スポーツウエア『アリーナ_ビーチサイドライフスタイル』

スウェットパンツやジャージというと、昔だったら部活の練習着のイメージ。確かに動きやすく機能的なウエアである反面、おしゃれに見えるかといったら…だった。だからジャージとかを普段着にするのは、運動部ならではのずぼらさの現れといった感じに見られたもの。

ところが時は流れ、スポーツウエアはスポーツをするときだけに着るものではなくなった。そして普段着にスポーツウエアを上手に取り入れるのは、おしゃれ番長が見せるエッジの効いた着こなしではなく、あたりまえのスタイルになった感がある。

今の季節ならショーツがいい例だ。質感は海パンさながらのショーツが街着として定着している。もちろんそのまま海にも入れるクオリティだが、陸ではくことがほとんど。だが、そこになんの違和感もない。加えてはき心地は快適で、撥水性などを備えていることも多いので、短パンとしても申し分がない。

今回紹介するのは、スイムウエアを代表するブランドであるアリーナが発表したライフスタイルウエア『ビーチサイドライフスタイル』。タウンユースにも、トレーニングをするときにも着られるボーダーレスなウエアだ。

そもそもアリーナというブランドは、フランスで誕生した本格派スイムウエアとして知られる。日本を代表するスイマーである、瀬戸大也や入江陵介などもアリーナのスイムウエアで世界と戦っている。2017年、水泳の世界選手権で、アリーナはレース出場者の着用率、着用者のメダル獲得数ともにNo.1という実績を残した。こうしたデータからも、このブランドの高い信頼度がうかがわれる。

そんな水泳界のリーディングブランドが、あえてプールから離れて着ることまでイメージして作った『ビーチサイドライフスタイル』とは、いったいどんなウエアなのか? 商品のデザイナーである、デサントジャパンの区宝珊さんに話を聞いてみた。

スポーツウエアというよりレディスファッションのデザイナーを思わせるような、チャーミングなスタイルで、区さんは私たちの前に現れた。2012年に入社して以来、競技用からフィットネス向けまで、アリーナのスイムウエアを担当してきた。スポーツは好きだったが、特に水泳と縁があったわけではなかったという。

『ビーチサイドライフスタイル』をデザインするにあたり求められたのは、アリーナがもつ正統派スポーツブランドならではのイメージや爽やかさは残しながら、ちょっとストリート風のカジュアル感やワイルドさをプラスしてほしいというもの。

「今まで手がけたことのないイメージでしたから、新しい挑戦として魅力がありましたね」。区さんは振り返る。かつてファッションの専門学校にも通っていたという彼女にとって、このプロジェクトはやりがいのあるものになったという。

正統派のスポーツブランドらしさと、ストリート感があってちょっとワイルドなタウンウエアの要素の融合。言葉にするのは容易だが、このふたつの性格の異なるもち味をミックスさせるためには、難しいさじ加減が必要となった。区さんは言う、「これまでアリーナで作ってきたものはスポーツが8割、ファッションが2割といったイメージでした。今回はスポーツ3割、ファッション7割の感覚ですね」。

そのため『ビーチサイドライフスタイル』には、リアルなスポーツウエアではあまり見られない特徴が見受けられる。たとえば機能性が重視されるスポーツウエアなら、伸縮性のある素材でフィット感のあるシルエットが求められるものだが、ラインナップには、あえてゆったりとしたシルエットで作られたアイテムが目につく。これはファッションのトレンドであるビッグシルエットを意識したものだ。

上のように、独自の小ぶりなボックスロゴを採用して、スポーツウエアにありがちなロゴドン!のアピールは避けて、ロゴの主張を控えめにしている。またスイマーの顔映りまで考えて、パキっとしたカラーを重視するのが、アリーナのスイムウエアだが、『ビーチサイドライフスタイル』のショーツは、スイムウエアらしい爽やかさは残しながら、ワントーン落としたこなれたカラーが選ばれている。

一方でストレスのない快適な着心地という部分では、本格派スイムウエアらしさをしっかりと継承している。撥水性や吸汗速乾性といった機能には、トップスイマーも納得するアリーナクオリティが保たれている。また縫製などの細部にもスポーツウエアさながらのこだわりが取り入れられている。

たとえば体にフィットするスイムウエアでは、縫い目のわずかな凹凸すらパフォーマンスや肌ざわりに大きく影響する。そのためフラットシーマと呼ばれる、縫いしろをつぶして裏側が膨らまず、フラットに保たれる縫製が用いられることが多い。このスイムウエアに用いられるノウハウを、『ビーチサイドライフスタイル』のウエアにも上のように応用した。

またTシャツなどの襟ぐりの内側にテープが縫いつけられた、上左のタコバインダー仕様は、襟元が伸びるのを防ぎ、心地いい肌ざわりを生み出す。さらにショーツのウエストのゴムは、生地で上からおおうのではなく、上右のように内側に貼りつけたような形状になっていてフィット感を高めている。

こうした工夫は、アリーナがスイムウエアで求めてきた、スポーツウエアならではの抜群な着心地や肌ざわりを、そのまま『ビーチサイドライフスタイル』でも生かしたいと考えているからだ。だから身に着けることで、リラックスできるウエアに仕上がっている。

「この『ビーチサイドライフスタイル』は街で着ることを重視して作りました。けれどそのまま海に行っても大丈夫なウエアです」。区さんは最後にこのようにまとめてくれた。それはサーフブランドとも、メジャースポーツブランドとも違う。海や水辺をイメージしながら、スポーツマインドも息づいた、まったく新しいライフスタイルウエアの登場を意味しているのかもしれない。

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