「試合勘」について考える|頭で勝つ!卓球戦術

卓球ライター若槻軸足がお送りする「頭で勝つ!卓球戦術」今回は、「試合勘について考える」ということをテーマにお話していきたいと思う。

今回は「試合勘」という言葉を取り上げたい。これは卓球以外のスポーツ競技にも用いられる言葉であり、経験や直感、状況判断能力などを駆使して相手を制するための力のことである。

これは単なるテクニックや体力だけでなく、心理的な要素も大いに重要な役割を果たす。「久しぶりの試合で試合勘を取り戻せず負けてしまった」「彼は類まれなる試合勘を持つ選手だ」などというように用いられる。

丹羽孝希(ケアリッツ・アンド・パートナーズ)
写真:丹羽孝希(スヴェンソンホールディングス)/撮影:ラリーズ編集部

「勘」という言葉からも分かるように、これは非常に抽象的でつかみどころのないものである。と同時に勝利を得るためには必要不可欠な能力であるとも言える。

今回はそんな試合勘というものについて少し考えてみる。

試合勘の重要性について

試合勘は勝利のための条件として非常に重要な要素である。テクニックやフィジカルで相手を圧倒できる実力差があれば話は別だが、ある程度近い実力の者同士であれば、試合勘に長けた方が勝つといってよいだろう。

たとえば日頃からフットワーク練習に勤しみ、足を使った攻めなら誰にも負けないという選手もいるだろう。あるいは非常にサーブが得意で、ありとあらゆる種類のサーブを駆使できる選手もいるだろう。

写真:吉村真晴(TEAM MAHARU)/撮影:ラリーズ編集部
写真:吉村真晴(TEAM MAHARU)/撮影:ラリーズ編集部

ただそれらの要素が「試合に勝つ」とは直接的に結びつかないこともまた事実である。試合勘を磨くためには、数多くの試合をこなして経験を積んでいくほかない。

卓球の試合勘がどういったものか

試合の終盤で勘が働いてばっちりとハマる、という経験をしたことはないだろうか。なんとなくバックにロングサーブが来そうな雰囲気を感じ取って、回り込みをしたらまさにその通りのサーブが来て、打ち抜いてレシーブエース、といったことだ。

「予測」や「読み」といった言葉も使われるが、試合全体を通してより大きな視点で捉えたときに試合勘という表現ができる。

写真:早田ひな(日本生命)/撮影:ラリーズ編集部
写真:早田ひな(日本生命)/撮影:ラリーズ編集部

たとえば緊張した場面でどのサーブを選択するか、ということは言わずもがな非常に重要である。これまでの効いていたサーブを出すのか、あるいは少し変化を加えるのか、はたまた今までに一本も出していなかったサーブを使うのか、といった具合だ。

当然レシーブの場面でも、様々な選択肢の中からその瞬間ごとに判断と選択をしなければならない。ストップで安全にいくのか、フリックで攻めにいくのか、はたまたツッツキを送って打たせる展開にするのか。

ラリーの中でもリスクを負って攻めるべきか、安定性を重視するべきか、といったことは試合の終盤になればなるほど大切になってくる。

あるいはあえて打たない、という選択も時として非常に効果的である。強く打つ方が良いとされがちだが、ときにはその強く打つことが「逃げ」のような場面もある。あえて打たない。我慢をして入れる。

それも非常に勇気がいることだ。「強気で入れにいく」こういったことも試合勘と呼ばれる能力で重要な役割をはたすことがあるわけだ。

写真: 張本智和(IMG)/撮影:ラリーズ編集部
写真: 張本智和(智和企画)/撮影:ラリーズ編集部

関連記事