ラッセル、ハーデン、ロビンソンにジノビリ…NBA“ベストレフティチーム”を選定!<DUNKSHOOT>

珍しい左利きプレーヤーだが、ラッセル(左)やロビンソン(右上)、ハーデン(右下)ら優秀な選手が揃っている。(C)Getty Images
今季NBAでプレーした558人のうち、左利きの選手は1割に満たない50人。リーグの歴史を振り返っても稀少性の高いサウスポープレーヤーだが、そんな彼らのなかでベストチームを組んだら、どのような顔ぶれが並ぶのか。『THE DIGEST』では、アメリカンスポーツに精通する識者に依頼し、NBAの“ベストレフティチーム”を選定してもらった。

【ポイントガード】
レニー・ウィルケンズ

1937年10月28日生。185cm・82kg
キャリアスタッツ:1077試合、平均16.5点、4.7リバウンド、6.7アシスト

ヘッドコーチとして史上最多の2487試合を指揮した名指導者のイメージが強いかもしれない。シャキール・オニール(元ロサンゼルス・レイカーズほか)も若手の頃に「あの人、NBAでプレーしたことあるの?」と言っていたくらいだ。

だが、選手としてもオールスターに9回選ばれ、現役時代の実績だけでも殿堂入りしている。非常に優秀なプレーメーカーで、兼任ヘッドコーチに任命された1969−70シーズンは平均9.1本でアシスト王、通算7211本は引退時点でオスカー・ロバートソン(元シンシナティ・ロイヤルズ/現サクラメント・キングスほか)に次ぐ2位にランク。バラク・オバマ元大統領の贔屓の選手だった縁から選挙運動にも協力し、オフィスにサイン入りボールが飾られていたこともあった。

他の左利き名ポイントガードでは、タイニー・アーチボルド(元キングスほか)が1972−73シーズンに平均34.0点、11.4点で史上初のダブルタイトルを獲得。この記録に、2016−17シーズンは得点1位、アシスト3位と限りなく近づいたラッセル・ウエストブルック(レイカーズ)も、右手でシュートを打つが利き手は左である。
【シューティングガード】
ジェームズ・ハーデン

1989年8月26日生。196cm・100kg
キャリアスタッツ:906試合、平均25.0点、5.6リバウンド、6.6アシスト

現役のレフティにはザイオン・ウィリアムソン(ニューオリンズ・ペリカンズ)やディアロン・フォックス(キングス)、ドマンタス・サボニス(インディアナ・ペイサーズ)ら期待の若手たちが多い。すでに確たる実績を積み重ねた選手ではマイク・コンリー(ユタ・ジャズ)らもいるが、No.1はハーデン(ブルックリン・ネッツ)だ。

「もし俺が右利きだったら、今の地位にはいないだろう。左利きのおかげで、1試合5~7点くらい余計に取れているんじゃないか」と言っているくらい、左利きにプライドを持っている。利き手の左右にかかわらず、独特のステップでドライブしてファウルを貰うのも、3ポイントを放つのも自由自在。2018年からは3シーズン連続で平均30点以上をあげ得点王に輝いたが、これはリーグ史上4人目の快挙だった。あとは左利きの有利さを、守備の際にも発揮してくれれば言うことなしだ。
【スモールフォワード】
ビリー・カニングハム

1943年6月3日生。198cm・95kg
キャリアスタッツ:654試合、平均20.8点、10.1リバウンド、4.0アシスト

1992年バルセロナ五輪に出場した“初代ドリームチーム”の一員であるクリス・マリン(元ゴールデンステイト・ウォリアーズほか)も捨てがたいが、NBA最高の75人に入っているカニングハムが、総合的な能力の高さで上回る。

身長198cmながら“カンガルー・キッド”と呼ばれた跳躍力を生かし、スモールフォワードだけでなくパワーフォワードとしてもプレー。キャリアイヤーの1969−70シーズンは平均26.1点、13.6リバウンドを記録した。絶頂期にあった1972年にライバルリーグのABAへ移籍、2年後にNBAへ戻ったがケガのため32歳で引退。1983年にはヘッドコーチとして古巣のフィラデルフィア・セブンティシクサーズを優勝に導いている。

スモールフォワードではラリー・バード(元ボストン・セルティックス)やレブロン・ジェームス(レイカーズ)も実生活では左利き。「マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)やペニー・ハーダウェイ(元オーランド・マジックほか)が右手でシュートしているのを見ていたから、自分もそうなった」とレブロンは述べている。バードは自分自身への挑戦として、ある試合で普段と違う左手だけでシュートすると決め、47得点を稼いだエピソードを持つ。
【パワーフォワード】
デイビッド・ロビンソン

1965年8月6日生。216cm・113kg
キャリアスタッツ:987試合、平均21.1点、10.6リバウンド、2.5アシスト

パワーフォワードを本職とする左利きのなかには、クリス・ボッシュ(元トロント・ラプターズほか)のような名選手もいる。それでもなお、ロビンソンほどのスターをベスト5からは外せないのでセンターから回した。

当時のビッグマンとしては並外れて身体能力が高く、216cmの長身ながらガード並みのスピードでコートを疾走。シュートレンジも広く、守備でもリバウンドにブロックにと暴れ回った。1987年にドラフト全体1位でサンアントニオ・スパーズに指名され、2年間の海軍生活を経てプロ入りすると新人王を受賞。1994年は最終戦で71得点を荒稼ぎし、シャックを逆転して得点王に輝いた。

左利きの得点王はアーチボルド以来史上2人目で、その後もハーデンがいるのみ。通算得点もハーデンに抜かれるまで、左利きではトップだった。「どんな父親でも娘の結婚相手に望む男」とアルビン・ジェントリー(キングスHC)が語ったほど、品行方正を絵に描いたような人物だった半面、闘争心が薄いと非難を浴びたこともある。
【センター】
ビル・ラッセル

1934年2月12日生。208cm・98kg
キャリアスタッツ:963試合、平均15.1点、22.5リバウンド、4.3アシスト

バスケットボールにおいて左利きは、野球ほど明確なアドバンテージもなければ、ゴルフほど不利益を被ることもない。左右どちらの手でシュートを打とうが、リングの位置は変わらないからだ。

ただし守備においては、右利きのシューターに対しては利き手が左のほうが守りやすい。左利きの好選手がセンターに多いのもそれが理由かもしれず、ロビンソン以外にもウィリス・リード(元ニューヨーク・ニックス)、アーティス・ギルモア(元ブルズほか)、ボブ・ラニアー(元デトロイト・ピストンズほか)らの名が挙がる。

なかでも頂点に君臨するのが、史上最強のディフェンダーであるラッセル。攻撃面の数字が平凡であるため、ライバルのウィルト・チェンバレン(元ウォリアーズほか)より格下に思われることもあるが、周囲の選手を生かす能力ではるかに優っていたのは、セルティックスを空前絶後の8連覇に導いたことで証明されている。もともとは右利きで、「野球をするには左腕が有利」とおじから勧められて左手を使うようになり、結果的にバスケットボールで役に立った。
【シックスマン】
マヌ・ジノビリ

1977年7月28日生。198cm・93kg
キャリアスタッツ:1057試合、平均13.3点、3.5リバウンド、3.8アシスト

“史上最高のシックスマン”として名前を挙げられることも多いジノビリが、当然左利き最高のシックスマンとなる。左利きの利点については「バスケットじゃ特別アドバンテージでもない。ディフェンスは多少守り慣れていないかもしれないけど、ユニークな動きができるわけでもないし」と語っていたが、本人のムーブはユニークすぎて誰にも真似できなかった。

その芸術的かつ創造的な動きは“芸術を司る右脳が左手と結びついているからではないか”との考察も巡らされたほど。アルゼンチン出身、イタリアで腕を磨き、ドラフトでは57位の下位指名だったものの、2002−03シーズンにスパーズへ入団すると3年目にオールスター出場。先発でも控えでも、ベンチが求める仕事は何でもこなせる得がたい存在で、自己ベストの平均19.8点をマークした2008年にシックスマン賞を受賞した。

そのほかブルズ後期3連覇時のメンバーで、1996年のシックスマン賞受賞者であるトニー・クーコッチも左利きだった。

文●出野哲也

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