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【伊達公子】困難はあるが出産後もテニスキャリアを続けられると、底辺の広がりに繋がる<SMASH>

「子どもを産んでからもコートに立つことの影響力は大きい」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
女子テニス界では、これまでのダブルスプレーヤーだけでなくシングルスプレーヤーが出産してツアーに復帰している選手が増えてきました。こういう選手が増えると、テニスキャリアを長いスパンで考えられるようになるので、プロを目指す女子が増えて、底辺が広がると思います。プロ生活は結婚や出産をするまでと考えるよりは、可能性が広がるわけですから、プラスの要素です。

ただ、復帰がタフなのは間違いありません。出産後、元の身体に戻す作業自体が苦労すると聞きますし、そこからさらにアスリートの身体に戻すのはもっと大変でしょう。

例えば元世界1位のビクトリア・アザレンカ。彼女は今、身体の線が細くなり前の現役の時よりも筋力は相当落ちているでしょう。それが出産の影響か年齢的なものなのかはわかりませんが。彼女はそれでもグランドスラム決勝にまで行きましたが、トップレベルを長年キープし続けるのは簡単ではないと思います。

フィジカル面だけでなくメンタル面でも課題があると想像します。母性と闘争心は真逆なものですから、子どもが一緒にツアーを回っていると、子どもへ向ける母性と、試合で必要となる闘争心をどうコントロールしていくのか。こういう目に見えない部分でも苦労はあるのではないでしょうか。
ただ、前回も書きましたが、今はダブルスでも生計が立てられるぐらい賞金が出るようになりました。シングルスでトップレベルで戦えなくても、子どもを産んでからも、アスリートとしてコートに立つことの影響力は大きいと思います。

34歳のタチアナ・マリア(ドイツ)はコーチの旦那さんと2013年に結婚して出産。2021年4月に2人目を生んで早速復帰し、今年の全豪オープンにも家族で行ってプレーしていました。これまでにも子どもをツアーに連れて戦っているプレーヤーは数人いましたが、彼女もその1人です。仲がいいマンディ・ミネラ(ルクセンブルク/36歳)は単複ともに200位台ですが、夫と子どもと一緒にツアーを転戦しています。

ゴルフは女子選手でもキャリアが長いというイメージがあります。今までは出産したらテニスキャリアは終わりと考えられていたものが、その先にもテニス人生があるという認識になると、テニスをしている女の子の夢は広がります。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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