女子テニス協会が中国での全トーナメントの中止を発表「ペンが圧力をかけられている状況で競技を行なえない」<SMASH>
国際的な問題へと発展しているペン・シューアイ(中国/元ダブルス世界ランク1位)の失踪騒動を受け、WTA(女子テニス協会)は香港を含む中国での全トーナメントを中止すると発表した。
中国前副首相から性的暴行を受けていたと告発後、消息不明となっていたペン。ところがその後、彼女がコーチらと会食している動画や自宅でくつろいでいる写真などが公開され、先日にはIOC(国際オリンピック委員会)が「ビデオ通話でペンと会話をした」とのコメントを発表。だが、WTAはこれらの動きに懐疑的な見方を示し、度々ペンの安否について「検閲のない状態での透明性のある調査」が行なわれるように求めていた。
一連の騒動がいまだ解決へと至っていない状況が続いている背景から、WTAのCEO(最高責任者)を務めるスティーブ・サイモン氏はこのほど発表した声明で「WTA理事会の全面的な支持のもと、香港を含む中国でのWTAトーナメントを直ちに中止する」と報告。
また、そのような決断に至った経緯について「ペン・シューアイが自由にコミュニケーションを取ることを許されず、性的暴行の疑惑を否定するよう圧力をかけられているような状況で、良心的に考えて、そこ(中国国内)で競技を行なうことはできない。2022年に中国で大会を開催した場合、選手やスタッフ全員が直面しうるリスクについて大いに懸念している」と説明した。
中国は近年、WTAツアーに多大な収益をもたらしてきたことで知られ、女子テニスの発展の鍵を握る国の一つでもある。2022年シーズンにはツアー最大の賞金総額を誇るWTAファイナルズを含め10大会の開催を見越していたが、全て中止となればWTAにとって大きな痛手となることは間違いない。
だが、これまでも「選手の安全が最優先」と主張してきたことを考慮すれば、今回のWTAの決断は妥当とも言えるだろう。同じく中国でツアー大会を開催しているATP(男子プロテニス協会)もこの動きに追従するのか注目が集まっている。
文●中村光佑
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