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大谷翔平(写真:AP/アフロ)

大谷翔平、田中将大らが選んだ“PRP療法”とは?専門家に聞いた、プロ野球で進む「手術」から「再生医療」への新潮流

大谷は再生医療を試した後に手術を選択

大谷翔平,野球

野球,ロサンゼルス・エンゼルス,大谷翔平(Photo by Diamond Images / Getty Images)

さらに記憶に新しいのが、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平だ。メジャー移籍1年目の2018年6月に、田中と同じく右肘に靱帯損傷が見つかり、PRP注射で経過を見守り野手として復帰を果たした。また、2021年に現役を引退した斎藤佑樹も、2020年に右肘の内側側副靱帯を断裂した際にこの治療法を実施している。 大谷のケースでは、2018年9月に再び右肘の靭帯損傷が発覚。今度はトミー・ジョン手術を実施しており、この時は投手としての復帰が2020年夏までずれ込んだ。さらに、今季も2023年8月に右肘を再び痛めて手術(術式は非公開)を行ったため、「投手・大谷」の復帰は2025年のシーズンからとなる。 大谷の怪我に対する対応方針を見ると、「できるかぎり手術を避けるためにPRP療法を試す。それでも回復が見込めない場合には思い切って手術に踏み切る」という思考が見てとれる。 限られた競技人生の中で、どのタイミングでどの治療を施すかは、アスリートにとって選手生命に関わる一大事だ。身体への負担が少なく、復帰への時間も短縮できる可能性を持つPRP療法をまず試し、それでもダメなら手術を決断する、という考え方がさらに浸透していく可能性は十分にあるといえる。

再生医療事業のリーディングカンパニーに聞く PRP療法がどのように世間に浸透し始めたのか?

PRP療法の選択のハードルの一つとなるのが、費用の問題だ。一般に、PRPの設備投資には数千万円単位のコストがかかり、自由診療でもあるため、患者側にとっても治療費の問題はネックになる。大谷レベルのトップアスリートであれば話は別だが、資金が豊富でないマイナー競技チームやアマチュアの団体であれば、PRP療法の選択にはより慎重な判断が求められることになる。 そこでPRP療法のより広範な普及を後押ししたのが、セルソース社が提供する加工受託サービス「PFC-FD™️※」だ。全国各地の病院と提携し、変形性膝関節症をはじめとした関節疾患の治療法としても用いられている。PFC-FD™️は、成長因子の濃度を高め、フリーズドライ加工を行っており、常温での保存が可能というメリットがある。同社の前期売上4,273百万円のうち加工受託サービスが65%を占め、年間およそ2万件以上の加工受託を通じて国民の生活をサポートしてきた。 ※PFC-FD™️はセルソース株式会社の保有する商標です。

セルソース 細田薫

PRP療法を選択するアスリートについてセルソース社の経営企画本部長である細田薫さんは「“手術を回避したい”という選手の強い想いが表れているのではないか。PRPは手術前にできることの最大値であって、もしPRPをやってみてもだめだったら、思い切って手術に進むことができる。そういう選択肢が生まれたという意味でもPRPの果たす役割は大きい」とコメント

サッカー、バスケ、陸上、水泳にも広がる

神野大地

陸上の神野大地(セルソース所属)も、いざという時のために医療機関でPFC-FD™を作製・保存している

同社は複数のプロスポーツクラブとメディカルパートナー契約を結び、現時点でその数は14クラブに及ぶ。セレッソ大阪やコンサドーレ札幌、ガンバ大阪といったサッカーのJリーグクラブを中心に、バスケットボール・B.LEAGUEの茨城ロボッツや、陸上の青山学院大学などもサポートすることで、再生医療の普及に努めている。

セルソース社 再生医療センター

青山学院大時代に“山の神”として名を馳せた陸上の神野大地は、プロ転向後にセルソースと所属契約を結び、競泳の立石諒も2022年1月に所属選手として5年ぶりに現役復帰を果たした。PFC-FD™は、いつ訪れるか分からないアクシデントに対しての“お守り”の役割も担う。実際に使用した選手や関係者からの声はセルソース社公式noteや各メディアを通して発信されており、治療の認知度と信頼性を高めることにつながっている。

引退後のセカンドキャリアを見据えた選択肢とは

セルソース社でスポーツ担当としてPRP療法の普及を推進する後藤沙貴さんは、「スポーツをフックにして、PRP療法を広めたい」と話す。「我々の治療が1秒でも現役生活を長くするための一助となり、誰もが治療の選択肢として選べるような世の中になればいい。そして、アスリートにとどまらず、できるだけ多くの人に認知していただき、”この選択肢があって良かった”と言ってもらえる環境作りができたらいいと思います。」

セルソース社 経営企画部 後藤沙貴さん

また、経営企画本部長の細田さんは選手引退後のサポートについても言及する。「スポーツ選手は現役生活を終えた後のセカンドキャリアの方が長い。現役生活ですべてを使い切ってしまった場合、はたして人生全体で見た時にどうなのか。出来るだけ健康な状態で引退を迎えていただけるよう、サポートしている」。さらに再生医療にかかるコストについても「費用面の問題はありますが、それに見合った価値があると信じている。ひとつの当たり前の選択肢になる。それがメジャースポーツであれ、マイナースポーツであれ、みなさんの第一想起にある状態を早く実現したい」と業界のトップランナーとして再生医療のさらなる普及を進める意向を明らかにした。

セルソース社 (左)後藤沙貴さん、(右)細田薫さん

アスリートを救う“新たな選択肢”

スポーツ競技者としての限られた人生のなかで重要なウェイトを占める怪我との戦い。より良い状態を維持して、アスリートとして結果を残し活躍し続けるために、治療やメンテナンスの選択肢が広がることはスポーツ選手にとってはメリットになる。そして、大きな影響力を持つスポーツ選手がPRP療法を選択することで、我々の生活にもこの治療法が伝えられ、より身近な形で浸透することにもつながる。アスリートを救う“新たな選択肢”として広がりを見せるPRP療法の今後の行方には引き続き注目が集まる。 関連特集:特別連載ATHLETE INTERVIEW(CellSource × SmartSportsNews) 取材協力:セルソース株式会社

セルソース株式会社 公式HP公式note

企画:Smart Sports News インタビュー:井本佳孝 撮影:竹田 武史

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