけに、ポールのように彼らの献身を称えるべきだろう。

文●秋山裕之(フリーライター)

【PHOTO】NBA最強の選手は誰だ?識者8人が選んだ21世紀の「ベストプレーヤートップ10」を厳選ショットで紹介!

関連記事