
青山修子/柴原瑛菜が全豪ベスト4進出!頂点を目指すエネルギーは“二人の化学反応”<SMASH>
青山の鋭いボレーが試合に終止符を打った時、柴原は両手を突き上げながら、ゆっくりパートナーに歩み寄った。
飛び跳ね、叫ぶわけではない。ラケットを落とし喜ぶわけでもない。
勝利を確認するように固くハグを交わす姿に、グランドスラム・ベスト4という高みすら、もはや定位置であるかのような風格が漂っていた。
事実、全豪オープンの青山修子/柴原瑛菜組は、第2シードの肩書を背負いコートに立っている。
グランドスラムに次ぐ格付けのマイアミ・オープンを制し、年末のWTAファイナルにも出た二人にとって、目指すは「グランドスラムの優勝」。その意味では準決勝進出すらも、今や、淡々と受け止めるべき結果なのかもしれない。
年齢で10歳、身長で16センチ、生まれ育った地に日米の開きがある“青柴ペア”の強みは、雑駁にいってしまえば、対照的とも言える個性が生み出す化学反応にこそある。
10年以上のツアー転戦歴を持つ青山は、多くの選手の特性を知り尽くした上で、前衛での俊敏な動きと精緻なボレーに磨きを掛けてきたダブルス職人。
一方、20歳で名門UCLAを休学しプロに転向した柴原は、豪快なスマッシュや、日本人女子選手には珍しいキックサーブなども得手とする、スケール感の大きなテニスが持ち味だ。
今大会での勝ち上がりでも、そんな二人の特性が存分に発揮された。
初戦では、立ち上がりでチャンスを逃し第1セットを落とすも、柴原は「取れなかったのは残念だけれど、チャンスがあるのは良いこと」とポジティブに捉えた。
その隣で青山は、「チャンスが取れなかったのは、動きやストロークなどに積極性が出せていなかったから」と分析し、柴原に助言を与えていく。結果的にはやや苦しんだこの初戦を得たことで、勢いも得ただろう。3回戦では、ダブルスの名手のズボナレワとクズモワ相手に痺れる接戦を競り勝ったことで、自信と勝ち癖も獲得した。
それら勝ち上がりの結実として、準々決勝ではマルティッチ/ロジャーズ相手に、危機を切り抜けチャンスをものにし、結果的には6−1、6−4の完勝をつかみ取る。
数字ほどに簡単な試合でなかったことは、二人の「このスコアは意外」の言葉に映される。事実、4度のデュースを繰り返した第2セットの第8ゲームを取られていたら、試合の流れは変わっていたかもしれない。
この苦しいサービスゲームを、青山は「マルティッチ選手はIフォーメーションを嫌がっている」と感じ、セカンドサービスでI(アイ)フォーメーションを貫いて取り切った。
続くリターンゲームでは、「ワイドにキックサーブを打ち、前衛がポーチに出る」という相手の攻撃パターンを察した青山が、柴原に「リターンをストレートに思い切って打ってみたら」と助言する。そのアドバイスを胸に「ストレートに打つと決めていた」という柴原が、ブレークポイントで豪快なリターンウイナーを叩き込んだ。
最後の柴原のサービスゲームでは、青山が3連続でポーチを決め、ベスト4への扉を開く。勝負所を見極め、磨いた武器で確実に仕留める、まさにダブルス・スペシャリストの真骨頂だった。
第2シードとしてのベスト4進出は、順当な結果のようにも見える。
ただ青山が「数字なので気にしていない」と言うように、シード順は何かを保証するものでは決してない。現に、準々決勝の相手はノーシード。そして27日の準決勝で当たるダニリナ/ハダッドマイヤーも、接戦を勝ち上がってきたノーシードだ。
この世界に長く身を置き、ダブルスの真理を知る青山は、「自分が第2シードというのは、面白いなって」と、どこか他人事のように笑った。
一方の柴原は、「第2シードになれたのは、去年すごく良い結果を出し続けたから」と、得た地位を実績と実力の対価と捕らえ、自信へと昇華する。
青山の冷静さと、柴原のポジティブな姿勢——。
その二大要素の化学反応は、グランドスラムの頂点という目標に向け、さらなるエネルギーを生みだしている。
現地取材・文●内田暁
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