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「矛盾がある」ヒート指揮官がNBAの安全衛生プロトコルに苦言「無症状の選手が離脱するのが分からない」<DUNKSHOOT>

ヒートは複数の主力をケガで欠き、安全衛生プロトコルでさらに戦力を失った。スポールストラHCが不満を漏らすのも無理はないだろう。(C)Getty Images
 新型コロナウイルスのパンデミック中に開幕した昨季、NBAでは多くの選手たちが安全衛生プロトコル入りとなり、複数チームの試合が延期となるも、全30チームが72試合のレギュラーシーズンを戦い切った。

 今季はワクチン接種が浸透も影響し、通常通りの82試合でスケジュールが組まれている。だが、フィラデルフィア・セブンティシクサーズは主力のジョエル・エンビードとトバイアス・ハリスが同プロトコル入りのため戦線離脱するなど、戦力ダウンを余儀なくされた。

 そして、現地時間12月13日、NBAはとうとう今季初の試合延期を発表した。シカゴ・ブルズはパトリック・ウィリアムズを左手首のケガで欠いていたが、デマー・デローザンやザック・ラビーンを含む計10選手がプロトコル入りしたため、リーグ規定の最低出場可能選手数(8人)を揃えられず、14日のデトロイト・ピストンズ戦、16日のトロント・ラプターズ戦が延期となった。

 選手たちがこのプロトコル入りしてしまうと、10日間の隔離または24時間以内にPCR検査で2度の陰性反応が出るまで復帰できないだけに、擬陽性でもない限り、数試合の欠場は避けられない。

 エリック・スポールストラ・ヘッドコーチ(HC)が指揮を執るマイアミ・ヒートも、このプロトコル入りで急遽戦力ダウンとなったチームのひとつだ。
  彼らはバム・アデバヨ(右手親指)、ジミー・バトラー(尾てい骨)、マーキーフ・モリス(首)をケガで欠きながら、8日のミルウォーキー・バックス戦を113-104で勝利。続く11日のブルズ戦も118-92で勝利を飾った。

 しかしバックス戦で3ポイント6本を含む28得点に8リバウンド、3アシスト、2ブロックと爆発したケイレブ・マーティンが同プロトコル入りのためブルズ戦は欠場を余儀なくされたのだ。

「我々は今、この状況を理解しないといけない。選手たちは(新型コロナの)いくつかの症状によって数試合を欠場するのか? それとも彼らは無症状なのか? どうしてフル(風邪)の症状よりも長く離脱しなければならないのか?」

 スポールストラHCは、12日に地元メディア『The South Florida Sun-Sentinel』にこう語っており、「そこには矛盾があると私は見ている。もし狩りに行きたいなら、もっと検査をして(離脱しなければいけない)要因を見つけ出さないといけない。これからは多分そうなっていくだろう」と論じた。
  戦力ダウンに陥っているヒートにとって、マーティンは予想以上の活躍を披露していただけに、指揮官も辛い胸の内を明かしている。

「彼は苛立っていた。プロアスリートとしてキャリアでベストゲームをした直後だったからね。彼はプレーする準備もできていたし、プレーできると思っていた。彼の気持ちは理解できる」

 とはいえ、NBAとしても一昨季のようにシーズンを中断し、バブル(隔離された施設)で限られたチームだけを集めて試合を開催することは避けたいところだろう。

 ワクチン接種によって、新型コロナに感染しても重症化を避けられるようになったとはいえ、もしチーム全体で集団感染してしまえば試合どころか練習もできず、相手チームにも影響が出てしまう。
 「ただ、(現状では)無症状の選手たちは欠場している。2週間なり10日間なり、彼らが離脱することが正解なのか、私には分からない」というスポールストラHCの意見が、リーグの関係者たちの気持ちを代弁していると言えよう。

 先日のレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)のように、2度のPCR検査で擬陽性と発覚して1試合の欠場だけで復帰できたケースもあることから、同プロトコル入りで隔離となった選手たちにも、彼らの状態を確認しながらPCR検査を積極的に受けてもらうことで、選手の欠場試合数を減らすことはできるかもしれない。

 隔離によって選手たちは普段の生活を奪われ、トレーニングするにも制限があることから、今後リーグとチーム、選手たちにとってベストな解決策を見出してほしいところだ。

文●秋山裕之(フリーライター)
 

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