
このシリーズを読んでいるあなたは、おそらくジョーダンが好きだった。いや、好きというよりも「熱狂していた」という方が正確かもしれない。BSで録画した試合を何度も見返して、Air Jordanを履きたくて、「バスケの神様」という言葉を疑ったことすらなかった——そんな時代があったはずだ。
では、あなたはなぜNBAを見なくなったのか。
vol.1からvol.19まで、このシリーズではNBAのあらゆる角度を紹介してきた。最後となるこの記事では、「ジョーダンで止まっているあなたが、現代NBAに再びハマるポイント」を総括としてお伝えしたい。
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コアファン編集部員に聞くNBA講座
ジョーダンで止まっているあなたへ
1998年6月、ジョーダンはユタ・ジャズとのNBA FINALSで「THE LAST SHOT」と呼ばれる伝説のシュートを決め、2度目の3連覇を達成した。そして同年1月、2度目の引退を表明する。 相棒のスコッティ・ピッペンはヒューストン・ロケッツへ移籍し、6度の優勝を支えたヘッドコーチのフィル・ジャクソンも退任。デニス・ロッドマンも去った。前年62勝を誇った王者ブルズは、翌シーズンたった13勝しか挙げられないチームへと、まるで別のチームに様変わりした。
さらに追い討ちをかけたのが、ロックアウトだ。オーナーと選手の報酬をめぐる対立が長期化し、1998-99シーズンは開幕が翌1999年2月までずれ込み、試合数も通常82試合から50試合に短縮、オールスターも中止となった。その影響は数字にも如実に表れた。1997-98年のNBA FINALSは平均視聴者数2,904万人を記録していたが、ジョーダン引退後の1999-2000シーズンはレギュラーシーズンの視聴者数が約210万人まで落ち込んだ。ジョーダンがいた頃の3分の2以上が、一気に消えた計算だ。
ジョーダンが去り、王朝が崩れ、リーグまで揉めた。これだけのことが一気に重なれば、NBAから離れるのは当然だったかもしれない。それは、あなたのせいではない。1人の選手がリーグ全体の象徴だったとき、その選手がいなくなれば、見る理由を失っても不思議ではない。ジョーダンという絶対的な存在がいたからこそ、熱狂できた。その熱狂の大きさが、止まってしまった理由でもある。ただ、あれから約30年が経った。
THE LAST SHOT 🔥
On this day in 1998, Michael Jordan drilled the game-winning shot over Bryon Russell to clinch Chicago's second three-peat of the decade 🏆🏆🏆
(via @NBAHistory) | #NBAFinals pic.twitter.com/jPM9oiBT2n
— Ball Don’t Lie (@Balldontlie) June 14, 2024
ジョーダンの「THE LAST SHOT」から約30年も経過している
実は、あの頃の「続き」がそこにある
「あの頃のNBAはもう終わった」と思っているなら、少しだけ待ってほしい。
ジョーダンの時代を知っているあなたなら、1997年のNBA FINALSで「ジョーダンからパスを受けて決勝点を決めた選手」を覚えているだろうか。スティーブ・カーだ。控えのシューターで目立つタイプではなかったが、あの場面でジョーダンがパスを選んだ相手がカーだった。そのスティーブ・カーは現在、ゴールデンステイト・ウォリアーズのヘッドコーチとして2015年・2017年・2018年・2022年と4度のNBA優勝を果たし、選手とコーチを合わせて9度のリングを手にした、現代NBAを代表する名将になっている。
そして、ジョーダンが最も手を焼いたライバルの1人、インディアナ・ペイサーズのレジー・ミラーはどうか。あの毒舌と勝負強さで何度もジョーダンとブルズを苦しめた男は、2005年に引退後、長年TNTでNBA解説者として活躍してきた。さらに2025年からはNBCに移籍し、NBAの中継が新時代に移行した今もなお、現代NBAの「声」として画面に登場し続けている。
カーもミラーも、あの頃のNBAを知っているあなたにとって確かに「知っている顔」だ。そして彼らは今も、現代NBAの真ん中にいる。
あの頃のNBAは終わっていない。形を変えて、続いているのだ。
ジョーダンの時代に熱狂していたあなたが現代NBAを見るとき、そこには「懐かしい名前」と「知らない選手」が混在している。その懐かしい名前を入口にすれば、現代NBAへの扉は思っているよりずっと近い。カーがコートサイドで指示を出す姿を見ながら、あの1997年のFINALSを思い出す。ミラーが解説するペイサーズの試合を見ながら、あの因縁のライバル関係を思い出す。そういう楽しみ方が、今のNBAにはある。
"You did push off Michael on that one play though." 😂
President Barack Obama joined Reggie Miller to talk Bulls/Pacers battles in the 90s. pic.twitter.com/d8SRhnB8wZ
— NBA (@NBA) February 16, 2026
NBCでアナリストとして活躍する、ジョーダンの永遠のライバルであるレジー・ミラー。オバマ元大統領にインタビューする姿
でも、現代NBAは別物として楽しめる
ジョーダンの時代のNBAといえば、何よりもダンクだった。長い滞空時間、信じられない体の使い方、そして圧倒的な個人技。それがNBAの花形だった。しかし現代NBAは、あの頃とはまるでゲームが変わっている。変わった理由を一言で言うなら、スリーポイントだ。1979年にNBAにスリーポイントラインが導入された当時、チームの1試合平均スリーポイント試投数はわずか2.8本だった。あの頃は「スリーポイントなんてギャンブルショットだ」という空気すら漂っていた。しかし2004-05シーズンには1試合平均15.8本まで増え、そして現在は35本を超えるまでに膨らんでいる。この変革を決定的なものにしたのが、ステフェン・カリーの存在だ。2016年のシーズン、カリーは1シーズンで402本のスリーポイントを成功させる当時の史上最多記録を樹立し、その後の4年間でNBAのスリーポイント試投数は41%跳ね上がった。
「ジョーダンのようなスコアラーがいなくなった」と思っているかもしれない。ただ、現代NBAはむしろ逆で、スコアリングの方法が多様化した時代でもある。ジョーダンの代名詞だったミッドレンジのフェイダウェイは、現代のデータ分析では「非効率なショット」と見なされる一方で、ドンチッチのような選手は1試合60得点・20リバウンド・10アシストというNBA史上初の記録を叩き出す。ヨキッチはセンターでありながらトリプルダブルを量産する。現代NBAは、ジョーダンの時代とは「別のゲーム」として楽しめる時代なのだ。そして、日本人ファンにとって現代NBAにはもう1つの大きな楽しみがある。日本人選手が戦っていることだ。田臥勇太が2004年にNBA初出場を果たしてから20年以上が経った今、河村勇輝は2024-25シーズンにメンフィス・グリズリーズで22試合に出場し、2025-26シーズンはシカゴ・ブルズと2way契約を結んでNBAでの2年目を迎えた。身長167cmという世界最高峰のリーグで最も小さい選手が、コート上で存在感を放つ姿は、日本人が世界と戦う最前線そのものだ。
ジョーダンの時代のNBAが好きだったなら、現代NBAも必ずハマるポイントがある。 ただし、同じものを求めて見るのではなく、「別のゲーム」として入ってみてほしい。そのきっかけさえあれば、扉は思っているよりずっと近い。
Coincidence or Destiny?
Steph Curry hit his 4,000th career three-pointer this season, and an interesting trend emerges every time he reaches a new milestone.
🔸 1,000 3PM in 2014 – Won the title
🔸 2,000 3PM in 2017 – Won the title
🔸 3,000 3PM in 2021 – Won the titleNow,… pic.twitter.com/kuxGZc3Eom
— ClutchPoints (@ClutchPoints) March 14, 2025
NBAの戦術を大きく変えたステフェン・カリーの数々の記録
まずは1試合、見てみてください
vol.1からここまで読んでくれたあなたに、最後に伝えたいことがある。このシリーズを通じて、NBAの歴史、お金の仕組み、ドラフト、日本人選手、ジョーダンの伝説、そして現代NBAのスーパースターたちについて紹介してきた。「知らなかった」という話も多かったかもしれないし、「そういえばそうだったな」と懐かしくなった話もあったかもしれない。ただ、これだけは言える。NBAはどこから入っても楽しい。ジョーダン時代の続きを見たければ、スティーブ・カーがコートサイドで戦術を指示するウォリアーズの試合を見ればいい。因縁の宿敵レジー・ミラーの声を聞きたければ、今シーズンからNBCで彼が解説する試合をつければいい。スリーポイント革命という「新しいゲーム」を楽しみたければ、カリーが放つ超長距離シュートに目を疑えばいい。日本人が世界最高峰のリーグで戦う姿を見たければ、河村勇輝のプレーをチェックすればいい。どこから入ってもいい。あなたの「入口」は必ずある。
そして、かつてBSで試合を録画して何度も見返していた時代とは違い、今のNBAは月額600円のAmazonプライム会員になるだけで、注目試合を60試合以上リアルタイムで見られる時代だ。全試合見たければNBAリーグパスを追加すれば全1,230試合がカバーされる。かつてNHK-BSの放送を心待ちにしていた世代からすれば、夢のような環境だ。
最後に、このシリーズを締めくくる言葉として。
ジョーダンが「バスケの神様」と呼ばれたのは、あの時代があったからだ。あの時代に熱狂できたのは、あなたがそこにいたからだ。それはどんなに時間が経っても変わらないし、その記憶はNBAを見るたびに必ず蘇ってくる。
ジョーダンの時代は終わっていない。あなたの中にある。
だからこそ、もう一度だけ見てみてほしい。きっと、また好きになる。
本シリーズ特集ページ:
コアファン編集部員に聞くNBA講座
The 2025-26 NBA season tips off next week! Check out where to watch all the action this season ⬇️
Season-long national games:
▪️ Mon: Peacock
▪️ Tue: NBC/Peacock
▪️ Wed: ESPN
▪️ Fri: Prime VideoAdditional weekly national games starting midseason:
▪️ Thu: Prime Video
▪️ Sat:… pic.twitter.com/9ZA58dV5xy— NBA Communications (@NBAPR) October 13, 2025
日本ではまず、AmazonプライムでNBAを視聴することをオススメしたい
【参考】
https://www.sportsmediawatch.com/2023/04/nba-ratings-viewership-past-30-years-analysis-where-league-stands/
https://www.hoopshype.com/story/sports/nba/2020/05/18/chicago-bulls-michael-jordan-jackson-scottie-pippen-floyd-jerry-krause-kukoc-history-documentary/82916706007/
https://www.wbur.org/onpoint/2025/05/29/steph-curry-moreyball-nba-3-point
https://gleague.nba.com/news/chicago-bulls-sign-yuki-kawamura-to-two-way-contract
https://www.goal.com/jp/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/nba-2025-26-broadcast/blt8c3f8d53ef7da853
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