【ヴォレアス北海道】池田憲士郎 KENSHIRO IKEDA Vol.1「旭川発!スポーツ界に革命を起こす」
北海道第二の都市・旭川からスポーツ界に新たな革命が起きている。プロバレーボールチーム「ヴォレアス北海道」だ。
1万円以上の高額チケット、派手な演出を盛り込んだイベント、キャッシュレス決済のいち早い導入など新しい仕掛けで驚かせてきた。
このチームを2016年に設立した池田憲士郎は“バレー界の異端児”と呼ばれる。30代の若きリーダーが目指すものとは。
「SmartSportsNews」の独占インタビューを3回に分けてお届けする。
旭川のほうがチャンスがある
−−池田さんが北海道旭川市にプロスポーツチームを作ろうと思ったきっかけは?
率直に言えば「地元やばいな」と感じたからです。2014年に3年ぶりに旭川に帰ってきた時に、実家に帰る途中のバスから風景を見ながら「こんなに寂れていたっけ?」と感じたんです。活気がなくて、どんよりしている。このままではいけない、自分が生まれ育った旭川、そして北海道に恩返しをしなければと考えました。
−−北海道から離れたからこそ地元の現状が見えてきたと。
旭川に戻って父が経営する建設会社に入社しました。もちろん平社員からです。当時の会社が直面していたのが高齢化でした。30人ほどの社員のうちのほとんどが50歳以上。30代、40代は数人しかいません。20代の若者からの応募はこない。このままでは会社が立ち行かなくなると感じました。
−−なぜバレーボールを選んだのでしょうか?
私自身がバレーボール選手だったことがあります。全くわからないスポーツをやるより成功する確率は高くなります。中高で北海道代表として全国大会に出場したのですが、北海道でバレーを続けたくても環境がないから出ていかざるをえなかった人たちが何人もいたんです。もしも北海道にバレーボールチームがあったら、彼らが戻ってこれるんじゃないかと。もう一つは、北海道にバレーボールチームがなかったこと。北海道全体でいえば、野球、サッカー、フットサル、バスケットボールと主要スポーツチームはありました。第二、第三のチームをつくって限られたパイを奪い合うのではなく、新たなスポーツで立ち上げようと思ったんです。
−−北海道では札幌が突出して人口が多くて、ほとんどのスポーツチームも札幌を拠点にしています。
旭川は二番手の都市と言われているものの、あくまでも人口が二番目なだけで、ほとんどのエンターテイメントは札幌に集中しています。人口は札幌が約200万人、旭川は約33万人と6、7倍です。でも、札幌でスポーツチームをやるのは、ビジネス的に言えばレッドーオシャンです。たくさんのライバルの中で勝ち抜かなければならない。旭川の人口は33万人ですがスポーツチームはない。むしろチャンスはあるんじゃないかと思ったんです。
−−なるほど。
基本的に“逆張り”が好きなんです(笑)。要するに、強豪がいないフィールドでいかに戦うか。メジャースポーツとはいえないバレーボールでやるのも、大都市の札幌ではなく旭川でやるのもそう。私自身はどこかのクラブで働いた経験があるわけでも、スポーツビジネスを専門的に学んだことはありません。いわば“素人”だからこそ既成概念にとらわれない、自由な発想ができるのは強みだと思っています。
地元の誇りになるようなチームに
−−2016年の10月にプロチーム設立会見を行います。
もともと、父の建設会社にバレーボールのクラブチームがあったので、そこを母体になっています。実を言えば、最初はアマチュアチームのままVリーグに参入しようと思っていたんです。ちょっとずつ強くなっていって、だんだんファンを増やしていったほうがよいのかなと。でも、それだったらリスクは小さいかもしれないけれど、絶対に盛り上がらない。どうせやるんだったら、最初にドカンとインパクトを出すべきだと。
−−どうのようにして選手を集めたのでしょうか?
もともとつながりがあった地元出身選手に声をかけました。フェイスブックなどSNSで連絡をとって、ビジョンを伝えて。トップリーグで活躍していた選手もいましたが、「地元のためなら帰ります」と来てくれました。
−−クロアチア人のエド・クライン監督を招聘した理由は?
最初から外国人監督にしようと決めていました。もちろん指導者としての力量もありますが、自分たちが本気なんだというのを伝えたかった。旭川にはそもそも外国人が少ないので、外国人監督というだけで一つのブランドになるんです。服装についてもジャージではなくスーツでビシッと決めて、見た目からこだわっていこうと。
−−ヴォレアス北海道は“見え方”をすごく意識していると感じます。
チーム設立立会見でも、どんなチームを作りたいかと言われて「かっこいいチーム」と言ったんです。「北海道の田舎者がうるせぇ」とすごい叩かれたんですけど(笑)。でも、子どもたちが憧れる、地元の人が誇りに思ってもらうためには、かっこよさはすごく大事だと思っています。ロゴは東京のデザイナーに作っていただいたものですし、ポスターなど一つ一つのビジュアルを私がチェックしています。
Vol.2「なぜ1万円のチケットが売れるのか?」
(ハイパーリンクURL)
https://ssn.supersports.com/ja-jp/articles/60014cafedcdc0661d48ed24
Vol.3「ヴォレアスが子どもの未来をつくる」
(ハイパーリンクURL)
https://ssn.supersports.com/ja-jp/articles/60014cd882f02561e9268816
■プロフィール
池田憲士郎(いけだ・けんしろう)
1986年、北海道旭川市生まれ。中学よりバレーボールを始め、中・高と北海道代表。春高バレー全国大会で銅メダル。教員を目指し、北海道教育大学に進学も2年で退学し、北海学園大学へ編入。卒業後、東京の建設メーカーへ就職した3年後、父の経営する建設会社へ入社。帰郷した際に「地元の元気のなさ」に気づき、スポーツを活用した採用手法の導入により、会社の若返りとIUターンを成功させ各業界から注目される。その後、“スポーツが文化になる”を実現させるべく、地元になかったプロスポーツチームを0から創り上げる。リーグ参入初年度から優勝へと導き、圧倒的なエンターテイメントを重視したホームゲームの演出や斬新なチーム運営の手法から、”バレー界の異端児”としてバレーボール界のみならずスポーツビジネス界からも注目されている。
ヴォレアス北海道
https://voreas.co.jp
池田憲士郎Twitter
https://twitter.com/KenshiroIkeda
■クレジット
取材・構成:北健一郎
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