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世界を旅する野球写真家が、ファインダー越しに見た中米野球の風景

野球は日本の人気スポーツの1つであるが、海外で野球を観戦した経験がある人はそう多くはないと察する。その中でアジア、中米、そして北米と野球を目的に旅した1人の日本人がいる。それが野球写真家・若杉雅也氏だ。(※少年を抱いているのが若杉氏)

これまで8ヶ国、110にも及ぶ球場に足を運び、写真を撮影してきた。選手はもちろんのこと、現地の人々との交流の中で“世界中の野球を愛する人の姿”を写したその写真で野球の魅力を伝えている。

今年7月には北海道日本ハムファイターズの主催試合が行われている札幌ドーム内で「世界の野球展」を開き、8月には同写真展を東京でも開催した。

世界を野球という切り口で旅をしてきた若杉氏。今回は中米の旅の様子から世界の野球の魅力に迫っていく。

世界の野球との接点はカナダから

どこにでもいる野球少年だった若杉氏は長崎出身。高校までで野球には一旦区切りをつけ、卒業後は山口大学に進学した。

就活では船井総研を志望するも内定は出ず。他の選択肢にピンと来ないまま、いつしか頑張って働くことに対しての疑問を持つようになっていた中で休学し、ワーキングホリデーでカナダに行くことを決断する。

カナダ、イギリス、オーストラリアという選択肢の中から、単純に北米は野球が盛んだろうという理由からカナダを選んだ。ただ、あくまでこの時点では野球が主たる目的ではなかった。
しかし、知り合い経由でカナダのマイナーリーグで働く日本人を紹介してもらうことに成功し、その人の家に泊まらせてもらいながら、チームでインターンもさせてもらうことになった。

「プレーのレベルや球場の規模は日本の独立リーグ程度。でも観客は圧倒的にこちらの方がいて、多い時で5,000人程度は入りますし、年に4回はチケットが完売になります。
衝撃的だったのが、観客に話を聞いても誰一人選手の情報を知らなかったことでした。でも実際試合を観てみると選手を知らなくても確かに面白いんです」

カナダのマイナーリーグについて、若杉氏はこう語る。

日本の独立リーグやプロ野球の二軍戦でもなかなか5,000人は入らない。一体カナダのマイナーリーグに観戦に来る人はどういった要因で集まってくるのか。

「試合前にスタッフにはその日球場で行われる催し物が書かれたタイムスケジュールが配られます。お客さんも試合というより、催し物を含めた“その日”を楽しみに来ているのでしょうね。」
純粋な野球という競技だけを観に来ているのではなく、それに紐づく様々なイベントを魅力に感じて足を運ぶ人が多いということだ。

「野球を全く知らない人をカナダのマイナーリーグと日本のプロ野球、両方連れていってどちらが楽しかったか聞いたら、おそらく前者と答えると思います。」

若杉さん曰く、そのチームの球団社長はお客さんが映画館か、野球場か、迷った時に選んでもらえるように、と考えていたそうだ。日本も娯楽が溢れ、スポーツの競合はもはや他の競技だけではなく、レジャーなどの分野も含まれてくる中で参考にすべき考え方と言えるだろう。

同じアジアでも全く違う野球の文化に触れる

カナダで野球の面白さを再確認した若杉氏だったが、野球のシーズンが終わると現地の人との接点も薄れていってしまう。同時に自身の英語力の限界も感じ、フィリピンへ語学留学に行くことに決めた。
フィリピンは物価も安く、学費や宿泊費を含めてかかる費用は月に10万円程度しかかからない。しかし資金も無限ではないため底をつき始め、若杉氏は日本への一時帰国を決意する。海外に出てから1年弱が経過していた。
そのとき、思いつきで日本に帰る前に台湾へ立ち寄ることにした。現地はちょうど台湾シリーズが開催されている時期だった。

「日本だと高校野球なら内野アルプススタンド、プロ野球なら外野席と、球場の一部が応援の中心になるじゃないですか。でも台湾は内外野関係なく、全体が応援席という感じです。その応援がすごかったです。あとはアジアシリーズで日本vs韓国が行われるとなぜか台湾人は日本を応援するんです。おそらく政治的な事情も含めた感情が働いているのでしょう」
この時初めて日本と同じアジアでも野球文化に大きな違いがあることを知り、若杉氏は世界の野球を周る旅に出ることを決意する。

日本に帰国後、親の反対を押し切り、世界の野球を周る旅の準備を開始した。
資金は英語の家庭教師と歌舞伎町でホストをして稼いだ。半年かけて90万円を確保し、貴重な旅の様子を残すためのカメラも調達した。ここで“野球写真家・若杉雅也”が誕生することになる。

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